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第15話

مؤلف: 匿名
「まだ寧々の情報は掴めていないのか」

時彦の低い問いかけに、アシスタントは顔を上げることすらできなかった。

「その口座については、現時点ではまだ特定できていません……

ただ、確実なのは、奥様の現在地は国外にあるということです」

国外だと聞いた瞬間、時彦の胸はさらに重く沈んだ。

世界はあまりにも広い。彼女は一滴の水のように海へ溶け込み、もう二度と痕跡すら掴めない気がした。

このところ、時彦はずっと寧々の部屋で眠っていた。だが、長い間誰も使っていないせいで、部屋に残っていた彼女の匂いは日に日に薄れ、今ではほとんど感じられなくなっている。

「引き続き探せ」

時彦は眉間を揉みながら車で帰ろうとしたが、冷え切った屋敷に、もはや妻の姿はないのだと思い至り、彼の目は暗く沈んだ。心に空いた欠片は、ゆっくりと大きくなり、冷たい風が吹き込んでくるようだった。

「江島社長、提携先の会社が、奥様はオペラがお好きだと聞いたそうで、チケットを二枚お持ちになりました。どうしても受け取ってほしいと」

机の上に置かれた二枚のチケットを見て、時彦は、あの日、美咲からの一本の電話で約束を反故にした時のことを思い出した。あの時の寧々の表情は、静かだった。

だが、それは平静というより、すべてを諦めきった失望に近かった。

これまで彼女を疑い、傷つけてきた数々を思い返し、時彦は激しい後悔に襲われた。気づけば、彼はその二枚のホワイトスワンオペラ団のチケットを受け取っていた。

指先でチケットをなぞりながら、意識は遠い過去へと遡っていく。

それは、寧々と初めて出会った日のことだった。

当時の彼は、留学したばかりの世間知らずな青年にすぎなかったが、あのオペラの舞台で、歌劇団の主演女優に一目で恋をした。

もともとオペラに興味などなかったはずなのに、その時ばかりは、彼女の存在に引き寄せられるように、息を詰めて舞台を見つめていた。

彼女が何を歌っていたのか、内容はほとんど覚えていない。ただ、心だけが、舞台の上の彼女にさらわれていた。

後になって知った。彼女の名は、寧々。

なんて美しい名前だろうと思った。

チケットに印字されたホワイトスワンオペラ団の文字を見つめると、封じ込めていた記憶が、再び静かに開かれていく。

時彦は思い出した。寧々はかつて、ホワイトスワンオペラ団の首席だった。

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