Home / 青春 / (改訂版)夜勤族の妄想物語 / 3. 「異世界ほのぼの日記」84

Share

3. 「異世界ほのぼの日記」84

Author: 佐行 院
last update Last Updated: 2025-03-23 10:48:48

-84 大イベントと大事件の後-

 確定放送が終わった瞬間光は飛び上がり持っていたビールの殆どをこぼしてしまったが全くもって気にしていなかった、確定オッズを確認していなかったが今までに無い位の快感を得ている様だ。こぼしたビールで衣服がぐっしょぐしょになってしまったがそんなの全く関係ない、早く払い戻しに行きたい気持ちで一杯で仕方なかった。

 そんな中、会場で払戻金額等についての放送がされる。ただ魔力オーロラビジョンがずっと真っ暗なままだ。

カバーサ「えー・・・、映像が出てきて・・・、ませんね。なので私の方から改めて着順確定と払い戻し金額を・・・、あ。出せますか?では皆さん、ご一緒に見て行きましょう。

 改めまして今年のレースですが、1着⑨番、2着⑮番、そして3着⑥番となりました。2連単⑨-⑮の組み合わせ58790円、また3連単⑨-⑮-⑥の組み合わせ892万4360円となっております。尚、毎年の事ですがレース開始までにこちらの車券をご購入された方は払い戻し金額が倍となりますのでよろしくお願い致します。

 えー、解説兼主催の・・・、今年はバルファイ国王様ですかね?今年のレースはいかがでしたでしょうか?」

パルライ「・・・。」

 画面に映ったパルライは事件解決の疲れからかおしゃべりなカバーサの横で静かに眠っている。

カバーサ「あのー、起きてますか?」

パルライ「・・・。」

カバーサ「スタッフさんすみませーん、強めのスタンガ・・・。」

パルライ「起きてます、起きてますから!!」

慌てて起きたパルライ、電撃が苦手なのか、それともカバーサが苦手なのか慌てて起きている。

カバーサ「では気を取り直しまして、今年のレースいかがでしたでしょうか。」

パルライ「そうですね、色んな方々の人情味が出ていた一面に溢れたものだったと思いますね。やはりドライバーさん達の生の御言葉を聞けたのが大きかったかと、ただスタート時のトラップはダンラルタ王国のデカルト国王のアイデアで行った事なのですが検討しなおさなければならない様ですね。しかし、1人でずっと1着を守り逃げ切った⑨番車のドライバーさんには賞賛の拍手をさせて頂きましょう。」

 すると会場中から賞賛の拍手の嵐が起こった、そこでカバーサが気を利かせ⑨番車の監督に連絡を入れある提案をした。

カバーサ「⑨番車の監督さん、聞こえますか?宜しければドライバー
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Related chapters

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」85

    -85 大金の使い道-光は林田警部と今夜の打ち合わせを進めて行った。林田(電話)「どうしましょう、私が何処かお店を予約しておきましょうか。」光「いや、食材や料理を持ち寄りどこかで集まりませんか?一先ずメイン食材は私にお任せ下さい。」林田(電話)「分かりました、では私の家の裏庭に集まりますか。」光「あの・・・、今から食材を注文しますので「あの2人」に連絡をお願い出来ますか?」林田(電話)「ああ・・・、「あの2人」ですね。お任せ下さい。」 光には幼少の頃から夢があった、それには大金が必要だった。レースの払い戻しにより自他共に認める大金持ちになったのでその夢を叶えてやろうとした、元々この異世界に来た時に神様に大金を渡されていたが隠していたがこれで堂々とこの大きな買い物が出来る。 ただ自分の愛車は今回使用するのに2台とも厳しかった上にレース中にビールをがぶ飲みしていたのでガイにお願いして軽トラを出して貰うにした。勿論お礼としてこの後の呑み会に招待している。(※飲酒運転、ダメ、絶対!!)一応、この為に『作成』した『強化』でこっそり車をカスタマイズしてはあるのだが・・・。光「乗るかな・・・。」ガイ「そんなに大きい買い物をするのかい?」光「そうですね・・・、値段的にも大きさ的にも・・・。」 少し不安になりながらとある場所へと向かった。 街から出て20分程、目的地へと着くとガイの顔が蒼ざめた。ガイ「光ちゃん、冗談だろ・・・?あれ・・・、買うのか?」光「買いますよ、子供の頃からの夢ですから。ああ・・・、興奮してきました。」ガイ「それにしても乗る・・・、かな・・・。」光「大丈夫ですって、私にお任せ下さい。」 店に入ると店主が笑顔で2人を出迎える、店の名前が刺繍された茶色いエプロンには所々シミが付いている。何故かプニに似て少しチャラい。店主「いらっしゃいませ、何に致しやしょう。」光「あの、予約していた吉村ですけど。」店主「これは失礼、吉村様ですね。お待ちしておりました。」 店主は光の名を聞くと何故か襟を正し2人にキャップを渡した。店主「こちらを被ったら奥へどうぞ。ただ吉村さん・・・、本気ですか?」光「勿論、夢が叶う瞬間です。駄目ですか?」店主「いえいえ、私はとても嬉しいのですが何せ初めてなものでして。」光「私もです、ドキドキして来ま

