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第345話

Author: ラクオン
この階はもともとVIP専用フロアだ。

だからこそ、宏の姿が現れた瞬間、周囲の空気は一変した。

ただひとり、鷹だけが敵意を隠さなかった。

服部家当主の顔から怒気がすっと消え、代わりに商人特有の静かな計算高さが浮かぶ。

「江川社長、あなたの奥さんというのは……清水さん、で?」

そう言って、ようやく私に視線を移す。

「あの女」だった存在が、やっと名前を持った瞬間だった。

宏の声は氷のように冷たく、問い返すように言った。

「そうだけど?」

「江川社長、奥さんと元奥さんの違いは、ちゃんと区別した方がいい」

鷹は静かに釘を刺す。だがその声音には、はっきりとした拒絶があった。

「ご心配なく。再婚の時には、きちんと招待状を送らせてもらうよ」

宏はそう言うと、私の腕を鷹から引き離そうとした。

けれど鷹は、放さなかった。

火花が散る。

――さっきまでの、血を抜かれるかもしれない恐怖で麻痺していた身体。

宏の登場でようやく気持ちは落ち着いたものの、かゆみは再び襲ってきて、今にも気が狂いそうだった。

私は、鷹の手から腕を引き抜くようにして、言った。

「……先に、奈子さんのこ
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