バレスチカ子爵家令嬢たるわたくし、リリアーゼ・バレスチカは食事中に椅子から転げ落ちたショックで日本人であった前世の記憶を思い出しましたわ。 それと同時にここが乙女ゲーム、『ふぉーちゅん☆みらくるっ!』を元にした世界である事も、そしてわたくしが最終的にはどのルートでも非業の死を遂げる大ボス悪役令嬢であった事も。 まぁそれはそれとして、このままわたくしが元の感性から変わらずに過ごしていたらわたくしも、そしてわたくしのお気に入りである専属メイドのロゼも非業の死を遂げる事は避けられませんわね。 そんなふざけた未来をぶち壊すのは当然として、まずはロゼ、原作ではヤれなかったあなたから抱く事に致しますわ!
view more「きゃんっ!」
最初に感じたのは食堂に
「ぐ……ああああああああああぁ!!」
そして突如流れ込んでくる過去、別の場所で生きていた頃の記録に加えて特に鮮明に想起された、ある一つの遊戯。
乙女ゲーム『ふぉーちゅん☆みらくるっ!』、悪役令嬢、クレイジーレズ。
それは前世……わたくしが地球の日本という国でプレイしていた物の中で最も印象に残った乙女ゲームの記憶でしたわ。
そして明晰な頭脳を持つわたくしは瞬時に今日まで生きてきたこの世界が『ふぉーちゅん☆みらくるっ!』を下にした物であり、自身がユーザーからクレイジーレズと呼ばれていた大ボス悪役令嬢、リリアーゼ・バレスチカである事を爆速で理解しましたの。まぁそんな事はさて置き、まだ心の準備もできていないというのに唐突に脳に雑多な情報を詰め込まれたせいで頭がくっそいてぇですわ!
「大丈夫かい、リリアーゼ?主に頭とか」
頭を押さえてのたうち回るわたくしを心配そうな顔をして見つめながらくっそ失礼な事をのたまったこの黒髪黒目で赤のタキシードを着た青年はグレン・バレスチカ。
バレスチカ子爵家の当主代理で歳は19歳。 才色兼備なわたくしのお兄様なだけあってそれなりにイケメンですわ。「まったく、食事中に騒騒しいわね。そんなのを椅子にしてるから無様にすっ転ぶのよ」
呆れた顔をしつつ吐き捨てた同じく、ウェーブのかかった長い黒髪に黒目、蒼を基調としたドレスを身に纏う女性はアクアル・バレスチカ。
バレスチカ子爵家長女で年齢は16歳。 容姿端麗なわたくしのお姉様なだけあってそれなりの美少女ですわ。さて、一応描写はしましたが別にお姉様やお兄様の容姿なんてどうでもいい事ですの。
元々知っている事ですし。前世の記憶が戻ったと言ってもわたくしの人格が別人の物と入れ替わったとかそういう訳ではありませんものね。
そんな事よりわたくしにはまずやるべき事があるのですわ。 アクアルお姉様が『そんなの』呼びした
ちなみにこの少女はわたくしと同じ14歳。
日本人だった頃の記憶が戻った事によって凡人の一般的な感性を少し理解できたわたくしですが、自分と同い年の少女を椅子代わりにするとかわたくしって結構やべー奴ですわね。「申し訳……ございません。アーゼちゃん」
「最近の椅子はおしゃべりできるようになったんですのね。技術の進歩もここまで来れば大した物ですわ」
わたくしの発言を受けて少女は床に伏せたままビクンと震えましたわ。
それを見たわたくしは背筋がゾクゾクと震えるのを感じますの。あぁ……やはり自分が『お気に入り』の人生を握り、弄ぶ時の感覚、幸福感は格別ですわね。
前世の記憶が蘇った事でわたくしの人格が消えたりしなくて本当に良かったですわ。「お立ちなさいな、ロゼ」
土下座していた少女がのろのろと立ち上がり顔をあげますの。
わたくしがロゼと呼んだ少女はその名に恥じぬ、肩までで切り揃えた宝石のように綺麗なロゼ色の髪とパッチリと開いた同色の瞳をしており、これから叱責される事を恐れているのか眉が少し下がっているものの、美少女と言って差し支えない容姿をしていますわ。
胸はやや小振りですが、そこがまた愛おしい。
これからの成長が楽しみですの。着ているメイド服は先程までわたくしが彼女を椅子代わりにしていた事もあって、膝の辺りの白い生地が少し汚れていますわね。
描写が多い?
