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第14話

Auteur: はじめ君
裕司の息遣いが荒くなり、胸が押し潰されるような感覚に襲われた。

その宝石箱には、彼が初めて大金を稼いだ時、和子に買った最初の金のイヤリングが収められていた。

シンプルなデザインのそのイヤリングを、彼女は命よりも大切にし、寝るときすら外そうとせず、「身につけていると裕司が側にいるみたい」と言っていた。

それは二人の愛の始まりの証だったが、今は箱には空っぽだった。

鋭い頭痛が襲い、裕司は頭を振った。ぼんやりした記憶が突然繋がり、知子が訪ねてきたことが思い出された。

家中がめちゃくちゃに荒らされている様子と合わせて、裕司は一瞬にして全てを悟った。

携帯を取り出すと、アシスタントに電話をかけた。「すぐ調べろ!知子の行方を!」

千葉グループの中枢から追放されたとは言え、彼はまだ多くの株を握っており、一人の人間を探し出すぐらいの力はまだあった。

彼はがらんとしたリビングに立ち、心臓が再び見えない手に締め付けられるような痛みに襲われ、思わず胸を押さえた。

和子が残した最後の形見さえ、守り切れなかったのか?

しばらくすると、アシスタントから折り返しの電話が入った。「千葉社長、見つか
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