え?ハグ?女同士のハグ?百合?
まさか百合展開とかじゃないよね? そんなの原作に全くなかったよね?「う、うん、いいけど……」
返事したと同時に、真正面からギュッと抱き締められた。厚い胸板に顔が埋まって息ができない。
「う、ぷっ…ちょっ、ルナール?」「んー、アデリナ。
お前、抱き心地最高だな。」やっと顔を上げたのにルナールはなぜか体をギュウギュウに絡めて、やっぱり私の髪の匂いを嗅いでくる。
ちょっと、凄い力強いんですけど。 押しても引いてもびくともしない。 それにサラシを巻いて胸を隠してるにしては、脂肪分というより、かなり筋肉質な体をしている。 山賊の頭領設定だから強いのは分かるけど、それにしても体は男そのものじゃない?「ルナール?ねえ、ちょっと、ルナー……」
暫くそうしてると、自分の脹脛辺りに何かゴツンと硬いものが当たった。
「え………?」
「何だよ。アデリナ。俺は女、なんだろ?」
見上げたら、ルナールの少し優し気な瞳と目が合う。
だが同時に意地悪そうな口元の笑みも一緒に映った。それにはドキッというよりギクって表現が相応しい。え?え?何?何が?何で?何これ。
ルナールは女だよね? そんな設定だったよね?ローランドに恋する不憫な……「ステータス、おーぷん…」
ごくりと唾を飲み込んで、私はウィンドウ画面を出現させた。
[ルナール▷本名レェーヴ
正体▷男装した女を装った、男 ルナールの兄 21歳 Lv89 アデリナを堪能中 現在の親密度55 体温37.4]………なん、だ、これは。
男装した女を装った&helli扉を切り裂いてまで私とレェーヴの間に入ってくるローランド。最早ギャグでしかない。 しかし助かった!!ナイスローランド!! 「へ、陛下ぁ……」 自分ではよく分からなかったが、実は私は緊張していたらしい。 半ば泣きべそをかきながら、レェーヴの手を離れ、ローランドの真後ろに回り込んだ。 「やっぱり、こんな事だろうと思っていた。 だから私が言っただろう! こいつは男だって!」 「……ほ、本当に!!陛下が鈍いなんて思ってごめんなさい!」 完全に原作を信じ切っていた!私はルナールを女だと思い込んでたけど、ローランドは本能的に分かっていたの? さすが氷の王!侮れない……! 反省して啜り泣く、情けない私の顔を始めは怒り気味に見下ろしていたローランドだったが、次第にその顔は崩れて、悩まし気な瞳をする。 剣を鞘に納め、私の方に向き直る。 骨ばった大きな手がそっと私の頬に触れた。 「ほ……ほら。 分かったなら、もう……泣くな。 お前が泣くと、私はどうしていいか分からなくなる。」 「え……?どうしていいかって、どうもしなくていいですよ? いつも通りで……」 「いや、だから……そうじゃなくて。 あ、アデリ……」 「なあ。あんたらやっぱり仲いいの? 不仲っていうあの噂はデマなんだ? っていうか俺の事無視して、そこでイチャイチャするの止めてくれない? 馬鹿夫婦。」 「何だと……!」 ベッドの上で心底つまらなそうにこちらを眺めてるレェーヴの言葉に反応し、ローランドが再び剣鞘に触れる。 だー、まずいまずい! 「陛下!大丈夫
◇ 今すぐ逃げようと思います。 危険の度合いを数字の5段階で示すとしたら、危険アラート最大5くらい(?)。 「じ、じゃあ、そういうことで……、」 「おい、今さらどこ行くんだよアデリナ。 逃すか。」 慌ててベッドを抜け出そうとしたら、ぐいっと体ごと引っ張り直されて、また抱き止められる。 「な、な、何で男なのー!?騙された! 貴方にも!作者にもね!!」 「サクシャ……? ははっ。本当のルナールは今、お前の夫と寝室にいるレェーヴの方なんだよ。」 「……え!!」 「俺は替え玉。 時々妹が危険そうな場面に出くわした時に、俺が妹のフリをすんの。 今回はずーっと替え玉になってたってわけ。 