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第27話

Author: 星野栄美(ほしの えみ)
しばらく走ったところで、玲司はようやく思い出したように尋ねた。「家はどこだ?」

「香月苑」

それきり、二人の間に会話はなくなった。

普段なら座るはずのない後部座席で、航平は全身を強張らせていた。最初のうちは息をするのも憚られるほど緊張していたが、目的地が近づくにつれ、ようやく肩の力が抜けていった。

俺もずいぶん偉くなったもんだ。

社長が恋愛脳になると、部下の俺まで恩恵にあずかれるとは。

やがて車は香月苑の前で停まった。琴音は車を降りる前、後部座席に向かって丁寧に頭を下げた。「東雲社長、ありがとうございました」

ようやく自分が「東雲社長」という設定になっていたことを思い出した航平は、引きつった笑みで手を振った。「いえいえ、どういたしまして」

琴音は玲司から借りていた上着を脱ぎ、そっと差し出した。「あなたも、ありがとう」

そう告げると、華奢な後ろ姿が一戸建ての邸宅へと向かっていく。

玲司の視線は、その姿をじっと追い続けていた。

航平は玲司を見たあと、遠ざかっていく琴音へ目を向けた。「ゴホン……」

わざとらしい咳払いに、玲司はようやく琴音から視線を外した。どこか苛立ち
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