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愛した男が黒幕でした。
愛した男が黒幕でした。
作者: 専業プウタ

1.君はもう僕のものだ⋯⋯。

last update 最終更新日: 2025-06-10 09:23:53

 私の故郷では見られない雪が降っている。

 キラキラ光る宝石のように見えるのは、空気が澄んでいるからだろう。

 乾いた空気が本当に気持ちが良い。

思わずバルコニーに出ると、私の愛しい人が追いかけて来た。

「ルカリエ、そんな格好で外に出たら風邪をひく⋯⋯」

 後ろから抱きしめてくるのは、今日私の夫になったレオナルド・マサスだ。

 彼の温もりは私を包み込み、私も少しでも自分の温もりを返そうと身を捩った。

 彼が私の銀髪の髪を愛おしそうに撫でてくれる。

「もう、レオったら、そんなに早く私を自分のものにしたいの?」

 私の質問に静かにレオはうなづいた。

 彼の黒髪が夜風に他靡く。

 彼の暗い、深淵を見つめるような瞳が好きだ。

(愛しい⋯⋯)

 私はこれ程に自分を求めてくる男を前に、味わったことのない感情を抱いていた。

私は1年前にスグラ国の王子に婚約破棄を言い渡されたばかりだ。

 クリス・スグラとは心が通じ合っていると信じていた。

 しかし、それは私の思い上がりだった。

 彼はモリア・クーナ男爵令嬢が現れるなり、彼女に夢中になっていた。

 彼は彼女の言葉を全て信じて、私との婚約を破棄した。

 私は誰もが憧れる王子の婚約者から悪役令嬢に一瞬でなった。

 覚えのない嫌がらせの冤罪までかけられて、私は遠い島国マサスに流された。

 地位も名誉も失った私を救ったのがレオだ。

 豪雪地帯でもあるマサス国は、今日も雪景色だ。

 レオはマサス国の王でありながら、罪人とされる私を求めた。

 私の名誉を回復させ、爵位を与え自分の婚約者とした。

 その時、バルコニーから1隻の船が桟橋に接岸するのが見えた。

 船の先頭にはスグラ国の王章が見える。

 ブリザードの吹き荒れるこの時期のマサス王国に上陸するのは命懸けだ。

 周囲を氷山で囲まれていて、船がいつ挫傷するとも分からない。

 船から降りてきた、小さい影は私が10年以上も思い続けたけたクリスだった。

(結婚式にも呼んでないのに、何しに来たの?)

 私が動揺していると、急にレオが私の耳をはんできた。

「な、何するの?」

「君はもう僕のものだ⋯⋯」

 寒さで凍え切った私の体はレオによって寝台に運ばれた。

 ベッドに寝転がされて見上げた彼の顔は少なからず、焦っているように見える。

 「レオ! スグラ国の船が⋯⋯!」

私の言葉は彼の狂おしい程の口付けに塞がれて続かなかった。

「もう、忘れて⋯⋯クリスのことも⋯⋯スグラ王国のことも⋯⋯」

私は彼が絞り出すように伝えてきた言葉に少なからず動揺した。

 スグラ国での出来事は私にとって人生の根幹を築いたような経験だ。

(あの理不尽な出来事がなければ、私はずっと守られるだけの弱いお嬢様だったわ)

