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※そんなつもりはなかったのに!ローランドとの甘い一夜が?

Author: Kaya
last update Last Updated: 2025-07-17 05:06:00

 「……泣いてなどいない。」

 「うそ。泣いてるじゃないですか。」

 「……泣いてなど。私は氷の王だぞ?

 涙なんか流さない。」

 「何ですかそれ。

 だったら目から鼻水が流れてるとでも……?(それはそれで面白いけど)

 氷の王だからって、全然泣かない訳じゃないですよね?」

 「……お前が…死んだかと、紛らわしく思わせるからだ……っ」

 拗ねた様に顔をベッド脇に背ける、ローランド。

 あー、なんかもうローランドまで不憫に思えてきた。

 人を大事そうに抱き締めながらも、意地張って素直に認めようとしないこの男。

 ……愛を知らないから、人の愛し方も分からないんだ。

 愛されないのも辛いけど、愛を知らずに生きるのも、きっと苦しい事なんだろうな。

 それに、アデリナと同じくらい何だか不器用なローランドに、こんなにも心配されるなんて。

 ……正直嬉しい。

 「あー、はいはい。私が悪かったですーどうも、すみませんでしたね。」

 背中を二、三度軽く叩いてやる。

 抱き締められているのはこっちなのに、宥めているのは私の方で。

 懐かない猫を手懐けている感じ。

 「……そんな風に私を、子供扱いするな。」

 「えー、だって私が死んでしまうと思って泣いてるじゃないですか。

 それって何か可愛いですよ。

 そんな可愛い人を、慰めないわけにはいきませんー」

 それにアデリナには、ローランドに愛を教えてほしいと託された訳だしね?

 そう言ったらローランドは不服そうに私を引き離し、怒ったような顔をする。

 「ふん…!目を覚ましたら覚ましたで、また生意気な……っ。

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     ピクっとローランドの体が動く。 反応してる。分かりやすいなー。 それを見て私はニヤッと笑い、そのままローランドをベッドに押し倒した。 「アデ………リナ?」 驚いた様に目を見開くローランドが、なぜか今夜だけは可愛くて堪らない。 年下を翻弄する気持ち。……いや、アデリナの体は年下設定なんだけど。 ただ、これまで翔以外に人を好きになった事がないから、こんなの自分でも初めて。 それで最早当初の「接触しない」という決意をすっかり忘れてしまっているという。 「ローランド。知ってますか?」 「なにを……っ!」 形勢逆転。優越感を感じながらローランドを見おろし、その体にそっと触れる。 「キスは………唇にだけするものじゃないんですよ?」 ふふん。ローランドは恋人のリジーをひたすら気持ち悦くさせようと、あらゆるテクニックを使って奉仕していたが、自分は攻められた経験はなかったはず。 ……私、現実世界で死んだし、これで夫との縁も切れた訳だから、ローランドと何してももう問題ないんでしょ! だったら、散々マウントを取ってくれたローランドを、今度は私が弄んでやる! 何か知らないけど、そんな衝動に駆られて止められない。 この氷の王の完璧な仮面を剥がしてやりたいというか?  「アデっ、…リナっ、あ………」 手触りの良い厚い夜着の上から、ローランドの胸や腕に軽く触れる。 何その声…可愛すぎない? あんなに不貞腐れていたのに、今度は顔が赤くなっていってない? 「だいじょ〜ぶ。ほら、ローランド。リラックスして?」 なんて、ローランドを揶揄ってみる。 骨ばった長い指をすくい上げ、頬ずりしてみたり、そっと鎖骨を触ってみたり

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     ◇◇◇    私はアデリナ。アデリナ・フリーデル・クブルク。    今から約一年前、地図上で言うと母国マレハユガ大帝国のすぐ真下にある、クブルク国の王の元に嫁いだ。 夫は、いつか国との交流で国賓として招かれたローランド・フォン・クブルク。  ローランド六世だ。一目惚れだった。  すらりと伸びた身長。薄水色にも見える、美しい銀の髪。  それを後ろで一本に丁寧に束ねてある。  本当に見事な色。  威圧感のある切れ長の目。口元の黒子。  何事にも動じない性格。  早くに前王の父親を亡くし、まだ若いのに早々と国王になり、立派に国を治めている。    イケメン……!!カッコイイ……!!  好き………!!  滅多に笑わない。逆にそこが素敵! だけど私は大帝国の第一皇女のアデリナ。  幼い頃から父に甘やかされて育ち、自分でも自覚するほど我儘で、傲慢に育った。  直そうと思っても中々直せるものじゃない。 そんな性格が悩みの種で……。 ローランド王に果てしない恋心を抱きながらも、自分の性格の悪さから、彼にアプローチする事ができず。  婚期を逃して二十歳を超えた。  そんな時……  同じく今期を逃したローランド王から、クブルクへの加護を求める要請があったのだ。 「お父様…!クブルクを加護する条件に、私と王との結婚を入れて下さい……!  私、あの方を…ローランド様をお慕いしているんです!」    自分は性格が悪い上に、大事にしたい人達にもつい我儘で、思ってもない行動を取ってしまいがち。  染みついた習慣からつい偉そうにしてしまう。  本音が吐き出せず、すぐ人を傷付ける。  そんな私がローランド王に愛されるはずがない。  分かっていても………好きな人のそばに居たい。    そう思って半ば強引に彼の妻になった。 結婚初夜ではあまりにもローランドがイケメンすぎて、失神しそうになり。  下手な言い訳で彼を困らせた。  本当はそばに居るだけで幸せだった。 それから何夜目かで彼と結ばれて。幸せで幸せで、ただひたすらに幸せで。 どうしても性格だけは直せなかったが、何とかローランドに「好き」の気持ちを分かって貰おうと努力もした。 才能ある画家を雇ってローランドの肖像画を何枚も描かせ、喜んでもらおうとあらゆる場所に飾りまくっ

  • 愛のために我が子を失った悲劇の王妃に憑依したみたいです。推しの息子と二人で幸せに暮らすため、夫はヒロインに差しあげます!   走馬灯?私、上坂葵は死んだの?

     ……つまり私は今、半死状態で死んだ訳ではないってこと……? だとしたら魂が体から抜けて、小説の中のアデリナの体に入ったの!? すごいレアなケースじゃない……!!  って言うか、死にかけの妻の元に、不倫相手を連れ込むなっていうの……! 「……これが中々死なないんだよな。 でもまあ、もう助からないって医者からも言われてるようなもんだし、葵が死んだら家に来いよ。 その時はもう邪魔者もいないだろうから。」 「えー本当に?嬉しい〜そしたら私と結婚してくれる?」 「もちろん。それに葵が死んだら保険金も入るしさ。 離婚届にサインしてなくて良かった。俺達本当にラッキーじゃん。」 堂々と腰に手を回し合い、病室でイチャイチャする二人。 本当にびっくりするぐらい最低なクズ二人だな!地獄へ堕ちろ! もうこんなクズ男どーでもいいわ! それに私、こうなる前に離婚届用意してたんだね? ならこのまま死んだら、別にローランドとイチャイチャしても法律には触れない? ……って何言ってんの!どうしたの私! 血管切れて頭おかしくなった!? とにかくこのまま上坂葵《わたし》の体が死んだら、私どうなるんだろう……? ……それ、あまりに悔し過ぎる! このクズ二人に死ぬ前に何とか復讐してやりたいのに! 「……リナ……」 え?グラリと視界が歪む。病室や翔達も似た様に歪んで見えた。 「………アデリナ。」 誰かが私を呼んでいる。切実な声で。 今にも泣き出しそうな声で。 あれ……ロー…

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