    Last Updated : 2025-03-23
  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」86

    -86 超新鮮で大胆なBBQ- ガイの軽トラで1頭買いした黒毛和牛を林田家の裏庭へと運ぶと、今か今かと待つ人々が歓声を上げていた。その中には光が招待した結愛社長もいる、現場には大きなまな板と綺麗な包丁などが並べられ解体の準備がされていた。 丁度その頃、焼き肉屋の御厨板長と板前をしているウェアタイガーのヤンチが到着した。御厨「今夜はご招待頂きありがとうございます、ただ私達も召し上がって宜しいのでしょうか。」光「勿論です、お2人も楽しんで行って下さいね。」ヤンチ「さてと・・・、早速解体していきますか。」女性達「私達も是非手伝わせて貰おうかね。」 声の方向に振り向くとエプロン姿をしたネスタ林田、そしてまさかの貝塚結愛がいた。ヤンチ「お2人さん・・・、本気ですか?」ネスタ「あら、私はドワーフだよ。舐めて貰っては困るね。」 昔からドワーフの一族は身のために色々な技術を何でも習得するという伝統があった、牛肉の解体技術もその1つだ。ヤンチ「でも何で社長さんまで?」結愛「実は私も見分を広げる為にドワーフの方々から勉強させて頂いているんです、牛肉の解体もその1つです。」ネスタ「では早速やりますかね。」 鮮やかな手つきで3人が解体を進めていく。骨と骨の間に包丁を入れていき、スルッと肉が剥がされていった。結愛「さてと・・・、最初から贅沢に行きましょうか。鞍下、肩ロースです。丸々1本だからとても大きいでしょう。」光「涎が出てきちゃってるよ、早く食べたいな。」御厨「さぁ、焼肉にしていきましょうか。」 結愛から受け取った大きな塊を御厨が丁寧に肉磨きと整形をして焼肉の形へと切っていく。20kgもの塊が沢山の焼肉へと変身した。御厨「では、焼いていきましょう。ヤンチ、すまんが整形を頼む。」ヤンチ「あいよ、プロが2人もいるから解体は大丈夫そうですもん。」 御厨が炭火の網の上に肉を乗せ焼いていった、そこら中にいい香りが広がる。光「この匂いだけでビールが行けちゃいそう。」御厨「さぁ、焼けましたよ。塩と山葵でお召し上がり下さい。購入されたご本人からどうぞ。」光「塩と山葵がお肉の甘みを引き立てて美味しい!!」 光がビールを一気に煽る、何とも幸せそうだ。作業中の結愛やネスタ、そして焼き肉屋の2人にも振舞う。結愛「たまりませんね、ビールが美味しい。」光「今日

    Last Updated : 2025-03-25
  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」87

