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第7話

作者: 瑶影
病院へ向かう車中、指導教授から急用の連絡が入った。

痛みをこらえながら返信を打つ。

硯が私の隣でそわそわしている。

「姉さん、誰と英語でやり取りしてるの?」

硯はもともと勉強が得意ではなく、半端な知識しかないから理解できないのだ。

携帯の画面を消し、淡々と窓の外を見る。

「別に」

だが彼はまだ私が怒っていると思い、腕を掴んできた。

「姉さん、本当にわざとじゃなかったんだ。許してくれない?」

横を向くと、桜井がいた。

私の血が彼女の服に一滴飛び、気持ち悪がってウェットティッシュで必死に拭いている。

ティッシュは硯が渡したものだ。

異常な疲労感が込み上げる。頭の血管が脈打つように疼いた。

「こんなに出血が止まらないのは……凝固機能に異常があるのかも」

医者の言葉に、硯が私の腕を強く握った。

「凝固異常?母さんが亡くなる前もそうだった……」

頭痛が増していく。

目に入るのは眩暈を催す純白ばかり。

母が亡くなる前、私は昼夜を問わず病院に付き添った。

彼女の命は急速に失われていったが、私は何もできなかった。

あの日以来、病院が怖くなった。

PTSDがひどく、長い間心療内科にも通っていた。

あの頃、榊はまだ私の恋人だった。

彼がその苦しい時期を支えてくれた。

だから今の榊も、私の恐怖を最も理解している。

「大丈夫だ、安藤。俺がついている」

榊が私の手を握った。

「司、離れないで!」

背後から桜井が彼に抱きつく。

榊の身体が硬直し、私の嘲笑う視線の中、無力に手を放した。

「いつかは自分で向き合わないといけない」

何でも彼の言い分だ。

もう彼らに一切の期待をなくした。ただ歯を食いしばって、身体検査に向かう。

検査室から出ると、待合室には誰もいなかった。

看護師が顔を上げる。

「ご一緒の方が季節のアレルギーで、ご家族の二人が彼女に付き添って別の科に……」

言いながら、目が好奇心に輝いた。

「あの人たちは家族ではありません」

私は事実を述べただけだった。

「安藤!検査は終わったのか?異常は?」

私は一人で病院を後にしようとしていたが、エレベーターでちょうど三人と鉢合わせしてしまった。

榊が検査結果を見ようと手を伸ばす。

今日は時間がなかったので、応急処置と止血だけしてもらって、詳しい検査は別の日にと医者に言われていた。

「私立病院を手配しよう。最新の検査機器を導入しているから、1ヶ月もあれば検査ができる」

榊の視線が熱い。

「結構だ。必要ない」

彼はもう桜井の恋人だ。線引きを越えた関心は要らない。

何より、あと15日でここを離れるのだ。

榊の目に痛みが走った。

桜井がタイミングよく彼の腕に絡みつく。

「遠慮しないで。私たちの気持ちよ」

主権宣言だ。

「あなたたちの気持ちなど要らない」

私は冷たく笑った。

彼らとこんな曖昧な関係でぐだぐだ過ごす毎日は、もう心底うんざりだ。

「姉さん、どうして咲子さんにそんなことを言うんだ!」

硯がすぐに飛び出してきて、桜井を守るように立ちはだかった。

馬鹿め。騙されているのに、自分から進んで手伝っているとは。

「いい加減にしなさい。桜井は榊と結婚するんだよ?あなたは何をするつもりなの?」

「愛人になるつもり?それとも一生桜井のペットでいる気か?」

硯との姉弟の絆は、すでに擦り切れるほどに薄れていた。彼を見る私の目には、いっそう苛立ちが滲んでいた。

硯の視線がかすかに揺らぐ。

「ペットでもいい!俺が何をしようと、姉さんに関係ない!」

「俺は咲子さんが好きだ!一目惚れしたんだ!誰も俺のことを分かろうとしないけど、咲子さんだけが理解してくれた。それが何が悪い!」

硯の目が赤く充血し、声を押し殺すように怒鳴り返してきた。

桜井は勝ち誇った笑みを浮かべながら、まるで仲裁するように硯の肩を優しく叩いた。

私は深く息を吸い込んだ。

15日、あと15日しかないと心の中で繰り返す。

こんなことで怒らなくていい。もうすぐ離れられる。

「15日だと?何を言っている?」

榊が探るような視線を私に向けた。

「何でもない」

表情を整えて答える。

ただ、あなたたちから解放されるまでの日数だけよ。
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