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愛のない夫婦生活から、私はもう一度踊り出す
愛のない夫婦生活から、私はもう一度踊り出す
Auteur: こいのはな

第1話

Auteur: こいのはな
浴室からシャワーの音が聞こえてくる。

森川拓海(もりかわ たくみ)がシャワーを浴びているのだ。

午前3時。

さっき帰宅したばかりだった。

森川知佳(もりかわ ちか)は浴室の扉の前に立っていた。話したいことがあったのだ。

これから相談しようとしていることを、彼が聞いてくれるだろうか。少し不安になった。

どう話しかけようかと迷っていると、中から妙な音が聞こえてきた。

耳を澄ませて、やっと理解した。拓海が一人でしていることの音だった……

荒い息づかいと押し殺したうめき声。胸を重いハンマーで叩かれたような衝撃が走った。苦しみが波のように押し寄せてくる。その痛みに息が詰まった。

今日は二人の結婚記念日で、結婚して5年が経つ。それなのに夫婦として一度も……

結局、自分で済ませることを選んでも、私には触れたくないということなのか?

彼の息づかいがさらに荒くなる中、限界まで我慢したような低い声で果てた。「結衣……」

この一言が、心を完全に砕いた。

頭の中で何かが音を立てて崩れ、すべてが粉々になった。

必死に口を押さえ、声を漏らさないよう振り返った瞬間、よろめいた。洗面台にぶつかって床に倒れてしまった。

「知佳?」中から拓海の声がした。まだ息が整わず、必死に抑えようとしているのが分かったが、呼吸は荒いままだった。

「あ……お手洗いに行こうと思って、シャワー中だなんて知らなくて……」苦しい言い訳をしながら、慌てて洗面台につかまって立ち上がろうとした。

でも焦れば焦るほど、みじめになっていく。床も洗面台も水で濡れていた。やっとの思いで立ち上がったとき、拓海が出てきた。白いバスローブを慌てて羽織って乱れていたが、腰の紐だけはしっかりと結ばれていた。

「転んだのか?俺が手伝うよ」彼女を抱き上げようとした。

痛みで涙が溢れそうになったが、それでも彼の手を振り払った。そして意地を張って、「大丈夫、一人でできるから」と言った。

そして再び滑りそうになりながら、足を引きずって寝室へと逃げ帰った。

「逃げる」という表現は決して大げさではない。

拓海と結婚したこの5年間、知佳はずっと逃げ続けていた。

外の世界から逃げ、周囲の視線から逃げ、そして拓海の憐憫の視線からも逃げていた――拓海の妻が足の不自由な人だなんて。

足の不自由な人が、端正で事業も成功している拓海と釣り合うはずがない。

でも彼女にも以前は健康で美しい脚があったのに……

拓海もすぐに出てきて、やさしい口調で心配そうに尋ねた。「痛くないか?見せてくれ」

「大丈夫」知佳は布団を引き寄せ、自分のみじめさと一緒に布団の中に身を隠した。

「本当に大丈夫か?」彼は本当に心配していた。

「うん」彼女は背中を向けて、強くうなずいた。

「じゃあもう寝るか?お手洗いに行きたかったんじゃなかったのか?」

「もう行きたくない。寝ましょうか?」知佳は小さく言った。

「わかった。そうそう、今日は俺たちの記念日だから、君にプレゼントを買ったんだ。明日開けて、気に入るかどうか見てくれ」

「うん」知佳は答えた。プレゼントはベッドサイドに置かれており、もう見ていた。ただ、開けなくても中身がわかる。

毎年同じ大きさの箱で、中には全く同じ時計が入っている。

知佳の引き出しには、誕生日プレゼントと合わせて、すでに9個の同じ時計が眠っており、これが10個目だった。

会話はそこで途切れ、彼は電気を消して横になった。空気中にボディソープの湿った香りが漂っていた。でもベッドの沈み込みをほとんど感じなかった。2メートルの大きなベッドで、彼女がこちら側に寝て、彼は向こう側の端に横になっている。二人の間にはまだ3人が寝られるほどの距離があった。