だってわたくしのお気に入りですもの。 当たり前の事ですわ。贔屓目なしに彼女の容姿を客観的に評価するとしたらまぁ、アクアルお姉様より僅かに劣るぐらいでしょう。
お気に入り補正が入っている事は否定しませんわ。「もう椅子になるのは結構ですわ。明日からはちゃんとした丈夫な物を使いますもの」
わたくしの言葉を受けてロゼの顔色がサッと青くなりましたわ。
グレンお兄様はまーた始まったとでも言いたげな表情をしてやがりますの。
一方、アクアルお姉様は興味のないフリをしながらも頬を赤らめてチラチラとこちらを覗っていましたわ。 前にわたくしに
「あなたには別の役割を与える事にしますわ。付いてきなさいな」
戸惑うロゼの手を握り、食堂から退室しますわ。
掌から伝わるのは温かい体温と手汗で少ししっとりとした柔らかい感触。手汗を一滴一滴ペロペロしたいですわね。
そして嫌がる彼女の顔を一日中眺めていたい。 あぁ、でも床についた手を舐めるのは流石に不衛生ですわ。 ……って、このままじゃ話が進みませんの。 雑念を振り払い、思考を切り替える事にしましょう。 前世の記憶、もとい乙女ゲームの内容を思い出した事でわたくしは将来、自身とロゼ、あとついでにお兄様やらお姉様やらの家族が死の運命を辿る事を知りましたわ。 そんなふざけた未来は当然ぶち壊すのは確定として、わたくしにはやるべき事がありますの。それは今まで貴族であるというプライドが邪魔をして出来なかった事。
……そう、ロゼに関する事なのですわ!原作で悪役令嬢の役割を担う、わたくしことリリアーゼ・バレスチカの悪行はバッドエンド、通称クレイジーレズルートにて主人公であるシャルロットを監禁し、◯ませるという、それはもう行き着くところまで行ってましたの。
ですけれど、お気に入りであるロゼに対しては◯ませるどころか、◯す事も、それどころかキスの一つすらしている描写がなかったのですわ!なんという屈辱!
なんという失態!! 今すぐにでも遅れを取り戻さねば!!!という訳でロゼ、これからは毎日お気に入りであるあなたを徹底的に蹂躙して、このわたくしの中に沸る情欲を発散する事に致しますわ!
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――主人公、リリアーゼ・バレスチカのイメージ(AIイラスト)及び設定を載せてあります。
https://x.com/niiesu/status/1946041702441177111
https://www.goodnovel.com/book/キャラクター設定紹介用_31001079614/リリアーゼ・バレスチカ_13498004
結局グラントお父様へのご挨拶はアクアルお姉様からの提案で、ダンジョンに修行に行っていたわたくし達3人だけでなく、グレンお兄様とマリアお母様もご一緒する事になりましたわ。 人数が増えたので面会は執務室ではなく食堂でお茶でもしばきながら行う事になりましたの。 わたくしとしてもそっちの方が肩肘張らなくて済むからよきですわね。 ◇ 部屋で少し休息をとった後で食堂に行く道すがらロゼとお姉様と合流、そのまま食堂に入室するとお兄様とお母様、そして黒髪黒目で髭を綺麗に切り揃えた軍服の上から黒のコートを羽織った偉丈夫、グラントお父様が家令のスバセが淹れたやっすい原価のコーヒーを啜ってましたわ。 わたくし達の入室に気付いたお父様は席を立つと大柄な体格に見合わぬ無駄のない動きでまっすぐこちらまでやってきましたの。 お父様はわたくしの父なだけあってかなりのイケオジですけれど、軍服を押し上げる程に盛られた筋肉と、お兄様の1.5倍はある肩幅、無愛想な目つきも相まって中々に迫力がありますわね。「ご機嫌よう、お父様」 「久しぶりね、父さん」 「ご無沙汰してます、御当主様」「うむ、3人とも見違えたな。それでこそ我がバレスチカ家の一員よ」 それぞれの挨拶に対して深く頷くお父様。 バレスチカ家至上主義、バレスチカファーストを信条としている彼にとって、こうしてダンジョンから帰還したわたくし達の成長をその目にするのが嬉しいのでしょう。 