 8歳で当時スグラ国の侯爵令嬢だった私は婚約者クリスと引き合わされ、彼に捨てられる18歳のその時まで彼を愛した。

しかし、それは私の一方通行な愛だったと18歳の時に知ることになる。

「忘れさせる程、夢中にさせてくれるんでしょ。レオ⋯⋯」

私が彼の首に手を回し、口づけすると彼はそれに応えてきた。

 クリスの姿を見ただけで、胸がざわついて仕方がない。

私が10年以上思いを寄せた金髪碧眼の王子様だ。

 ずっと仲良くやって来たのに、彼が私に冷たくなるのは一瞬だった。

「レオも私に飽きたりして⋯⋯」

感じるままに発した一言は、私の本音だった。

 クリスは私と10年以上いることで、飽きたのではないだろうか。

今、目の前にいるレオもいつ私に飽きるか分からない。

「飽きさせてくれるつもりはあるの? ルカ⋯⋯本当に悪い女だな⋯⋯君を知ってしまったら、君以外欲しくないよ」

彼はそういうと私に覆い被さってきた。

私は今日彼の妻になった。

 クリスがどうして、突然私を拒絶し非難し始めたかなんて今は考えたくもない。

 今は、私を求めるレオにただ溺れていたい。

♢♢♢

「体は大丈夫か?」

「そんな柔じゃないわよ」

 翌朝私を気遣う言葉を発するレオに、私は照れ臭くてそっけなく返した。

 レオは美しくて、性格も穏やかな男だ。

(私を求める時だけは人が変わったように獰猛になるけれど⋯⋯)

「はぁ、可愛いよ。ルカ!」

朝食の時間で、ダイニングに行かなきゃいけないのにレオがベッドに私を押し倒してきた。

「ちょっと、レオ! ダメだったら」

私の抵抗する声に反応するように、寝室の扉が開かれた。

「ルカ! 帰ろう! 俺と一緒に⋯⋯」

まるで、私を助けに来たヒーロのように振る舞うクリスがそこにいた。

ここは王妃の寝室だ。

 よくここまで、入って来られたものだ。

 レオの計らいで、私を傷つけたスグラ王国の人間はマサス王国には出禁になっていた。

 もちろん、その筆頭が私の元婚約者である、クリス・スグラだ。

 彼は、私の乱れた格好を見て固まっている。

(初夜の後なんだから当然じゃない⋯⋯おかしいのはあなたよ)

 彼は私を言われのない罪で追い詰めた人間で、私の敵だ。

 ただ、10年以上思いを寄せて結婚を考えていた相手ではある。

「モリアの元に戻って! もうあなたは私に必要ないわ」

 モリアは突然現れて、私から何もかもを奪っていた女だ。

 そして、私にはない可愛らしさを持った女で、とんでもない嘘つきだ。

 ありもしない誹謗中傷と攻撃を私から受けたとクリスに吹き込んだ。

 そんな信じがたい事実を信じたのはクリス自身だ。

(私との10年ってなんだったのよ。本当に笑っちゃう⋯⋯)

 私はクリスの気持ちが離れて初めて、自分の持っていたものはいつ失ってもおかしくないものだと気がついた。

 まあ、それは今も同じかもしれない。

 私を寵愛しているとされる人間がクリスからレオに変わっただけだ。

 このような生き方をしていては破滅をすると分かっていている。

 クリスを信じて裏切られ、今はレオを信じて裏切られる日を恐れている。

(だから、私は誰にも負けない力を手に入れないと⋯⋯)