あんたが何でルナールの秘密を知ってたのかは知らないけど、残念だったな?」 「な、なるほど。 そんな複雑な事情があるとは知らず。 じゃ、じゃあ私はこれで……」 「おい、待てよ。 自分から誘っといて、俺を放置するのか?」 「誘っ…!?いえ!私は貴方を誘った覚えはないですけど!?」 変なことを言って人を再度ベッドに引き寄せようとするルナール、改めレェーヴから逃れようと必死に抵抗する。謎の攻防が続いた。 「じ、じゃあ陛下の部屋に押し付けた方が本物のルナールってこと! そっちの方がまずいんじゃない!?」 いくらローランドが鈍くても… いや、このレェーヴが男だと頑なに言い張っていたから鈍いとは言い切れないけど、もし万が一本物のルナールが女だって分かったとしたら。 原作通り、ルナールはローランドに惹かれてしまうのだろうか? そしてローランドもまた、ルナールを邪険にできずに優しくしてしまうのだろうか? 一瞬、モヤっとする。 &h
え?ハグ?女同士のハグ?百合? まさか百合展開とかじゃないよね? そんなの原作に全くなかったよね? 「う、うん、いいけど……」 返事したと同時に、真正面からギュッと抱き締められた。厚い胸板に顔が埋まって息ができない。 「う、ぷっ…ちょっ、ルナール?」 「んー、アデリナ。 お前、抱き心地最高だな。」 やっと顔を上げたのにルナールはなぜか体をギュウギュウに絡めて、やっぱり私の髪の匂いを嗅いでくる。 ちょっと、凄い力強いんですけど。 押しても引いてもびくともしない。 それにサラシを巻いて胸を隠してるにしては、脂肪分というより、かなり筋肉質な体をしている。 山賊の頭領設定だから強いのは分かるけど、それにしても体は男そのものじゃない? 「ルナール?ねえ、ちょっと、ルナー……」 暫くそうしてると、自分の脹脛辺りに何かゴツンと硬いものが当たった。 「え………?」 「何だよ。アデリナ。俺は女、なんだろ?」 見上げたら、ルナールの少し優し気な瞳と目が合う。 だが同時に意地悪そうな口元の笑みも一緒に映った。それにはドキッというよりギクって表現が相応しい。 え?え?何?何が?何で?何これ。 ルナールは女だよね? そんな設定だったよね?ローランドに恋する不憫な…… 「ステータス、おーぷん…」 ごくりと唾を飲み込んで、私はウィンドウ画面を出現させた。 [ルナール▷本名レェーヴ 正体▷男装した女を装った、男 ルナールの兄 21歳 Lv89 アデリナを堪能中 現在の親密度55 体温37.4] ………なん、だ、これは。 男装した女を装った&helli
◇ フィシ達は城の牢獄に閉じ込めてある。 王妃殺害未遂の罪も大きいが、この世界の契約書はかなり大きな意味を持つそうで、破れば相応の罰が下されるんだとか。 だからローランドも私との離婚を渋ってるのかも? 今後どうなるか分からないが、とにかく今夜はルナールを守れたし、良しとしよう。 「今夜はルナールと一緒に寝ます。 心配しないで。」 「いや……心配しかない!! 駄目だ!アデリナ!あれは間違いなく男だ! お前は一体何を言ってるんだ! お前は私の妻だぞ!もっと自覚しろ! だめだ、アデリナ!アデリナ!!!」 頑なにルナールを男と疑うローランドが、すごい剣幕で引き止めてきたが、とりあえず部屋から追い出して鍵を閉めた。 元々私がいた寝室にはレェーヴを押し付けた。 「は〜。これだから鈍感男は。」 「アデリナ、来い。」 「?貴方のベッドはあっちよ?」 なぜかルナールが人のベッドに横たわり、嬉しそうにシーツを叩いて呼んでる。 「えー、いいだろ? だって俺達友達だろ?一緒に寝ようぜ。」 どうやら私は「友達」というワードに弱いらしい。 長く主婦をして、夫の浮気に全神経注いで辟易していたせいか、友達と何かをして楽しむという事も忘れていた様だ。 「っ、しょうがないわね〜。」 とか言いつつ自分の口角は緩みまくりだ。 そっと狭いベッドに横になる。 ただ思った以上に狭いから、どうしてもルナールに体はくっついてしまう。 「アデリナ。お前、いい匂いするな。」 「そう?軽くお風呂入ったからかな。」 すん、とルナールが人の頭の匂いを嗅ぐ。 ひゃー!やっぱり山賊として、しかも頭領として長年男装してきたルナールの男らしさは、大したものだ。 これ絶対、知らない女なら惚れちゃうやつ。 白髪に近い綺麗な髪がさらりと枕に落ち、薄い灰色の
