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17.本当にクリスにとっての悪女になってやろう。

last update Last Updated: 2025-06-23 18:56:10

「クリス、そんな目で見ないで。私はマサス国王の妻よ」

 私の言葉にクリスは苦い顔をした。

「彼に汚されてしまったこと、俺は一生かけて忘れようと思う。君はまだ綺麗だよ。ルカリエ⋯⋯」

 クリスの返しは想像もつかないものだった。

「私が汚されたって⋯⋯そうね⋯⋯モリア・クーナはどうしたの?」

 私はクリスに捨てられてから、生きるのに精一杯だった。

 その結果をあっさり彼は、「汚された」で片付けようとしている。

「モリア⋯⋯あの、詐欺師か⋯⋯アレが子供を産んだら洗脳が解けたんだ。全く、酷い目にあったよ。ルカリエ⋯⋯離れてくなんて酷いじゃないか」

 クリスは洗脳されていたと言う間のことを、どこまで覚えているのだろうか。

 私を足蹴にして追い詰めた記憶まであったら、こんな被害者ヅラできないはずだ。

 しかし、そんな事聞くのも面倒な程、私はクリスの愛に興味は無くなっていた。

「モリアはあなたが私を捨ててまで、ご執心だった子じゃない。彼女、子供を産んだんだ。ゆくゆくは国王になる、あなたの大切な子ね」

 モリアを詐欺師呼ばわりしたと言うことは、クリスが彼女を罪人扱いしているのは確かだ。

 彼女の子であり、スグラ王族の血を引いている名も知らぬ子の行方が気になった。

 私はボロギレを着ている幼い子を中心に形成された魔法学校を思い出していた。

 彼らがどこから来たのかはわからないけれど、自分の意思で行き先を選べる年ではない。

 そして、モリアとクリスの子も意思もはっきりせぬまま政治の為、道具のように扱われているのではないかと気になった。

(まあ、王族の血を引いてるし丁重に扱われてるわよね)

「洗脳されてた俺自身が1番傷ついているのに酷いこと言うんだな。ルカリエ⋯⋯君以外の女なんて、どうでも良いよ」

 クリスと私は今までプラトニックな関係だった。

 それなのに、クリスは今、焦ったように私に口づけをしようとしてきた。

 私は自分の口を手で塞ぎ、それを避ける。

「やめて⋯⋯クリス、私以外の女どうでも良いって言うなら、私もそのどうでも良い

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    「クリス、そんな目で見ないで。私はマサス国王の妻よ」 私の言葉にクリスは苦い顔をした。「彼に汚されてしまったこと、俺は一生かけて忘れようと思う。君はまだ綺麗だよ。ルカリエ⋯⋯」 クリスの返しは想像もつかないものだった。「私が汚されたって⋯⋯そうね⋯⋯モリア・クーナはどうしたの?」 私はクリスに捨てられてから、生きるのに精一杯だった。 その結果をあっさり彼は、「汚された」で片付けようとしている。「モリア⋯⋯あの、詐欺師か⋯⋯アレが子供を産んだら洗脳が解けたんだ。全く、酷い目にあったよ。ルカリエ⋯⋯離れてくなんて酷いじゃないか」 クリスは洗脳されていたと言う間のことを、どこまで覚えているのだろうか。 私を足蹴にして追い詰めた記憶まであったら、こんな被害者ヅラできないはずだ。 しかし、そんな事聞くのも面倒な程、私はクリスの愛に興味は無くなっていた。「モリアはあなたが私を捨ててまで、ご執心だった子じゃない。彼女、子供を産んだんだ。ゆくゆくは国王になる、あなたの大切な子ね」 モリアを詐欺師呼ばわりしたと言うことは、クリスが彼女を罪人扱いしているのは確かだ。 彼女の子であり、スグラ王族の血を引いている名も知らぬ子の行方が気になった。 私はボロギレを着ている幼い子を中心に形成された魔法学校を思い出していた。 彼らがどこから来たのかはわからないけれど、自分の意思で行き先を選べる年ではない。 そして、モリアとクリスの子も意思もはっきりせぬまま政治の為、道具のように扱われているのではないかと気になった。(まあ、王族の血を引いてるし丁重に扱われてるわよね)「洗脳されてた俺自身が1番傷ついているのに酷いこと言うんだな。ルカリエ⋯⋯君以外の女なんて、どうでも良いよ」 クリスと私は今までプラトニックな関係だった。 それなのに、クリスは今、焦ったように私に口づけをしようとしてきた。 私は自分の口を手で塞ぎ、それを避ける。「やめて⋯⋯クリス、私以外の女どうでも良いって言うなら、私もそのどうでも良い

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