「違うんだ! 俺はモリアに洗脳されてただけなんだ。本当に愛しているのは、ルカ⋯⋯君だけだ」

新婚初夜の後の寝室に乗り込んで、クリスは何を言っているのだろう。

「そうね、あなたは恋の病にかかってたかもね。モリアに飽きたのなら、次の女にいったら? ただし、私以外で宜しくね!」

 冗談じゃない。

 クリスが王権を振り翳して、言われなき罪で私を罰して地位も名誉も失った。

そ んな私を守り地位を回復させ、癒してくれたのは間違いなくレオだ。

 クリスは何をしに来たのだろう。

 島流しをされた私がレオと出会わず、全てを失ったままなら彼の手を取ってたかもしれない。

 でも、私には今レオがいる。

 だから、もうクリスは必要ない。

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    「マサス国王陛下が身罷られました。私、ルカリエ・マサスは国王陛下の代理としてここに宣言します。これより、マサス王国は王政を廃止し共和制へと移行します」 私はスグラ王国一向を追い返すと、早速、国民へ向けて演説をした。 低く太く威厳を感じさせる声を出す訓練は、スグラ王国の妃教育で身につけたものだ。 でも、この声を使うのもこれで最後だ。 この国は、身分制度のない全ての人が平等な国にする。 合図を送って地上に出てきた、魔法使いたちが驚きの顔で私を見ている。 カリナ以外誰も私が王妃だとは知らなかったからだ。 しかし、王妃でいるのもこれでお終いだ。「国の代表は選挙で選ぶこととなります。全てのことは相談し決めていきます。マサス王国は氷の大地ですが、その住みにくい大地を住みやすものにする為に私たちは魔法研究をしてきました。国の為、影ながら努力し続けてくれた、魔法使いたちの成果を見てください」 私の隣にいるキースが魔法の力で氷を溶かし、草を生やし一面の大地を緑にした。 魔法学校で学んだ子達が、その植物を成長させる。 一斉に拍手が巻き起こる。「マサス王国は魔法を使って、これからより良い国作りをします」 演説が終わると、魔法学校のみんなに囲まれた。「ルカって王妃だったの?」 「そうだけど、私はもう王妃じゃないよ」「ルカちゃん、あんな男みたいな野太い声が出すんだね」 マリオの空気の読めない質問に癒される。「そうだよ。私の一部だけ知って、全てを知った気分にならないでね」 私は色々な自分を持っている。 本当は自然体の私だけでいたい。「これから、みんな魔法省の職員になるんだからね」 この国の根幹をつくる魔法省の人間の待遇は手厚い。 今まで窮屈な思いをしてきた彼らが、思う存分自分の人生を過ごせるようにしたい「カリナ! 最近お金も送ってこないから心配してたよ」 近づいてきたピンク髪の2人は、カリナの両親だろう。 彼らはカリナを捨

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     あれから、半年。 私たちは魔法の特訓を重ねた。 その魔法の特訓は今までのような戦いの為の特訓ではない。 飛行能力で種を蒔いたり、植物を育てる能力で畑作りをしたり、氷の能力で食材を冷やしたり生活する特訓をした。 レオはモリアが私に化けている事に気がついていないようだった。 私は気の置けない仲間と幸せな時間を過ごしていた。 そして、運命の日が来た。 私たち、魔法学校に出動命令が出たのだ。 理由はスグラ王国が大軍を連れて、ルカリエ王妃を奪還に来たからだ。  キースの話だと、再三スグラ王国はルカリエ王妃の返還を要請しなかったがレオが応じなかったらしい。 「私たちは自分たちの自由を勝ち取る為に戦うのよ」「オー!」 地下の広場に集めた魔法学校の学生を鼓舞する。 私は魔法学校の子たちが戦うのは最終手段だと思っている。 でも、今日は地下と地上を繋ぐゲートが開く。 魔法学校の生徒全員が外に出られるのだ。「カリナ、伝えた通り、私たちが攻撃として魔法を使うのは最終手段。私たちの魔法はマサス王家を滅ぼしてから自分たちの国を創るのに使うのよ」「ルカ⋯⋯いや、ルカリエ王妃殿下なんだよね」「私はルカだよ! 数時間後にはマサス王家を倒してこの国は共和制にする。王族が支配するのではなく、国家の全てを話し合ってみんなで決めるの」 私は自分の正体をカリナだけには明かした。 彼女の双子の姉モリアの存在は明かしていない。 ただ、今は替え玉がルカリエ・マサスとして国王陛下に付き添っていると言うことを話している。 私は誰も血を流すことなく、自分たちの自由を勝ち取りたいと思っていた。 ここにいる子たちは幼い子が大半だ。 そんな子たちが戦う必要はない。 戦う責任があるとしたら、この国に責任がある王妃の私だ。「みんなは、合図があるまでここで待機だよ。怖がらないで大丈夫。地上に出た時は、戦いなんて終わって平和が待ってるかもしれない

