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第154話

作者: 結奈々
修司って人、本当に読めない。

仁也に別れを告げてから、柚香は陽翔を連れて先に帰った。修司に言われたことも、ひとまず心の奥に押し込めておく。

二人の後ろ姿を見送りながら、仁也は隣にいた修司に尋ねた。「なんで急にあんなこと言ったんだ?」

「遥真、この二日ちょっと調子悪そうだからな」修司は眼鏡の奥で意味深な視線を浮かべる。「兄として、少しは手助けしてやらないと」

仁也の背筋にぞくっと寒気が走った。その「手助け」は、どう考えても普通の意味じゃない。

「柚香が、君の思い通りに動くとは限らないぞ」関わりは少ないが、柚香の性格はある程度わかっている。「今の遥真との関係なら、彼女は絶対に聞かない」

「聞く必要はない」修司が言った。

「は?」

「ただ、潜在意識にきっかけを植え付ければいい」修司の目は、誰にも読めない。「タイミングが来れば、自然と結果は出る」

「遥真に仕返しされるの、怖くないのか?」仁也はこのやり方が危ういと感じていた。これまでどんなに争っても、無関係な人間を巻き込むことはなかった。

今回、柚香を引き込むなんて……

どう考えても、やりすぎだ。

修司は驚くほど落ち着い
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    「でも……」コンコン――オフィスのドアがノックされた。LISシステムを担当している琴音が顔をのぞかせた。プロダクトマネージャーもいることに気づくと、軽く挨拶してから柚香に目を向けた。「社長、ちょっとお話があるんですが」「じゃあ、私はこれで」マネージャーはすぐに席を立った。これだけ大勢の社員が辞めるとなれば、対応しなければならないことが山ほどある。彼が出ていくと、柚香は琴音に座るよう促し、目の前に水を置いた。少し冗談めかして尋ねる。「まさか、あなたまで辞めるつもりじゃないよね?」「ち、違います!」琴音は慌てて否定した。柚香は少しほっとした。ところが、琴音は続けた。「ただ、今日お話ししたいことは、退職の件とも少し関係があるんです」柚香は思わず彼女の顔を見た。ほっとしたのも束の間、また不安がこみ上げてくる。ほかの社員なら、条件を上げて募集をかければ、いずれ代わりの人材を確保できる。多少時間はかかるだろうが、何とかなるはずだ。けれど、各システムを任せているチームリーダーまで辞めてしまったら、開発の進み具合は一気に落ち込む。そうなれば、プロジェクトを予定どおり納品できるかどうかさえ危うくなる。それに、琴音は将来有望な人材だ。柚香としても、これからじっくり育てていきたいと思っていた。「みんながどうして辞めようとしているのか、だいたいわかりました」琴音は少し考えた末、知っていることをすべて話した。「昨日、仕事が終わって家に帰ったあと、電話がかかってきたんです。相手はかなりいい条件を提示して、自分の会社に来ないかって。それだけじゃなくて、その会社の公式メールアドレスから採用通知まで送ってきました」柚香はふと動きを止めた。昨夜、涼介から聞かれたことが頭をよぎる。「これがそのメールです。見てください」琴音がスマホを差し出した。柚香がメールを開くと、確かに上場企業の公式アドレスから送られてきたものだった。会社名をじっと見つめているうちに、ようやく思い当たった。涼介が経営する会社の一つだ。「陽斗や、うちのチームのほかのメンバーにも聞いてみたんです。そしたら、みんな昨夜、電話で誘われたうえに、採用通知まで届いていたそうです」琴音はゆっくりと話した。「みんなが辞めようとしているのは、おそらく

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