立ち振る舞いだけを見るなら立派な当主にしか見えないお父様ですけれど、実際には中々にやべーやつですの。 何せ原作ゲームの『ふぉーみら』において彼は投獄されたわたくしを救い出す際、自分が団長として手塩をかけて育ててきた騎士団員を全員、ついでに陛下を容赦なくぶち◯してますものね。 彼が四天王(3人)としてシャルロット達と相対した時の会話でのキレっぷりも相当アレで、ユーザーからはキチ親父と呼ばれてましたわ。 バレスチカファースト、ここに極まれりですの。 わたくしが原作でのお父様の事を回想してる間にお父様はお姉様と向き合ってましたわ。 何か仰りたい事でもあるのかしら。「強くなったなアクアルよ。冒険者協会には我からSランク昇格試験への推薦状を出しておこう」「私が父さんと同じSランクに……?」「うむ。戦いの経験値さえ除けば今の貴
△△(side:リリアーゼ) セーフティエリアに突如現れた【幻竜王(げんりゅうおう)シャーク・ドレイク】と【処刑者(しょけいしゃ)キルリス】をぶち〇して帰還。 そこで起きた異常事態をダンジョンの受付がある巨大テント内で説明(もちろん面倒なのでアクアルお姉様にやらせましたわ)し終えて、馬車にのり揺られる事3時間。 ようやくバレスチカ子爵家まで戻ってこれましたわ! ダンジョン内ではお姉様の【清浄(ピュアリィ)】があるから不快感はなかったとはいえ、やっとお風呂に入れますの! 食事も十分美味だったとはいえ、毎回シチューのバリエーションでは飽きがくる事ですし、やはり慣れ親しんだ我が家こそ覇権なのですわ! 行きと同じように馬車から先に降りたロゼの手を取ってエスコートしてもらったその時–––– 屋敷の方から爆発音が聞こえたかと思うと凄まじい勢いで土煙を上げながらこちらに向かって爆走してくる者がおりましたの。「アクアルゥ〜〜ッ!!!」 予想通り、その者は赤いタキシードを着た黒髪黒目のシスコン……ではなくグレンお兄様でしたわ。 こちらまで走ってきたお兄様は涙をぽろぽろと流しながら、馬車から降りたお姉様の手を取りましたの。 必死すぎてキモ……いえ、お姉様に抱きついてお胸に顔面ダイブをかましたりしないだけまだ分別がある方なのかもしれませんわね。 わたくしがお兄様の立場だったらロゼの全身をくまなく撫で回してるところですわ。「よかった!僕は君が無事に戻ってきてくれるか心配で心配で……夜しか眠れなかったよ!」 夜眠れりゃそれで充分だろーがですわよ。「もう、大げさなんだから兄さんは。ちょっと……それなりのトラブルはあったけど私達はそう簡単にくたばる程ヤワじゃないわ」 そう言うお姉様は呆れたセリフとは裏腹に、頬を赤らめていて満更でもなさそうでしたわ。 傍から見るには割と脈もありそうな気もしますけれど、お兄様はイエスシスターノータッチが信条ですし、そもそも婚約者(お姉様の親友)がいるからR18な事にはならなさそうですわね。「ロゼもお疲れ様だったね。こうして立ち姿を見ただけでここを出る前より数段成長したのが感じ取れるよ。疲れてるだろうし、今日はゆっくり休みなさい」「ありがとうございます、グレン様。アーゼちゃんとアクアル様のお力のおかげで何とか頑張れました!」
「世話になりましたわね、お姉様」 リリアーゼからかけられた言葉に私は呆気に取られたわ。 高慢ちきなこの子が素直に礼を言うなんて……。「あとはわたくしがやりますの。手出しは不要ですわ」「……リリアーゼ」「臭––––「うっせぇですわ!!」 苦情を漏らした私を怒鳴りつけつつ先程吹き飛ばした、紫色の金属で全身を覆う瞳が真鍮でできた魔物の下へと歩みを進めるリリアーゼ。 そんな彼女と入れ替わるようにロゼ色の髪と瞳をした、丈の短いスカートのメイド服に身を包む少女、ロゼが刺激臭を撒き散らしながら駆けつけてきたわ。「アクアル様、ご無事ですか!」「ロゼ。悪いけどちょっと離れ……いや、やっぱりいいわ。【清浄(ピュアリィ)】」 呪文を唱えるとロゼの身体が鈍く発光し、彼女から漂うヘドロのような酷い臭いが掻き消えた。 良かった、私の【清浄(ピュアリィ)】はこのレベルの臭いにも効くのね。「ありがとうございます!あの……これ使ってください!」