懺悔室〜汝の罪を告げよ〜

懺悔室〜汝の罪を告げよ〜

last updateLast Updated : 2026-09-04
By:  東雲桃矢Updated just now
Language: Japanese
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富裕層が住む街、リシェスには、様々な家庭がある。 5人の少女達は、教育ママからの虐待に怯える日々を過ごしていた。 そんな少女達に手を差し伸べたのは、リシェスで唯一の独身女性、ジャスミン。 彼女はおもちゃすら買い与えられないが達のために、リシェスから少し離れた場所にある別荘を貸し、フランス人形やお菓子を置いた。 少女達はフランス人形にエリーと名付けて可愛がっていたが、別荘にいるところを教育ママ達に見つかってしまい……

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Chapter 1

アンダーソン家の場合

 豪邸が並ぶ街、リシェス。ここには多くの富裕層が暮らしている。お金さえあれば幸せだと思う人が一定数いるが、どうやらそうではないらしい。

 アンダーソン家の音楽室に、美しいピアノの音色が流れる。音色は少女の悲鳴と鞭の音で途切れてしまった。

「グレイス! 何度言ったら分かるの!? そこ、少し遅れてるわ。指の運びが絶望的に遅い!」

「ごめんなさい、ママ……」

 グレイスと呼ばれた幼い少女は、鞭で叩かれた手を擦りながら、涙目で母のオリヴィアに謝罪する。

 グレイスはまだ7歳だが、元ピアニストのオリヴィアの英才教育で、毎日ピアノの練習をさせられているのだ。ピアノ自体は好きだったが、母の厳しすぎる罰が恐ろしく、今ではピアノの前に座ることすら苦痛でしかない。

「このグズ! しっかりしなさい! 本当にママの子なの?」

「ごめんなさい、ごめんなさい! 頑張ります!」

 グレイスは息を整えると、再びピアノに向かった。美しい音色が再び音楽室に流れる。だが……。

「遅い!」

「ぎゃああっ!!!」

 あろうことか、オリヴィアはピアノの蓋を閉め、グレイスの手を挟んでしまった。

「痛い! 痛い痛い! ママ、助けて!」

「うるさい!」

 オリヴィアはグレイスの頬を叩くと、ピアノの蓋を開けた。小さな手は赤く腫れ上がって痛々しい。

「ママ、ちょっと出かけてきますからね。練習サボったら、ただじゃおかないんだから」

「はい、ママ……」

 オリヴィアは音楽室から出ると、自室に戻って化粧直しをし、高級ブランドのコートを羽織り、家を出る。

 グレイスは耳を澄ませ、母の車が遠くに行ったのを確認すると、キッチンに行って水で手を冷やす。本当は氷で冷やしたいが、冷凍庫は高いところにあるため、今のグレイスでは届かない。

 痛みが引いてくると、グレイスは音楽室に戻ってピアノの練習を再開する。美しい音色は、最後まで完璧に奏でられた。

「ひとりの時は、ちゃんとできるのに……」

 グレイスは自分の小さな手を見てため息をつく。母の前だと恐怖心でいっぱいになり、気をつけなきゃと思っている場所で、毎回ミスをしてしまう。

「頑張らないと……」

 先ほどオリヴィアに指摘された箇所を、何度も何度も練習する。どんなに完璧に演奏しても、不安が拭えない。

「これでいいんだっけ? わかんない、頑張らないと」

 グレイスは怯えながら、ひたすらピアノの練習をする。小規模ではあるが、コンクールが近い。だからグレイスは、死に物狂いで練習をする。遊びたい気持ちや泣きたい気持ちをぐっとこらえ、ピアノに向き合い続ける。

 オリヴィアが求めるのは、金賞だけではなかった。圧倒的な差をつけての金賞を望んでいた。グレイスはまだ4年しかピアノに触れていない。それなのに、自分より3つ4つ上の相手にも圧勝しろというのだから、頭が痛い。