  • 愛した男が黒幕でした。   22.自由になりたいだけだよ。

    「起きて! もう、寝過ぎだよ。ルカ!」 目を開けるとカリナが私の顔を覗き込んでいた。 昨晩、私は必死にキースを求めたが、明日の為に寝るようにと部屋に戻された。(また、振られた⋯⋯もう、彼に役立つ女になることに集中した方が良いかも⋯⋯脈がなさ過ぎる)「お腹空いたでしょ。何か食べにでよ!」 私はカリナに手を引かれて外に出た。 今までずっと、食べ物は黙っていても出てくるものだと思っていた。(お腹が空いてる中食べ物を探しに行くなんて獣みたいで楽しい!)「何、ニヤニヤしてるの? ルカって本当に面白いね。何か食べたいものはある?」「肉かな⋯⋯獣の肉!」「ごめん⋯⋯朝から重すぎるから却下! 朝食だから軽めにしよう」 食べたいものを聞かれたからこたえたのに、カリナには却下されてしまった。 でも、食べる物なんて何でも良い。 どんな美味しい食事を食べようと、重要なのは食べる物じゃなくて一緒に食べる相手だと私は知っている。「私はカリナと食べるなら何でも美味しいと思う! 道端の草でも最高級の味がするよ」 大好きな彼女と気を遣わず食べる食事はどれだけ美味しいだろうか。 レオやクリスと食事する時は、彼らの顔色を伺ってばかりで食事は味がしなかった。「草よりは良いものを食べようね。全く、本当にルカは面白過ぎだよ!」 カリナが私の手を引きながら連れてくれた店は、麺が食べられる店だった。 私は麺を人生で1度しか食べたことがない。 東洋の行商がスグラ王国に来た時に、一度食しただけだ。 ここの魔法学校に併設する商店は、様々な種類の店の料理が並んでいる。「ここって何でもあるんだね。東洋の食事まで食べられるなんて凄い!」「全部、真似事だよ。真似事で私たち使い捨ての兵隊を誤魔化しているだけだから⋯⋯」 カリナが冷めたような表情になり淡々と言う言葉に私は驚いた。 大陸侵略の目的で作られたことを、ここに通う学生も知っていると言うことだ。「やっぱり、打倒マサス王国だ

  • 愛した男が黒幕でした。   21.魔法使いで独立した国をつくらない?

    「なんか地上では王妃様が誘拐されたとかで大変だったらしいよ。飛行の魔法使える子たちが捜索に駆り出されていた。そもそも、国王陛下っていつ結婚したのよって感じだよね」 カリナの言葉を聞いて、私は戸惑ってしまった。 夜の寒い海の空を、魔法学校の子たちが私を探していたと言うことだ。 そして、魔法学校の子たちは十分な情報も与えられないのに、緊急時には突然駆り出される存在だと認識した。「名前も姿も知らない王妃様を真夜中に探せなんて酷い命令だね。ねえ、カリナ⋯⋯私たち、地下に住む魔法使いで独立した国をつくらない? マサス王国の為に尽くさなければいけない義理なんてないよ」 私はそんなおかしいことを言っただろうか、カリナは目を丸くして絶句していた。「ふふっ! 本当にルカって私が出会ったことないくらい面白い子。私たちはマサス王家から給与も出ている公的な兵隊みたいなモノなんだよ。確かに地上の生活には憧れるけどね。戦争にならない限りは外に出れないのは窮屈だけど⋯⋯お金がなきゃ地上でも暮らせないよ」「じゃあ、戦争の時に地上に出たらみんなで逃げて、逆にマサス王国を滅ぼしてやろう! お金は私が何とかするし、自給自足できるような魔法があれば生活だってできるよ」 魔法にどれだけの種類があるかは分からない。 今、知っているだけで、火の魔法、氷の魔法、治癒の魔法、魅了の魔法と飛行の魔法がある。 キースは全ての魔法が使えると言っていて、瞬間移動したりもできる。(そういえば、キースは姿形も変えられるって言ってたわ)「自給自足か⋯⋯植物を成長させる魔法とか使える子もいるし、不可能ではないかな。それにしても、お金は何とかするだなんて、ルカって男前すぎ! なんか、夢物語だけど⋯⋯こう言う話するのは面白いね」 私の話をカリナは夢物語のように聞いている。  私はクリスを利用して、レオと離縁し、マサス王家を滅ぼし、魔法学校のみんなを解放できないか考えていた。 私は顔だけの女だけれども、「特技、顔」はクリスやレオには通用する。 散々、自分勝手に私を扱ってきた2人を、今度は利用できないだろうか。

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