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3.小蝿がいたから追い払いに来ただけだ。

last update Date de publication: 2025-06-10 09:24:48

「懐妊? ですって?」

 驚きのニュースがスグラ王国を駆け巡った。

クリスがモリアに夢中になって半年、モリアがクリスの子を孕ったという。

 私は、クリスが正式な婚姻前にそのようなことをしたことが理解できなかった。

私とクリスは10年以上連れ添っていたが、肉体関係はない。

 朝食の席で父である、ミリアン・セリア侯爵が頭を抱えている。

 彼はスープを掬うスプーンをゆっくりとテーブルに置くと、私に諭すように言ってきた。

「ルカリエ⋯⋯王家からクリス王太子との婚約を破棄するようにとの打診が正式にあった⋯⋯」

私は父の言葉に息を呑んだ。

「どうして! 男の心1つ満足に掴めないの? もう、あなたは終わりよ!他国なら側妃になれたかもしれないけれど、スグラ国は一夫一妻制! 王太子の手垢のついたあなたはどこにも行けない⋯⋯うぅ⋯⋯」

母が目の前の皿を突然投げて金切り声をあげたかと思えば、泣き出した。

 私が何をしたというのだろう。

 スグラ王国では王族の言うことは絶対だ。

 だから、私の努力も私の立場も実はクリスの気持ち1つで失うものだった。

「クリスは私に手垢1つ付けてないわよ⋯⋯」

私たちが理想のカップルだと思っていたのは、思い上がりだったのだろうか。

「そんな事は関係ないって分かっているわよね、ルカ⋯⋯」

泣き声を押し殺しながら話してくる母の言う通りだ。

 クリスが私に手を出してようと、出してなかろうと10年私たちが婚約していたのは周知の事実。

 他から見れば私はクリスの立派なお古だ。

「モリア・クーナ男爵令嬢が次期王太子妃だ。今日には花嫁修行に王宮入りするらしいぞ」

父が諦めかけたような顔で私に告げてくる言葉は、私を絶望の縁に追いやった。

 10年近く励んできた孤独な妃教育はなんだったのだろう。

 結局、妃教育はおろか義務であるアカデミーの教育も受けていないモリアが次期王太子妃だ。

 私はどうしても納得がいかなくて、王宮に出向いた。

「クリス王太子殿下に会いに来ました」

城壁を守る騎士に告げると彼らは私を嘲笑った。

「セリア侯爵令嬢、美しいですね。クリス王太子殿下は本当に見る目がない。私ならあなたを受け入れられますよ」

チャラそうな門番の1人が私の銀髪をすくって口付けをしながら私を口説いてきた。

 まるで、娼婦を相手にするような態度に心が沸騰するのを感じた。

 私はもう彼らの中で次期王太子妃でもない、王太子に捨てられたゴミでしかない。

(ゴミでも拾ってやろうってわけね⋯⋯私にだってプライドはあるわ)

「失礼しますが⋯⋯」

私が言葉を発しようとした時、城門が空きクリスとモリアが寄り添いながら出てきた。

 クリスはモリアを愛おしそうに見つめた後、私に向き直した。

「ルカ! 君の存在が妊娠中のモリアのストレスになっているんだ。もう、王宮には来ないでくれ」

 クリスは何を言っているのだろう。

 高位貴族の私に、今後は王宮の行事に一切参加するなという意味だろうか。

「クリス本当にどうしちゃったの?」

私はひたすらにクリスを見つめる。

 彼の姿がどんどん歪んでくるのが分かる。

 人前で涙を見せてはいけないと分かっていても、この状況で平然としていられる程強くはない。

「どうもしていない。ただ、窓から覗いたら小蝿がいたから追い払いに来ただけだ」

「殿下、それは言い過ぎですわ」

 クリスの冷たい言葉に、私をフォローするように優しい声でモリアが囁く。

(小蝿って私のこと? どうして、そんなことが言えるの?)

「ルカリエ様⋯⋯私も身重の身なんです。これ以上嫌がらせはやめてくれますか? 私は未来のスグラ国の王を孕っているのですから」

私に向き直り聖女のように微笑むモリアに私の中の何かが爆発した。

「クーナ男爵令嬢、私がいつ!」

私は彼女に嫌がらせをした覚えなどない。

 そう反論しようとした時、急にクリスとモリアの周りが赤い炎で包まれた。

(な、何? 何が起こったの?)