勇ましいローランドの姿に毎回ドキドキしてしまう。 これはルナールやリジーが惚れて当たり前。 やっぱり男主人公優遇されすぎ! 「あのっ、ありがとうございます。陛下。 私を話を信じてくれて。」 汗をかき、まだ息の乱れたローランドを見上げて私は素直に礼を言った。 「…当たり前だろう。夫が妻を信じなくてどうする。」 《今夜ルナールが奇襲される》 そんな、まだ起きてもいない事をローランドはあっさりと信じ、こうして来てくれた。 私の夫、本当に完璧だなぁ。 強いし、そして何だかんだでちゃんと守ってくれてる。 いくら政略結婚とはいえ、アデリナは一応妻だし、それが義務だもんね? たまに訳分からない誘惑もするけど本当にいい男だ。 暗殺者達は皆捕えられ、フィシは即座に拘束された。 「アデリナ………」 ふとローランドが手を伸ばし何か言いかけたけど、私はルナールの服が破れてる事に気付いて大慌て。 「ルナール…!服、破れてる!」 「え?ああ、本当だ。最初の一撃の時に奴らの剣が掠ったのか」 しかも胸元だ。 この場にいるのは私以外全員男! 誰にも聞かれないようにルナールにそっと耳打ちした。 「こっちへ来て、一緒に着替えましょう。」 「え?」 「大丈夫、貴方が女だって事、私には分かってるわ。」 「………!!………ふうん。 じゃあ、お願いしようかな?」 奥にある男性用のドレスルームに連れて行こうとすると、なぜかルナールに笑われてしまう。 「?とにかく、急いで。」 「アデリナ?」 不安そうな顔してローランドが私達を引き止めた。 「大丈夫です。ちょっとルナールを着替えさせるだけですから。 陛
やばい…!男主人公かっこよ過ぎ! あの後、まさにローランドが勢い良く部屋に突入してきた。 一本に束ねた綺麗な銀髪を揺らし、私とルナールを庇う様に前に立ち、暗殺者達を次から次へと華麗に倒していった。 血とか、血とか(動揺して2回言うよね)は本当にえぐいんだけど、目の前のローランドがあまりに無敵過ぎてつい見惚れてしまう。 その後に入ってきた味方の兵達も、見事に暗殺しゃ達を倒していった。 これがクブルクの真の実力。 だからアデリナは戦争で苦労したんだよね。 ローランドは勿論だけど、クブルク兵達も強過ぎ……! 敵にしたら厄介だけど味方なら心強すぎる! 「やめ、ローランド王、こっ、これには深い訳がっ」 とか何とか、床にへたり込んで言い訳をしているフィシにローランドは剣を向けた。 怖い顔して。久々に見る氷の王! 「私の妻を殺そうとした時点で重罪だ。 フィシ。王妃暗殺未遂と契約違反により、お前には厳しい罰を与える。」 「ひいっ………!」 ローランドは、以前私によく見せていた氷の様な眼差しをフィシに向けた。 一瞬にしてその場は制圧され、兵達はまだ動ける暗殺者達を捕縛していった。 圧倒的勝利である。 「……っ、何でっ、フィシの企みが分かったんだ?」 ルナールは唖然とした様子で、私の両腕を強く握った。 ルナール。良かった。何ともなくて…… 「何で……?うーん。 まあ、直感というか何というか。」 「だとしても………!!こんな昨日、今日会った相手を守ろうと捨て身で飛び込むなんて、あんたは馬鹿なのか!」 「確かに……! でも、ほら。ローラ……じゃない、陛下を信じてたから。」