 もし金賞を取っても、僅差であったり、ちょっとしたミスがあると、鞭で何回も叩かれた挙げ句、ごはんを食べさせてもらえない。

「頑張らなきゃ……」

 グレイスは呪文のように繰り返しながら、ピアノを弾き続けた……。

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アンダーソン家の場合
 豪邸が並ぶ街、リシェス。ここには多くの富裕層が暮らしている。お金さえあれば幸せだと思う人が一定数いるが、どうやらそうではないらしい。 アンダーソン家の音楽室に、美しいピアノの音色が流れる。音色は少女の悲鳴と鞭の音で途切れてしまった。「グレイス! 何度言ったら分かるの!? そこ、少し遅れてるわ。指の運びが絶望的に遅い!」「ごめんなさい、ママ……」 グレイスと呼ばれた幼い少女は、鞭で叩かれた手を擦りながら、涙目で母のオリヴィアに謝罪する。 グレイスはまだ7歳だが、元ピアニストのオリヴィアの英才教育で、毎日ピアノの練習をさせられているのだ。ピアノ自体は好きだったが、母の厳しすぎる罰が恐ろしく、今ではピアノの前に座ることすら苦痛でしかない。「このグズ! しっかりしなさい! 本当にママの子なの?」「ごめんなさい、ごめんなさい! 頑張ります!」 グレイスは息を整えると、再びピアノに向かった。美しい音色が再び音楽室に流れる。だが……。「遅い!」「ぎゃああっ!!!」 あろうことか、オリヴィアはピアノの蓋を閉め、グレイスの手を挟んでしまった。「痛い! 痛い痛い! ママ、助けて!」「うるさい!」 オリヴィアはグレイスの頬を叩くと、ピアノの蓋を開けた。小さな手は赤く腫れ上がって痛々しい。「ママ、ちょっと出かけてきますからね。練習サボったら、ただじゃおかないんだから」「はい、ママ……」 オリヴィアは音楽室から出ると、自室に戻って化粧直しをし、高級ブランドのコートを羽織り、家を出る。 グレイスは耳を澄ませ、母の車が遠くに行ったのを確認すると、キッチンに行って水で手を冷やす。本当は氷で冷やしたいが、冷凍庫は高いところにあるため、今のグレイスでは届かない。 痛みが引いてくると、グレイスは音楽室に戻ってピアノの練習を再開する。美しい音色は、最後まで完璧に奏でられた。「ひとりの時は、ちゃんとできるのに……」 グレイスは自分の小さな手を見てため息をつく。母の前だと恐怖心でいっぱいになり、気をつけなきゃと思っている場所で、毎回ミスをしてしまう。「頑張らないと……」 先ほどオリヴィアに指摘された箇所を、何度も何度も練習する。どんなに完璧に演奏しても、不安が拭えない。「これでいいんだっけ? わかんない、頑張らないと」 グレイスは怯えながら、ひたすらピアノ
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コリンズ家の場合
 まだ7歳の少女、ソフィが帰宅すると、母のイザベラは父のベルトを片手に待ち構えていた。「ただいま、ママ。今日学校でね」 バシッという音が、ソフィの言葉を遮った。イザベラがベルトを鞭のようにしならせ、床を叩いたのだ。「学校でのことなんて、どうでもいいの。何回も同じこと言わせないでくれる?」「ごめんなさい、ママ……」「荷物を置いてきなさい」「はい……」 ソフィは荷物を置きに自室に行く。ドアを開けると、ベッド、クローゼット、本棚、テーブルのみの殺風景な部屋があった。7歳の少女の部屋だというのに、可愛らしい小物やおもちゃはひとつもない。家具もすべて落ち着いたデザインで、子供の、それも少女の部屋だとは、誰も思わないだろう。 本棚に並んでいる本は、参考書が申し訳程度と、残りはすべてチェスに関する本ばかりだ。 ソフィは荷物を部屋に置くと、イザベラが待つ書斎に入った。 書斎の中央に置かれたテーブルには、チェス盤が置かれている。本棚には、チェスに関する本と、心理学、ゲーム理論などの本がずらりと並んでいる。「さぁ、座って」「はい」 ソフィはイザベラの向かいに座る。この時間がソフィは大嫌いだ。チェスに興味などないのに、父とイザベラがチェスのプロだからって自分までやらされるのは、苦痛でしかない。本当は友達と遊びたい。テレビを見たり、お菓子を食べたりしたい。 