「頂くわ」 私はロゼからハイポーションを受け取ると、そのまますぐに飲み干す。 普段なら高額なハイポーションなんて使わずに自分で傷を癒す所だけど、魔法の連続使用で精神的に疲弊しすぎてるし、それにここに来てから手に入ったドロップ品を売りさえすれば使った費用に関してはすぐ戻ってくるわ。「アーゼちゃんは勝てるでしょうか?」 私の隣に立ち、現れた魔物とリリアーゼの対峙を見届けるロゼがオドオドとした様子で訊ねてきた。 まぁ、不意打ちとはいえリリアーゼはあの魔物の攻撃で死にかけたんだから不安にもなるわよね。「ロゼ。私がアレと戦い始めてからどれだけの時間が経ったか分かる?」「あ……申し訳ありませんアクアル様。アクアル様のおかげであたしもアーゼちゃんも命を拾––––」「いや、別に嫌味を言いたいわけじゃないから」 フォーチュン学園の学園長が朝礼台の上でよくやる『今、皆さんが静かになるまで〜〜分かかりました』的な寸劇をしたかった訳じゃないのよ?「私があの魔物と戦って保たせた時間は約3分。そんな相手にリリアーゼがもし本気を出したら––––」 ちょっと得意げに微笑んで答える。「30秒でケリがつくわ」 ドン!!! 前方から大きな衝突音が聞こえてきたわ。 その音の正体は体勢を立て直した魔物の顔面にナックルダスターを装備したリリアー
△△(side:リリアーゼ) んん……くっさ。 なんなんですの、この酷い臭いは。 血を流しすぎたせいか、意識が朦朧としていたわたくしは先程から鼻先を掠め続ける腐った生ゴミみたいな臭いに辟易していましたわ。 それにさっきから唇に生温い水らしき物が触れてきやがりますし、とんでもなく不快ですの。 この不快さから逃れる為に目を開けたいのに瞼が上がらない、そんなもどかしい状況が続く最中、不意に唇に柔らかくて温かい感触が伝わってきましたわ。 不思議な触感を持つそれはわたくしの口内へと侵入し、何かを渡そうとしているように感じられましたの。 わたくしはその正体を確かめるべく、重い瞼を開いて––––。 ……ロゼ? 目覚めたらロゼ色の瞳と髪の少女、わたくしの最愛のメイドであり義妹でもあるロゼと唇を合わせている事に気付きましたの。 あぁ、これは夢ですわね。 だってあまりにもわたくしに都合が良すぎますもの。 ロゼの可愛らしい顔がどこか苦痛に歪んでいるように見えるのはおそらく、この夢がわたくしが彼女に百合乱暴(控えめな表現)しているシチュエーションなのだからでしょう。 だいぶ溜まってますわね。 でもどうせ夢なのだから楽しまなければ損ですわ。 わたくしは夢の中の彼女の口内を蹂躙しようとして–––– 流れ込んできた液体のあまりのまずさ、苦さ、そしてヘドロみたいな臭いに盛大に咳き込みましたわ。「ぶええええぇっ!?くっさ!!?まっず!!??なんなんですの、これは!!!」「アーゼちゃん!良かった……」 意識を取り戻したわたくしに抱きついてきたロゼをなるべく乱暴にならないよう優しく押し戻しましたわ。 いえ、普段なら喜んで受け入れるし、ついでにどさくさに紛れて太腿やらお尻やらを撫でてるところですけれど、ロゼからさきほどわたくしが感じたヘドロのような臭いがするので流石にそんな気分にはなれませんの。 むしろ突き飛ばして罵倒しなかっただけ偉いと褒めて欲しいぐらいですわ。 ……あら? ちょっと時間を置いた事でぼんやりした頭が回ってきて、そのせいでわたくしは気付きたくなかった事に気付いてしまいましたわ。 ……もしかして今のでわたくしのファーストキス、しかも待ちに待ったロゼとの交わりは終わりなんですの?「……ロゼ、状況を説明なさい」 ふううううぅうう。 落ち着