 私が驚きのあまり尻餅をついている間に、必死に騎士たちが服で炎を消していた。

炎の中から現れたクリスはモリアを守るように覆い被さっていた。

 モリアのドレスの裾が少し焼け落ちている。

「この魔女が!」

私は突然横にいた騎士に髪を捕まれ拘束された。

「私がやったと言いたいのですか?」

「他に誰がいる!この魔女を牢に放り込んでおけ」

 私は見たこともない鬼のような形相のクリスを見ていられず、騎士たちにされるがままに連行された。

 そんな魔法のようなものが使えるのなら、私は今すぐ自分の体を焼いている。

それくらい、今、消えたい程に惨めだ。

「嫉妬に狂い、俺にまで手をかけようとするとは⋯⋯」

クリスが私を蔑むように言った声が、背後から聞こえた。

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    「マサス国王陛下が身罷られました。私、ルカリエ・マサスは国王陛下の代理としてここに宣言します。これより、マサス王国は王政を廃止し共和制へと移行します」 私はスグラ王国一向を追い返すと、早速、国民へ向けて演説をした。 低く太く威厳を感じさせる声を出す訓練は、スグラ王国の妃教育で身につけたものだ。 でも、この声を使うのもこれで最後だ。 この国は、身分制度のない全ての人が平等な国にする。 合図を送って地上に出てきた、魔法使いたちが驚きの顔で私を見ている。 カリナ以外誰も私が王妃だとは知らなかったからだ。 しかし、王妃でいるのもこれでお終いだ。「国の代表は選挙で選ぶこととなります。全てのことは相談し決めていきます。マサス王国は氷の大地ですが、その住みにくい大地を住みやすものにする為に私たちは魔法研究をしてきました。国の為、影ながら努力し続けてくれた、魔法使いたちの成果を見てください」 私の隣にいるキースが魔法の力で氷を溶かし、草を生やし一面の大地を緑にした。 魔法学校で学んだ子達が、その植物を成長させる。 一斉に拍手が巻き起こる。「マサス王国は魔法を使って、これからより良い国作りをします」 演説が終わると、魔法学校のみんなに囲まれた。「ルカって王妃だったの?」 「そうだけど、私はもう王妃じゃないよ」「ルカちゃん、あんな男みたいな野太い声が出すんだね」 マリオの空気の読めない質問に癒される。「そうだよ。私の一部だけ知って、全てを知った気分にならないでね」 私は色々な自分を持っている。 本当は自然体の私だけでいたい。「これから、みんな魔法省の職員になるんだからね」 この国の根幹をつくる魔法省の人間の待遇は手厚い。 今まで窮屈な思いをしてきた彼らが、思う存分自分の人生を過ごせるようにしたい「カリナ! 最近お金も送ってこないから心配してたよ」 近づいてきたピンク髪の2人は、カリナの両親だろう。 彼らはカリナを捨

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  • 愛した男が黒幕でした。   22.自由になりたいだけだよ。

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  • 愛した男が黒幕でした。   21.魔法使いで独立した国をつくらない?

    「なんか地上では王妃様が誘拐されたとかで大変だったらしいよ。飛行の魔法使える子たちが捜索に駆り出されていた。そもそも、国王陛下っていつ結婚したのよって感じだよね」 カリナの言葉を聞いて、私は戸惑ってしまった。 夜の寒い海の空を、魔法学校の子たちが私を探していたと言うことだ。 そして、魔法学校の子たちは十分な情報も与えられないのに、緊急時には突然駆り出される存在だと認識した。「名前も姿も知らない王妃様を真夜中に探せなんて酷い命令だね。ねえ、カリナ⋯⋯私たち、地下に住む魔法使いで独立した国をつくらない? マサス王国の為に尽くさなければいけない義理なんてないよ」 私はそんなおかしいことを言っただろうか、カリナは目を丸くして絶句していた。「ふふっ! 本当にルカって私が出会ったことないくらい面白い子。私たちはマサス王家から給与も出ている公的な兵隊みたいなモノなんだよ。確かに地上の生活には憧れるけどね。戦争にならない限りは外に出れないのは窮屈だけど⋯⋯お金がなきゃ地上でも暮らせないよ」「じゃあ、戦争の時に地上に出たらみんなで逃げて、逆にマサス王国を滅ぼしてやろう! お金は私が何とかするし、自給自足できるような魔法があれば生活だってできるよ」 魔法にどれだけの種類があるかは分からない。 今、知っているだけで、火の魔法、氷の魔法、治癒の魔法、魅了の魔法と飛行の魔法がある。 キースは全ての魔法が使えると言っていて、瞬間移動したりもできる。(そういえば、キースは姿形も変えられるって言ってたわ)「自給自足か⋯⋯植物を成長させる魔法とか使える子もいるし、不可能ではないかな。それにしても、お金は何とかするだなんて、ルカって男前すぎ! なんか、夢物語だけど⋯⋯こう言う話するのは面白いね」 私の話をカリナは夢物語のように聞いている。  私はクリスを利用して、レオと離縁し、マサス王家を滅ぼし、魔法学校のみんなを解放できないか考えていた。 私は顔だけの女だけれども、「特技、顔」はクリスやレオには通用する。 散々、自分勝手に私を扱ってきた2人を、今度は利用できないだろうか。

  • 愛した男が黒幕でした。   1.君はもう僕のものだ⋯⋯。

     私の故郷では見られない雪が降っている。  キラキラ光る宝石のように見えるのは、空気が澄んでいるからだろう。  乾いた空気が本当に気持ちが良い。思わずバルコニーに出ると、私の愛しい人が追いかけて来た。「ルカリエ、そんな格好で外に出たら風邪をひく⋯⋯」 後ろから抱きしめてくるのは、今日私の夫になったレオナルド・マサスだ。  彼の温もりは私を包み込み、私も少しでも自分の温もりを返そうと身を捩った。  彼が私の銀髪の髪を愛おしそうに撫でてくれる。「もう、レオったら、そんなに早く私を自分のものにしたいの?」  私の質問に静かにレオはうなづいた。  彼の黒髪が夜風に他靡く。 彼

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  • 愛した男が黒幕でした。   18.私の気持ちを読んでよ。

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  • 愛した男が黒幕でした。   14.僕が君に化けて陛下に抱かれるよ。(キース視点)

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