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第1219話

Author: 楽恩
彼の腿の上に置かれた手は、じわじわと拳を作っていった。

清孝は彼女の表情の変化を観察し、黙って小さく笑った。

レベッカは一部始終を見届けたあと、外国語で清孝に尋ねた。

「ねえ、お奥さん、全然あなたに興味なさそうだけど?

キヨ、もしかして私を断るために、この人を連れてきて演技させてるんじゃないの?」

清孝は淡々と返した。

「演技なら、もう少し協力的な人を選ぶだろう。来る前に俺が機嫌を損ねさせたんだ。冷たいのはそのせい。連れてきたのも、謝るためで、機嫌を直してもらうためだ」

紀香はふたりの会話がわからなかったし、知る気もなかった。彼女はオークションのカタログに目を落としていた。

その中の梨の花をモチーフにしたジュエリーセットに心を奪われた。

理由はわからない。けれど、どこか運命のようなものを感じたのだった。

もしそこまで高くなければ、自分で落札したい。

持ち金すべてを使えば、なんとかなるかもしれない。

清孝の視線が彼女に向けられる。

彼女が親指でその梨花ジュエリーの写真をなぞっているのを見て、彼の黒い瞳がわずかに揺れた。

だが、何も言わなかった。

……

紀香はその梨花ジュエリーのことで頭がいっぱいで、前の品には一切札を入れなかった。

その間、清孝に手を掴まれて、無理やり札を入れさせられたのが一点。

ペアの指輪だった。

かつて戦乱の時代、自由な恋愛が許されなかった時代に、愛を貫き、結婚まで辿り着いた夫婦が遺したもの。

最期まで添い遂げ、子供は持たず、その愛と祝福を縁ある人に託してこの世を去った。

紀香と清孝も、確かに結婚していた。だが、そこに愛はなく、式も指輪もなかった。

だからといって、今になって感動することもない。

心が震えることも、嬉しくなることもない。

ただ一つ気になったのは――この指輪、二億円で落札したことは妥当なのか?

確かにロマンティックで、永遠の愛を象徴するような品だ。

だが、それにしても高すぎる。

まさに、あの言葉の通りだ。

——愛とは、価格のない高級品。

「俺たちの金、ちょっとは大事にしないとな」

清孝がふいに耳元でささやいた。

「でも長く気に病まないで。君が落ち込むと、俺まで辛くなる」

「……」

紀香は黙ったままだった。

この男の図太さは、もはや天下無双級だった。

何を言ったって、
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