そんなことを言ったら、何をされるか分かったものではない。だからソフィは、今日も本音を押し殺してチェスの駒を握る。「先行は譲るわ」「はい」 ソフィからゲームを始める。駒をひとつひとつ慎重に動かし続け、ソフィが有利になっていたが……。「あの、ママ……」「なぁに、ソフィ」 イザベラは意地悪な笑みを浮かべて、ソフィを見下ろす。「それ、動かし方間違ってる……」 イザベラが先程動かした駒はルーク。ルークは縦と横にしか動かせないのだが、イザベラはルークを斜めに動かしたのだ。「いいのよ、これで」「でも……」 ソフィが粘ると、イザベラはうんざりしたようにため息をつく。ソフィは恐怖で肩を震わせた。「いい? ソフィ。試合を見てるのも、アビーターも人間なの。人間はミスをする。中には自分のミスを認められない人もいるのよ。これはそんな人達に囲まれてしまった時の訓練よ。分かったら続けなさい」「はい、ママ」 ソ
last updateLast Updated : 2026-09-04
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ダグラス家の場合
 リリーは双子の兄であるノアと並んで座りながら、緊張していた。母のジェシカがお手製のテストを裏返しにし、ふたりの前に置く。「1回目のテスト、はじめ!」 ジェシカの合図でテストをめくり、解いていく。問題は学校で習うようなものではなく、法律に関する問題ばかりだ。(うぅ、難しい……) リリーは算数は得意だが、国語は苦手だ。7歳の少女は読み書きに未だに苦戦している。そんなリリーにとって、法律の問題はあまりにも難しすぎる。「そこまで!」 20分経つと、ジェシカが合図をする。リリーとノアはテストをジェシカに差し出し、そのまま待つ。ノアは余裕そうだが、ジェシカは気が気でない。 ジェシカが採点をする音が、狭い部屋に痛いくらいに響く。「ノア、86点。リリー、54点」 ジェシカは点数を告げると、それぞれにテストを返し、小さなホワイトボードを出す。ホワイトボードの中央に線が引かれ、それぞれのスペースにノアとリリーの名前が書かれている。 ジェシカはノアのスペースに赤い磁石をつけると、別のテストを出す。「2回目のテスト、はじめ!」 合図でテストをめくり、問題を解く。今度は医学の問題だ。ノアは隣でスラスラ解いていくが、リリーはそうはいかない。今習っている国語もままならないリリーは、問題を理解するのに時間がかかってしまうのだ。「そこまで!」 再び20分の合図が出ると、ジェシカにテストを差し出し、採点してもらうのを待つ。(もうやだ……。こんなの分かんないもん……) リリーはもう既に泣きそうになっていた。ただでさえ学校の勉強に追いついていないのに、医学や法律、プログラミングなどを教え込まれても理解しきれるわけがない。 理解できない勉強を強要されるだけでも苦痛なのに、いつもノアと比べられてしまう。それが嫌で嫌でたまらなかった。「ノア、78点。リリー、32点」 ジェシカは再びノアのスペースに赤い磁石をつけると、別のテストを差し出してきた。「ママ、もう疲れたよ……」「あっそ。じゃああんたはもうママの子じゃないね」「つ、疲れてない! やる!」「最初からそうしなさい。手間かけさせないで。いい? ダグラス家に産まれたからには、医者か法律関連か、ITエンジニアやプログラマーになるのよ。それ以外に許されるのは政治家くらいかしら? とにかく、誰よりも偉くなりなさい。その
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フォスター家の場合
 7歳の少女、アリスは、学校が終わると友達と会話をすることさえなく、正門に向かった。急いで行くと、既に母であるロージーの車が停まっていた。「学校お疲れ様、アリスちゃん」 ロージーは猫なで声でアリスをいたわり、助手席に乗せる。アリスがシートベルトをしめると、テキストを手渡した。「今日はバイオリンのお稽古をして、その後にバレエでしょ。一度おうちに帰ってシャワーを浴びたら、今度は塾ね。移動中はそれを読んで予習してて」「ママ……、あのね……」「なぁに、アリスちゃん」 ロージーの声は猫なで声のままだが、圧があった。