    -87 宴は続き- ネスタと結愛による黒毛和牛の解体は続いた、2人も調子が出て来たのかありとあらゆる部位がお目見えしていく。結愛「先程の肩ロースに続きましてリブロースのお出ましですよ、美味しく食べて下さいね。」 結愛が出てきたばかりのリブロースを受け取ったヤンチが目にも止まらぬ早業で焼き肉用のお肉に仕上げる。ヤンチ「実は今日の為に家で育てた果実を使ったタレを持参して来ました、タレ漬け焼肉にしますので板長お願いします。」 御厨板長はヤンチに今日は仕事を忘れさせる様に伝えるべくあるルールを作っていた。御厨「ヤンチ・・・、今日の俺達は休みだ。という事は分かってるよな?」ヤンチ「わ、分かったよ親父。」 ヤンチは御厨の事を仕事の時以外は昔の様に『親父』と呼んでいた。両親の顔を知らない孤独なウェアタイガーだったヤンチは、美味い食事を与えた御厨を本物の父親の様に慕い、自分も美味い料理を作りたいと御厨の下で言葉と料理を勉強し続けている。今となっては立派な板前、いや花板と言っても過言ではない位の実力を持っているが決して驕らず一途に料理を探求し続けていた。 そのヤンチが自ら持参したタレで肉に味付けをする、それには師匠であり育ての父の御厨も興味津々だ。御厨「ヤンチ・・・、俺も食って良いか?」ヤンチ「良いけど・・・、不安だな。」御厨「自分の料理に自信を持て、お前は仕事の時も自分が納得していない味の料理をお客様に出しているのか?」ヤンチ「それは・・・、ないけど・・・。」御厨「本当か?迷いがある言葉だな。」ヤンチ「自分ではまだ発展途上だと思っているからかな、でもこのタレは素材から全部作って味見をしながら作った。」御厨「汗と涙の結晶か。それじゃ何故不安になるんだ、是非俺にも味わわせてくれ。」ヤンチ「いや・・・、あの・・・。」 御厨がタレ漬けにしたリブロースを自ら焼き1口食べる。御厨「ぐっ・・・、かっ・・・。」ヤンチ「だから不安だったんだよ、親父唐辛子苦手だろ。」御厨「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」 辛い物が大好きなヤンチはビールや白飯に合う様に自宅で育てた果実と一緒にハバネロやブート・ジョロキア、そしてトリニダード・スコーピオンと言った様々な唐辛子を加えていた。 御厨は白米とビールの両方を一気に煽り、何

    Last Updated : 2025-03-25
  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」88

    -88 宴の中で- 顔を少し赤らめ酒の力を借り深呼吸した利通は父親である林田警部にも見せた事の無い程の真剣な表情をしていた。 全員察したのか歓談をやめ利通の行動に注目して温かな表情で見守る、利通が進む先に佇むドーラが微笑んでその時を待っていた。 ドーラの前にしゃがみ込み、いつの間にか用意していた指輪を懐から出すともう一度深呼吸をしてキリっとした表情で切り出した。利通「ドーラ・・・、いや、ノーム・クランデルさん。ご存知の通り自分は普段からとても不器用なので非常に短いですが率直に言わせて下さい。貴女が部下として私の下に来て下さった時から決心していました、一生懸けて幸せにします。貴女の隣で朝を迎えたい、僕と結婚して下さい。」 全員の視線がドーラに集中する。ドーラ「一緒に働いたり遊んだりしている内に自分の人生で堂々と「一番楽しい」と思えるのが貴方といる時でした。貴方が思うような女になれるかどうかは分かりません、でも2人で幸せな時間や瞬間を増やしていきたいです。私みたいなエルフで宜しければ、喜んで御受け致します。」 利通がドーラの左手の薬指に指輪をはめると、そこら中から拍手喝采が起こり皆が涙を流しながら歓喜の声を上げた。 すると、赤ワインでほろ酔いになっているメイスが観衆の中から出てきた。メイス「林田利通さん、貴方はこちらの女性を妻として迎え、病める時も健やかなる時も愛し続ける事を誓いますか?」 皆がまさかと思っていたのだが、結婚の儀を始めたのだ。利通「誓います。」メイス「ノーム・マーガレット・クランデルさん、貴女はこちらの男性を夫として迎え、病める時も健やかなる時も愛し続ける事を誓いますか?」ドーラ「誓います。」メイス「Then, you kiss to the bride.」 2人は静かに近づきお互いへの優しさと愛情あふれる表情と共に口づけをした。メイス「アーク・ビショップの名の下に宣言します。今よりこの2人を夫婦とします!」 全員が魔力で紙吹雪やライスシャワーを行い、拍手で新たな夫婦の誕生を喜んだ。 そんな中で新郎本人は一人裏庭の出入口へと走り、出た途端に叫んだ。利通「よっしゃー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 林田は人生の大きな節目を迎えた息子の片腕を掴み高らかに上げさせた、堂々とした表情の利

