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第12話

Author: みずのは
陸は、結局私に追いつけなかった。

ほんの数秒差だった。私が車に乗り込んだ直後、彼は式場の外へ駆け出してきた。

しばらくのあいだ、彼は私の乗った車を追いかけて走っていた。

けれど力尽きて足を止めると、今度はひたすら私に電話をかけ続けた。

私は出なかった。

私たちはもう離婚届を出していた。

今日は式を終えてから、あらためて婚姻届を出しに行こうね、いいことは重なったほうがいいから――

そう言った私の言葉を、彼は愚かにも信じた。

騙せたことに喜びはなかった。ただ、果てしない虚しさだけが残った。

手術台の上で、ただ死にたいと願っていたあのとき、私はカウンセラーの先生がかけてくれた言葉を聞いていた。

カウンセリングを受けていた頃、先生は私が陸に依存しすぎていることに気づいて、遠回しに何度も注意してくれていた。

でも、あのときの私は信じなかった。

それが、手術台の上でその言葉を聞いたときには、受け取り方がまるで違っていた。

あの瞬間、私を生きたいと思わせたのは、生きることそのものへの執着じゃない。

生き延びてこそ、私を裏切った人間たちにやり返せる――

その思いだった。

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    陸は、結局私に追いつけなかった。ほんの数秒差だった。私が車に乗り込んだ直後、彼は式場の外へ駆け出してきた。しばらくのあいだ、彼は私の乗った車を追いかけて走っていた。けれど力尽きて足を止めると、今度はひたすら私に電話をかけ続けた。私は出なかった。私たちはもう離婚届を出していた。今日は式を終えてから、あらためて婚姻届を出しに行こうね、いいことは重なったほうがいいから――そう言った私の言葉を、彼は愚かにも信じた。騙せたことに喜びはなかった。ただ、果てしない虚しさだけが残った。手術台の上で、ただ死にたいと願っていたあのとき、私はカウンセラーの先生がかけてくれた言葉を聞いていた。カウンセリングを受けていた頃、先生は私が陸に依存しすぎていることに気づいて、遠回しに何度も注意してくれていた。でも、あのときの私は信じなかった。それが、手術台の上でその言葉を聞いたときには、受け取り方がまるで違っていた。あの瞬間、私を生きたいと思わせたのは、生きることそのものへの執着じゃない。生き延びてこそ、私を裏切った人間たちにやり返せる――その思いだった。そんな執念で、私は生き残った。目を開けて、目の前に陸の張りつめた顔を見た瞬間、私はどうやって彼に復讐すればいいのか、すぐにわかった。彼は、自分より先に私が別の男のものだったことをずっと引きずっている。だったら私は、一度だけ自分が手に入ったと思わせておいて、最後にそれが思い違いだったと突きつけてやる。そして最後には、何ひとつ残らないようにしてやればいい。私の復讐は、驚くほど順調に進んだ。何かを思い出したふりをして、そのたびに陸に、かつて私とはしたことのないことをさせた。そのたびに隠しきれない痛みが彼の顔に滲んで、私はほんの一瞬だけ胸がすく思いがした。けれど、それもたった一秒だった。次の瞬間には、心の中がからっぽになっていた。まるで誰かに胸を裂かれて、心臓を抜き取られ、その代わりに藁を詰め込まれたみたいに。どうしてそうなったのか、自分でもわからなかった。その答えが少し見えたのは、陸が胃腸炎で病院のベッドに横たわり、意識のないまま、それでも私の名前を呼んでいたときだった。その瞬間、これまでの苦しみも痛みも、憎しみも愛しさも、全部どうでもよく思えた

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