いつもはそれにひるんで何も言えなくなるが、今日ははっきり言おうと覚悟を決めていた。「ママ、私、休みたいよ……」 アリスは目に涙をいっぱい溜めて、ロージーを見上げた。その目の下には、7歳とは思えないほど濃いクマがある。 アリスはロージーに予定を詰め込まれ過ぎて、まともに寝れていない。 朝は脳の活性化のために音読をさせられる。それから学校に行くのだが、ロージーが担任に「休み時間に寝たりしてたら起こしてください」と言ってるため、学校で休むことすらできない。休み時間はロージーが作った問題集をやらないといけないため、トイレに逃げ込んで休むことも不可能だ。 学校が終われば塾や習い事が山のようにある。せめて移動中に休めればいいが、移動中はロージーが用意したテキストで勉強をしなくてはならない。 11時に帰宅できればいい方で、12時過ぎに帰宅する日などザラだ。睡眠時間は5時間あるかどうかとかなり短く、習い事がアリスの成長と回復の邪魔をする。「アリスちゃん、聞かなかったことにしてあげるわね」「でもママ……。私、ちゃんと寝たいよ……」 乾いた音が車内に響いた。「え……」 熱くなった頬を押さえ、呆然とする。頬の熱が痛みに変わり、母に叩かれたと気づく。「う、うぅ……!」「泣かないで、アリスちゃん。ママが悪いみたいじゃないの。今のはアリスちゃんが悪いわ。だってママは、アリスちゃんのためにいろんな習い事をさせてるんだもの。それに、夜はちゃんと寝かせてるでしょ? ねぇ、アリスちゃん。ママに言うことあるんじゃない?」「ご、ごめんなさい、ママ……」 恐怖のあまり謝罪をすると、ロージーは満足げに笑った。「分かればいいのよ、アリスちゃん。アリスちゃんはいい子だ
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ハワード家の場合
 休み時間。子供達は思い思いに過ごす。室内で絵を描いたり、おしゃべりや読書をする子もいれば、外で走り回る子もいる。 誰もが楽しそうにしている中、ハワード・ルーシーだけは、つまらなそうな顔をしていた。 彼女はまだ7歳と遊びたい盛りなのに、母のデイジーに友達を作ることも、喋ることも禁止されている。 理由は、バカが移るから。 ルーシーが休み時間に許されているのは、トイレ休憩と勉強だけ。トイレ休憩は、午前に2回、午後に1回しか許されていない。(私も遊びたいのに……) 楽しそうにおしゃべりする子達に目を向けると、ひとりの少女と目が合う。ルーシーは咄嗟に目を逸らした。「ねぇ、ルーシー」 おしゃべりしていた子のひとりが、ルーシーに声を掛ける。ルーシーは絶望した。「よかったら、ルーシーも一緒におしゃべりしない?」「ご、ごめん。勉強しないといけないから……」「えー、勉強ばっかじゃ疲れちゃうよ。おしゃべりしよ?」「ごめん、これやっておかないといけないから」「へぇ、そっか。分かった」 少女は仲間の元に戻っていく。「せっかく話しかけてあげたのにね」「ルーシーってつまんない子だよね」「もう話しかけるのやめよ」 少女達はルーシーに聞こえるように、わざと大きな声で言う。(本当は、私だって……) 悔しさのあまり、鉛筆を持つ手に力が入る。このままでは、勉強どころではない。(場所、変えよう……) ルーシーは勉強道具をまとめると、図書室に入った。ここなら教室よりも静かだし、話しかけてくる人もいない。(ママ、怒ってないといいけど……) ルーシーはペンケースについたうさぎのマスコットを見て、不安になる。マスコットの中には盗聴器が入っており、母のデイジーが常に聞き耳を立てているのだ。 デイジーは盗聴器で娘が他の生徒と会話をしていないか確かめている。会話したとバレたら、どんな内容でも関係なく、お仕置きされてしまう。(ママが聞いてませんように) ルーシーは心の中で祈った。おしゃべり好きのデイジーは、友人とお茶をする。お茶をしている時は、盗聴器の音声を聴いてない。そのことはルーシーも知っていた。 今日は天気がいい。お気に入りのカフェテラスにでも行って、お茶会をしているはずだ。ルーシーは自分にそう言い聞かせ、なんとか安心しようとした。 学校が終わって恐る恐る
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