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第4話

Auteur: 浮々
こんな茶番劇は、奈々が子どもの頃から何度も繰り返してきたことだった。

だが両親はいつだって彼女の言葉を信じ、彼女の味方に立った。

晴子は何度も思った――悪いのは自分なのだろうか、と。

しかし後になって、ようやく真実を知ることになる。

両親は最初、奈々を産んだ後に男の子を望んでいた。

だが生まれてきたのは、また女の子だった。

そのうえ、奈々は「妹ができたら愛されなくなる」と恐れ、両親の前で何度も妹を悪く言った。

そうして年月が経つうちに、元々息子を欲しがっていた両親の心は、ますます長女に偏っていったのだ。

ちょうどその時、横生が帰宅した。

床に倒れて泣く奈々を見て、彼は慌てて駆け寄り、抱き上げて車椅子に戻した。

その傍らに立つ、頬を腫らした妻の姿には、目も向けなかった。

奈々は涙に濡れた顔で、横生の胸にもたれかかった。

「横生、足がすごく痛いの……!」

彼は彼女の足の青あざを見て、表情を曇らせた。

「どうしてこんなことに?」

亜由美がすぐに晴子を指さして罵った。

「この子のせいよ!奈々を突き飛ばしたの!」

その言葉に、ようやく横生は晴子を見た。

頬を押さえ、涙を流している彼女の姿を見た瞬間、心の奥に小さな痛みが走った。

結婚して以来、彼女が泣くのを見るのは初めてだった。

思わず手を伸ばし、涙を拭ってやろうとした。

だが、晴子はその手を避けた。

胸の動揺に戸惑いながらも、横生は珍しく晴子をかばった。

「お義母さん、何かの誤解じゃないか?」

宗一郎がすぐに言い返した。

「誤解だと?じゃあ誰が押したっていうんだ?奈々が自分で転ぶはずがないだろう!」

「晴子のせいじゃないわ……私が悪いの。晴子を怒らせちゃったから」

奈々は涙をぽろぽろとこぼし、花びらのように震えていた。

晴子はそんな光景を黙って見つめた。

家族三人の姿を見渡し、最後に横生の方を見て、力を振り絞るように問いかけた。

「あなたも……私が押したと思う?」

横生は言葉に詰まった。

その時、奈々が両手で顔を覆いながら小さく泣いた。

「私、ただこのブレスレットをつけてただけなのに……晴子が、私が彼女の物を盗んだって。

でも違うの。晴子のものは、ほら、ここに落ちてる」

横生は視線を落とし、床に転がったブレスレットを見つめた。

奈々がつけているものと、まったく同じものだった。

その瞬間、彼の脳裏に浮かんだのは――些細なことで彼に食ってかかる晴子の姿。

「またか」

彼は冷たく息を吐いた。

「謝れ!」

横生の目には失望の色が宿っていた。

晴子はしばらく彼を見つめ、そして――笑った。

――やはり。この人は、いつだって自分の味方にはならない。

三年の結婚生活が、一瞬で滑稽なものに思えた。

彼女は何も言わず、床にいたあんちゃんを抱き上げ、人々の間をすり抜けて家を出た。

背後から、奈々の甘ったるい声が聞こえる。

「横生……私の足、ひどくなってない?」

横生は晴子の背中を一度だけ見た。

だがすぐに視線を戻し、奈々の肩に手を置いた。

「大丈夫だ。すぐ包帯を替えよう」

亜由美は慌てて救急箱を探しながら、振り返って叫んだ。

「奈々に何かあったら、許さないからね!」

家を出ると、背後の喧騒は少しずつ遠ざかっていった。

広い通りに冷たい風、晴子が一人で街を歩いていた。

夜の闇と、胸に押し寄せる記憶が重なり、息が苦しい。頬がひりつくほど痛い。けれど心の痛みの方が、ずっと深かった。

横生の「大切にする」「守る」という言葉――全部、嘘だった。

もう彼との関係も、この家も、すべて終わりにしよう。

晴子は暗がりの中、しゃがみ込んだ。その時、小さな温もりが、彼女の頬を舐めた。

あんちゃんだ。

晴子は涙をこぼしながら、その体を抱きしめた。

「あんちゃん……もう、あなたしかいないの」

その夜、彼女は家に戻らず、そのまま荷物を持って病院へ行った。

院長は晴子の落ち込んだ様子を見ると、何も聞かず、彼女に休める部屋を用意してくれた。

真夜中、突然、病院が騒然となった。

交通事故の患者が運び込まれ、緊急手術が必要になったのだ。

だが、夜中で医師が足りず、横生のチームも助手が一人欠けていた。

「神原先生に頼みましょう!もともと執刀医だったじゃないですか!」

誰かの声に、晴子は一瞬ためらった。

昼間のことが頭をよぎり、横生と顔を合わせたくなかった。

だが――命を救うためなら、そんなことは言っていられない。

「私が入ります」

彼女はまっすぐ答えた。

執刀医ではなく助手としてなら問題ない。長く離れていても、手は覚えている。

だが横生は、彼女を見ようともしなかった。

少しの沈黙の後、冷たく言い放つ。

「実習医を呼べ、彼女はだめだ」

そして振り返りもせず、手術室へ向かった。

「彼女はもう長い間手術をしていない。この手術、失敗は許されない」

晴子はその言葉を聞いたまま、立ち尽くした。

胸の奥に冷たい風が吹き抜ける。

――ああ、彼の目には、私はもう「役立たず」なんだ。

かつては彼と肩を並べ、いや、それ以上の技術を誇っていたのに。

横生は、一度も自分の価値を見ようとはしなかった。

その夜、京平市には雪が降り始めた。

街を静かに包み込む雪が、すべての音を飲み込んでいく。

明け方、手術はようやく終わった。

時間はかかったが、結果は成功だった。

病院のあちこちから拍手が起こる。

横生の顔には、疲労と、それでも隠せない誇りの色があった。

――かつて、晴子も同じく、手術台の上で死神の手から命を奪い返す医者だった。

でもその輝きは、もう遠い昔のことだ。

晴子は静かに息を整え、何事もなかったかのように、最後の当直を続けた。

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