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第3話

Author: ハルカ
彼女はふらつきながら進み、警備員の目を盗んで結婚式の控え室へと押し入った。そこで彼女が見たのは、自分の夫がひどく心を痛めた顔で、ウェディングドレスを着た女を抱きしめている姿だった。

弦の声には悲しみが滲んでいた。

「君がウェディングドレスを着た姿を見られただけで、俺は満足だよ」

華恋は彼の胸に顔を埋めた。

「弦、この人生で私はあなたの妻になれなかったけれど、今日このドレスを着たことで、あなたに嫁いだと、そう思わせて」

弦は深く愛しむように彼女の手を握り、一つの指輪を彼女の薬指にはめた。

「俺の心の中では、君だけが俺の唯一の妻だ」

雪乃の胸の奥に、水銀を詰め込まれたような息苦しさが広がった。

その指輪は、彼女も見たことがあった。

弦自らがデザインのラフ画を描き、何度も修正を重ね、クローゼットの奥深くに隠し、宝物のように扱っていたものだ。

彼女は以前、偶然それを見つけ、弦が自分のためにデザインしてくれた結婚指輪だと思い込んでいた。

だがその後の結婚式で、弦が取り出したのはその指輪ではなかった。

その時彼女は、弦が自分にもっと良いものを与えるためにそうしたのだと信じて疑わなかった。

まさかそれが、彼が大切に隠し持ち、別の女に贈るための真心だったとは思いもよらなかった。

二人は感情を抑えきれず、抱き合ってキスをした。

雪乃が口を開いて罵倒しようとした瞬間、背後から誰かに口を塞がれ、隣の部屋へと引きずり込まれた。

司は眉をひそめ、彼女の血まみれの両手と姿を見て、また騒ぎを起こしに来たのだと勘違いし、即座に怒鳴りつけた。「普段から騒ぎを起こすのは大目に見ているが、今日は俺と華恋の結婚式だぞ。今日までこんな真似をするつもりか!」

かつて心から愛した人が目の前にいるというのに、彼女の心にはもはや何の波風も立たなかった。

雪乃の口元に皮肉な冷笑が浮かんだ。

「あなたの花嫁は今、隣の部屋で他人の夫とキスをしているわ。私が騒ぐかどうかなどと、気にする余裕があるの?」

しかし予想に反して、司はすでにすべてを知っているようだった。

「華恋は昔、弦の家庭教師をしていたんだ。彼らには過去があったが、それはもう終わったことだ。どうしてお前は過去にいつまでもこだわるんだ?」

雪乃は信じられない思いで隣の部屋を指差した。

「つまり、みんな知っていて、私一人だけを騙していたのね?私がピエロみたいに、自分は幸せだと勘違いして踊らされているのを見て、さぞ面白かったでしょう?」

司はただ苛立たしげに言った。「誰にだって過去と決別する権利はある。皆お前のように、男を見ればすり寄っていくような尻軽女ばかりだと思うな」

目の前の男が、一瞬だけ見知らぬ他人のように思えた。

彼女は鼻で笑った。

「あなた、そんなふしだらな女を許せるのね。でも私は許さないわ。私をこんな目に遭わせた人間を、絶対にただじゃおかないわ。

皆の前であいつらの不義密通を暴いてやる!あの二人の本性をみんなに見せてやるわ!」

彼女はそう言い捨て、ホールへ向かって歩き出そうとした。

司の瞳に凶暴な光が走り、血まみれの彼女を気にすることなく、彼女を壁に強く押し付けた。

「華恋のことをそんな風に言うな!淫乱だと言うなら、お前以上の女がいるか?前の日に俺に告白しておきながら、次の日には別の男とベッドを共にするような女が!」

彼女の胸に鋭い痛みが走った。しゃがれた声で叫んだ。「あれは弦がわざとやったのよ!私が酔い潰れた隙にきわどい写真を撮って、あなたを誤解させるために送ったの!」

目の前の男の顔に一瞬の戸惑いが浮かんだが、すぐに強烈な嫌悪の表情に取って代わられた。

「仮にそうだとしても、バーみたいなふしだらな場所へ酒を飲みに行ったのはお前だろう?男を誘惑するために行ったんじゃないのか?一体何人の男と寝たのか、自分でも覚えているのか?

俺がもう少しでお前の告白を……」

彼の言葉はそこで途切れたが、瞳の奥には一瞬、苦痛がよぎった。

自分はかつて、あの太陽のように明るい少女を愛していたからこそ、彼女の裏切りを知った時、誰よりも深く憎んだのだ。

あと少し、あと少しで彼女の告白を受け入れ、二人は結ばれるはずだった。

しかし後悔はしていなかった。今の自分には華恋がいる。雪乃のような女が、優しくて善良な華恋に敵うはずがない。

雪乃は声を上げて笑った。

「あなたの奥様の華恋はどうなの?彼女だってバーでホステスをしていたじゃないの」

言い終わるや否や、強烈な平手打ちが彼女の頬を襲った。

「彼女をそんな風に言うな!華恋は学費を稼ぐために働いていたんだ。お前のような遊び呆けている金持ちの娘とは違う!」

司が彼女の大学院への推薦を白紙に戻した時も、こんな風に軽蔑に満ちた表情をしていたのを思い出した。

「雪乃、お前は金も権力もあって、何をしようが誰も咎めないかもしれない。でも華恋は違う。彼女は真面目で努力家だ。俺のゼミに入るのにふさわしいのは彼女の方だ」

彼女があんなにも多くの夜を徹して勉強したのは、ただ彼のゼミに入るためだった。

金と権力があるという一言で、司は彼女の大学院進学への並々ならぬ努力をいとも簡単に否定したのだ。

雪乃は躊躇なく目の前の男に平手打ちを返した。

「この一発は、昔の節穴だった私自身の代わりに打ったのよ。あなたみたいなクズを好きになるなんてね!」
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