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第1322話

Penulis: 楽恩
「何もしない」

清孝は彼女の問いに答え、握った手に少し力を込めた。

「ちょっと手伝ってほしいことがある」

「……」

紀香も二十歳を過ぎた大人だった。

男女の間のことくらい、分からないはずがなかった。

今の彼の声はかすれて危うく、そんな彼が頼む「手伝い」といえば、良からぬことに決まっていた。

「自分でやって。私には無理よ」

「うん、俺が動く」

「……」

動いているのは彼自身だった。

だが、彼は彼女の手を握り、その手を一緒に動かしていた!

紀香は慌てて引こうとした。

「清孝、私、本気で怒るわよ」

清孝は肩に顔を預け、低く笑った。

「いいよ。手伝ってくれたら、好きなだけ怒っていい。殴っても構わない。

でも今はな、香りん……もう止まれないんだ」

「……」

キッチンの空気は次第に熱を帯びていった。

床暖房のせいもあって、喉は渇き、口の中が乾く。

さっきシャワーを浴びたのも熱を冷ますためだったのに、今はもうじんわりと汗ばんでいた。

全身が熱く火照っていく。

紀香は逃げ場もなく、振りほどくこともできなかった。

結局、彼を手助けするしかなく、終わった頃には手首が折れそうなほどだった。

清孝は満足して、すっかり元気を取り戻した。

彼女の手を洗ってやり、ソファへ連れて行き、手首を優しく揉んだ。

怒り心頭の顔をした彼女を見て、宥めるように言った。

「ありがとう、香りん。お疲れさま。今ならどう殴っても構わない。

跪いてもいいぞ。

バットもあったよな。何発か殴ってみるか?」

そのバットは実咲のものだった。どういうわけか置きっぱなしになっている。

彼女が買ったときは、自分の身を守るためだと言っていた。

このマンションの警備はしっかりしているのに、それでも安心できなかったのだろう。

もしかして、自分に残していったのか?

そう考えたとき、紀香の意識は別のことに逸れた。

「ねえ、実咲がどこに行ったか知ってる?」

清孝は頷いた。

「知ってる」

紀香がさらに追及しようとしたとき、玄関の電子ロックの音が響いた。

実咲が帰ってきたのだと思った。

この家の暗証番号を知っているのは、彼女と実咲だけだったからだ。

服を着ていない清孝を見て、彼女は慌てて寝室へ押し戻した。

「たぶん実咲ちゃんが帰ってきたのよ!」

——そんなはずはな
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