    Last Updated : 2025-03-25
  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」89

    -89 宴はまだ続くが- 裏庭にLEDによる照明を備えている林田家ではまだまだ解体しながらのBBQが続いている、全員飽きないのか箸が止まらない。御厨「先程結愛さんが取り出したサーロインのステーキが焼きあがりました。」 御厨が網の上で1口サイズに切っていくと全員が舌鼓を打ち、先程結婚したばかりの利通とドーラには厚めに切った1枚肉が渡された。利通「飲み込むのが勿体無い位に・・・。」ドーラ「咀嚼するのが嬉しくなる位に・・・。」2人「美味しすぎる!!」 ただ全員脂がくどくなってき来たのか、気分を変える為にネスタが解体したての牛肉を片手に提案した。ネスタ「赤身の美味しいもも肉にしましょうかね、脂が少ないから食べやすいはずだよ。」結愛「じゃあ私の方から、ランイチ(ラム)です。ランプとイチボに分けてお召し上がり頂きます。」 結愛が牛筋を境にイチボとランプに分けると受け取ったヤンチがイチボは焼き肉に、またランプはステーキにしていった。 今更だが、サラダとかは挟む必要は無いのだろうかという疑問を抱いてしまったガイ含む数名が気を遣い水洗いしたレタスや胡瓜、そしてトマトを使ったサラダを用意した。さっぱりと楽しめる様にドレッシングは青紫蘇の物を選んでいる。 光は口の中が脂で一杯になっていたので一応ビールで流し込んでいたのだが、気分的にさっぱりとした物を挟みたかったのでサラダを1皿受け取ると一気にかきこんだ。 ネスタ「続いては内ヒラ(内もも)だよ、これは少し時間が掛かるけどローストビーフにしようかね。今から作るからその間結愛さんお願いね。」結愛「分かりました、師匠!!」 いつの間にか大企業の社長である結愛に「師匠」と呼ばせているネスタ、この事には林田が少し焦りを見せたが結愛は当たり前の様に呼んでいる。どうやら牛の解体技術はネスタから学んでいる様だ。 そんな中、大量の牛筋が解体や整形の間に出てきたので御厨がこっそり仕掛けていた出汁に醤油等と一緒に入れて特製の牛筋煮込みに仕上げていくと瞬く間に殆どが無くなってしまった。それと同時進行でビールも無くなってきたので光が『瞬間移動』で自分の家の地下にある大型冷蔵庫からありったけの缶ビールを持参し、皆で呑み始めた。 林田は牛筋煮込みを食べながら涙ぐんでいた。林田「この優しい味付けがビールに合うな・・・、米にも合いそ

    Last Updated : 2025-03-25
  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」90