二人とも結衣という名前を口にすることはなく、ましてや彼が浴室でしていたことについても触れなかった。まるで、何も起こらなかったかのように。

知佳は固まったまま仰向けに横たわり、ただ目の奥がヒリヒリと痛むのを感じていた。

結衣、立花結衣(たちばな ゆい)は彼の大学の同級生で、初恋であり、憧れの人だった。

大学卒業のとき、結衣は海外に行き、二人は別れた。拓海は一時期立ち直れず、毎日酒に溺れていた。

知佳と拓海は中学の同級生だった。

中学時代からひそかに彼を好きだった。

その頃、拓海は学校一のイケメンで、クールな優等生だった。一方知佳は芸術系の生徒だった。美しくはあったが、美しい女の子は大勢いた。成績がすべてだった学生生活において、芸術系の生徒はそれほど目立たず、偏見を持たれることさえあった。

だから、それは彼女だけの片思いで、いつか彼の前に立てる日が来るなんて思ったこともなかった。

芸術大学のダンス学科を卒業して夏休みに実家に帰っていた時、落ち込んでいる拓海と再会するまでは。

その夜も拓海は酔っぱらっており、ふらふらと歩いていた。横断歩道を渡るとき信号を見ておらず、一台の車がブレーキも間に合わず突っ込んできた。彼を突き飛ばしたのは彼女だった。心配で彼の後をついていた知佳が、彼を押しのけて自分が車にはねられたのだった。

知佳はダンス専攻で、大学院への推薦も決まっていた。

しかし、この交通事故で、足は不自由になった。

もう二度と踊ることができなくなった。

その後、拓海は酒をやめ、知佳と結婚した。

知佳に対して罪悪感を抱き続け、感謝し続け、優しい言葉をかけ続けた。でも同時に冷淡で水のように冷たく、そしてたくさんのプレゼントをくれ、たくさんのお金をくれた。

ただ一つだけ、愛してはくれなかった。

知佳は、時間がすべてを癒してくれると思っていたし、時間がすべてを薄れさせてくれるとも思っていた。

しかし想像もしなかったのは、5年が過ぎても、彼は「結衣」という名前をこれほど深く心に刻んでいるということだった。さらには、自分で処理するときでさえ、呟いているのはその名前だということだった。

結局は私があまりにも愚かで世間知らずだったのだ……

一睡もできず、スマホの中のそのメールを、この夜100回は見返した。

海外のある大学からの大学院入学許可通知で、今夜彼と相談するつもりだったこと――私が海外の大学院に行くことは可能かどうか?

しかし今となっては、拓海と相談する必要はなさそうだった。

5年間の結婚生活、数え切れない眠れぬ夜。それがついにこの瞬間から終わりに向かって歩み始めるのだ。

拓海が起きたとき、知佳はまだ寝たふりをしていた。外で家政婦の中村さんと話している声が聞こえた。「今夜は接待があるから、彼女には待たずに休むよう伝えて」

言い終えると、彼はまた部屋に戻ってきて様子を見た。知佳は布団をかぶっており、涙で枕が濡れていた。

普段拓海が会社に行くときは、知佳が彼の着る服をコーディネートして脇に置いておき、彼はそれを着るだけだった。

しかし今日はそれをしなかった。

拓海は自分でクローゼットに行って着替え、会社に向かった。

知佳はそのとき目を開け、ただ目がひどく腫れぼったいのを感じた。

スマホのアラームが鳴った。

それは自分で設定した時間で、起きて英語を読む時間だった。

結婚後の知佳は、足のことで9割の時間を家に閉じこもっていた。もう外出することはない。一日の時間を区切って、それぞれに何かすることを見つけて時間を潰すしかなかった。

スマホを手に取ってアラームを止め、それからさまざまなアプリを目的もなく見始めた。

頭の中はぼんやりと混乱していて、何も頭に入らなかった。

それが、ある動画アプリで突然一つの動画を見つけるまでは。

画面の中の人があまりにも見覚えがある……

もう一度アカウント名を見ると――結衣CC。

このおすすめ機能は……

投稿時間は、昨夜だった。

知佳が動画をタップすると、すぐに賑やかな音楽が響き、それから誰かが叫んでいる声が聞こえた。「いち、に、さん、結衣おかえり!乾杯!」

この声は、なんと拓海だった。

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