△△(side:ロゼ)「アーゼちゃん!?」 幻竜王シャーク・ドレイクを倒し、アーゼちゃんがようやく一息付いたその時―― まるで彼女の影から這い出るようにして全身を紫色の刃物で覆ったような魔物が現れ、アーゼちゃんの背後から何かを突き刺したのが見えました。 アーゼちゃんの胸から長剣が飛び出し、大量の出血が引き起ります。「う……あああああああああああ!!!」 目の前が真っ赤に染まり、怒りの感情が頭の中をグルグルと駆け巡りました。 あたしは手の中にある短剣を握りしめると、すぐさまアーゼちゃんを手にかけた魔物に飛びかかろうとして―― 既に行動を起こしていた人物がいた事に気が付きました。「【激流加速(アクアブースト)】––––はあっ!!」 アクアル様です! 彼女は足元から水の魔法を噴出する事で推進力を得た事で高速で飛び出すと、そのままアーゼちゃんにトドメを刺そうとした魔物に薙刀で斬りかかったのです!「ロゼ!リリアーゼを回収してすぐに治療しなさい!このままじゃ全滅するわよ!」「は、はいっ!」 そのまま現れた魔物と斬りあいになるも、冷静に指示を飛ばすアクアル様を見て、ようやくあたしも我を取り戻しました。 そうです。 ここであたしが怒りのまま戦いを挑んだところで、返り討ちにされるのは目に見えているという物です。 あたしは今、あたしにしかできない事をしないと!「アーゼちゃん、すぐに治しますから!」 アクアル様が現れた魔物を引き付けている間、あたしはすぐさまアーゼちゃんの傍まで駆け寄り彼女の身体を抱えると、20m程離れた場所まで移動しました。 ◇ 「早く……早く何とかしないと」 アーゼちゃんの身体を地面に横たえると、あたしはすぐに収納袋の中を漁り始めます。 ――あった! 取り出したのは瓶詰めにされた濃い蒼色の液体。「ハイポーション!これさえあれば––––」 治癒魔法程ではないものの、怪我や傷を驚くべき早さで治す秘薬であるポーション(1本5万ゼニン)。 ハイポーションはその上位の性能を有しており、その効力は治癒魔法と同等、場合によっては上回る事すらあると言われている程です。 そしてバレスチカ家ではこのハイポーション(1本50万ゼニン)がなんと!当家の子息子女に対して一人につき5本も支給されているのです! これだ
△△(side:リリアーゼ)「リリアーゼ!ロゼ!今すぐ起きなさい!!」 アクアルお姉様の必死な怒号が飛ぶと同時にわたくしとロゼはテントをぶち破って外に出ましたわ。 お姉様が叫ぶ以前に先程の地響きでとっくに目は覚めてましてよ? さて、わたくし達以外にこの第8階層まで辿り着ける者がいただけでも驚きですけれど、一体どんな低俗な輩が喧嘩を売って…… 「は?」 外に出たわたくしの目に映ったのは完全に想定外の……あまりにも馬鹿げた光景でしたわ。 隣にいるロゼは可愛らしい小さい口を開けてポカンとしてますの。 第9階層へと続く階段前に鎮座してるのは5mは優に超える水色の鱗に覆われた巨体に加えて鮫のように大きく裂けた品のない口にギザギザのきったない牙を剥き出しにした竜。「【幻竜王(げんりゅうおう)シャーク・ドレイク】じゃねぇですの!?お姉様、これは一体どういう事ですのよ!?」 まさかテントごとボスのいる第9階層に来ちゃったとかいうオチじゃないですわよね!?「私だって分からないわよ!とにかく逃げ––––」 「GYAAAAAAAAA!!!」 まだ話終わってないというのに幻竜王はその背に引っ付いた巨大な翼をはためかせると、真っ直ぐわたくし目掛けて突っ込んで来やがりましたわ!「危ない!」 咄嗟に横にいたロゼが声を上げてわたくしに抱きつくと、そのまま横に跳ぶ事で幻竜王の体当たりを回避しましたわ。 ––––って、ロゼ!? 何を無茶してやがりますのよ! あんなデカい図体の攻撃ぐらい、わたくしだって当然回避できてましたわ! ……庇ってくれたのはちょっとだけ嬉しかったですけれど。「リリアーゼ、どうするの!?」「もちろんここでぶっ倒しますわ」 既に体当たりから退避していたお姉様からの問いに答えますわ。 何でこいつがセーフティエリアに現れやがったのかは知りませんけれど、下の階に逃げたところで追いかけてくるのは目に見えてますの。 ならば雑魚がいる下の階で戦うよりも、魔物が入ってこれない(目の前の例外は除く)セーフティエリアで倒した方が安全という物なのですわ。「ロゼは待機!お姉様は足止め!アレはわたくしがぶち◯しますわ!」「分かったわ!」「分かりました!」 真っ当な作戦なんて立ててる暇はないし、今はこれが精一杯ですの。 とりあえずロゼが
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