    -90 解体の最中- 牛筋煮込みご飯を振舞う御厨の横でネスタは内ヒラ肉の脂を丁寧に剥がし取り赤身肉をブロック状に切っていくと、手の空いたヤンチが特製のスパイスに漬け込み1面1面表面を数十秒ずつ焼いていった。 表面を焼き上げたブロック肉の粗熱を取り、林田警部拘りの冷蔵庫に入れる。ブロック肉を冷蔵している間に特製のソースを作る。フライパンに残った肉汁や脂をベースに赤ワインを加え煮詰めてアルコールを飛ばした後粗熱を取ってこれも冷蔵庫で冷やしていく。結愛「出来上がりが楽しみですね、赤ワインは・・・、あれ?」 結愛が持って来ていた赤ワインが全て無くなってしまっているので辺りを見回すと、先程の新郎新婦が何故か呑み比べを始めその中で結愛のワインまで呑んでしまっていた。結愛「うっ・・・、1本50万円したのに・・・。」光明「どんだけ高いワインだよ・・・、と言うよりどこにそんな金があったんだよ。」結愛「さてと・・・、少し席を外します・・・。」 嫌な予感がした結愛はそそくさに『瞬間移動』で何処かに逃げてしまった。光明「あっ・・・、最近家で安めの第3のビールばっかり吞んでると思ったらあんなに大きな買い物をしていたんだな。へそくりでもしてたのか?」 噂をしていると結愛が大きめの袋を持って戻って来た、袋の中身は全て赤ワイン。結愛「はぁ・・・、はぁ・・・、予約注文していて正解でしたよ。これなかなか手に入れるのが難しいワインなんです。」光明「そんなワインを何本も・・・、俺の嫁って一体・・・。」 頭を抱える光明を横目に冷蔵庫からネスタが出来立てのローストビーフを運んできて特製のソースと共に振舞った。ワインを全員に配ると皆噛みしめる様にゆっくり呑んでいった、勿論ローストビーフにぴったりだ。 御厨が先程のお釜からご飯を丼によそい、ちぎったレタスをふんわりと散らしてその上に薄切りにした肉を薔薇の花の形にすると上に刻み海苔を飾り見事な丼へと変身させた。 横には小皿に入った温泉卵が添えられている。それを見た林田警部と光が駆け寄って丼を掴み一気にかき込んだ。口いっぱいに入った料理を味わいながら2人は感動の涙を流している。林田・光「美味すぎる・・・、こんな贅沢な丼初めて。あ、ハモりましたね。」 まさか「あ、ハモりましたね。」まで被るまでとはと全員唖然としている、御厨は2人に温泉

    Last Updated : 2025-03-25
  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」91

    -91 空からの来客- 宴が続く中、月の輝く星空から大声が響き一同を騒然とさせた。声「この私を差し置いて、皆さんだけでお楽しみとは何事ですか?」光「な・・・、何?!」 全員が飲食をやめ空を見上げた、見覚えのある1頭のコッカトリスが3人のホークマンを連れて地上へとゆっくりと舞い降りた。背には軽装の男性が2人乗っている、林田が逃げる様にして家の中へと駆けこむ。林田「ま・・・、まずい・・・。誘うの忘れていた。」 舞い降りたコッカトリスが背に乗っていた2人を降ろし人の姿へと変わる、ダンラルタ国王であるデカルトだ。横にはホークマンである甥っ子と姪っ子が3人共揃ってお出まししている。姪っ子が背から降りた男性と軽くキスを交わす。甥っ子達はウェアウルフと取り皿を持ち、焼肉を取りに行こうとしていた。デカルト「2人も乗せていたから疲れましたよ、と言うかのっちはどこですか?」ネスタ「のっち・・・?ああ、ウチの旦那ですね。さっき家の方に走って行きましたよ。」デカルト「奥さん、かしこまらないで下さい。我々はもう友達ではないですか。」林田「そう仰って下さると助かります!!」デカルト「またそうやってかしこまる、やめろと言っただろのっちー。」林田「人前だから、それにのっちはダメだって。」 2人のやり取りを数人の女性がヒヤヒヤしながら聞いていた、1国の王に何たる態度を取っているのだと言わんばかりに。その内の1人であるドーラが質問した。ドーラ「お義父さんと国王様、いつの間にそんな関係に?」デカルト「これはこれはいつぞやの受付嬢さんではありませんか?まさかのっちの娘さんだったとはね。」林田「たった今俺の息子と結婚したんだよ、だから義理の娘ね。」 横から聞き覚えのある女性が口の中で黒毛和牛をモグモグさせながら声を挟んだ、その声には光も懐かしさを感じている。女性「じゃあ私達と一緒で新婚さんって訳だ。」 声の正体は先程キスを交わした女性ホークマン・キェルダだ。光「キェルダ!!久しぶりじゃない!!」キェルダ「ついさっき新婚旅行から帰って来たのよ。」光「えらく長めの新婚旅行だったのね。」キェルダ「あんたは暫く仕事を休める位稼いだみたいじゃない。」光「流石、言ってくれるじゃん。」2人「あはは・・・。」 2人が談笑している中、バルタンの兄・ウェインとホークマンの弟

    Last Updated : 2025-04-01
  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」92

    -92 飽き対策- ずっと焼肉を食べて呑んでばかりいる者達を見て解体をずっと行っていたネスタがぼそっと呟いた。ネスタ「皆ずっとバクバク食べているけど肉ばっかりで飽きない物かね。」 その一言を待っていたかの様に結愛が動きを見せた、丁度いいタイミングで林田家の裏庭にやって来た羽田の方を向いて頷いた。結愛「フフフ・・・、そろそろ誰かがそう言うと思ってましたよ。師匠、私に任せて頂けますか?羽田さん、お願いします!!」羽田「貝塚社長から光さんへのお礼と皆様へのプレゼントです。」 羽田は氷の詰まった発泡スチロールをひっくり返し中身を木製のまな板へと取り出した、脂の乗りが十分で一番うまい状態であがった鰤だ。ネフェテルサでは特殊な海水の海に囲まれている為に季節や時期を問わず年中新鮮で美味な鰤が採れる。ただ、バルファイ王国から研究に来たどの海洋学者も理由は分からないと言う。羽田「今朝ネフェテルサ王国沿岸で採れた鰤、運よく一番の上物と出会えましたのでお持ちしました。社長・・・、それで・・・。」 羽田がこそこそと結愛に細長い紙を渡す、おそらく領収証だろう。金額を見て結愛は目が真っ白になり、そのままの姿で後ろに倒れてしまった。羽田「社長、大丈夫ですか?!」結愛「こ・・・、こんなに高いの・・・?」 その様子を見たネスタが結愛の持つ領収証を見てみた。ネスタ「ありゃ、これはこれはかなりの上物を掴んだ様だね。よっぽど美味い鰤なのかね。」御厨「それでは僭越ながら私が捌かせて頂きましょう。」 御厨が包丁を握り羽田が持って来た上物を捌こうとすると羽田が声を掛け、同行してきた男性達を呼んだ。羽田「すみません板長、少々お待ち頂けますか?こちらですよ。」林田「き・・・、君は・・・。」デカルト「貴方方は・・・。」 林田とデカルトが驚くのも無理は無い、そこにいたのは事件解決の為林田に協力した梶岡浩章とガヒュー達巨獣人族だったからだ。ガヒュー「デカルト国王にお礼がしたくて来ちゃいました、俺と梶岡さんでこの鰤を捌こうと思います。あの時のハーブティーとフルーツタルトは本当に美味しかった。」梶岡「俺も林田警部には冤罪にして貰ったり昼飯を食わせて貰ったりと恩義があります、是非お礼をさせて下さい。」林田「梶岡君、君の食べた丼はこちらの板前さんが特製の物だ。」ヤンチ「お口に合いまし

    Last Updated : 2025-04-01

Latest chapter

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」140

    -140 部下から先輩へ- 異世界と言っても神によって日本に限りなく近づけられた世界で、同じ様な拉麺屋台なので学生時代にバイト経験があったせいか寄巻部長はお手伝いをそつなくこなしていた。寄巻「拉麺の大盛りと叉焼丼が各々3人前で、ありがとうございます。注文通します!!大3丼3、④番テーブル様です!!」シューゴ「ありがとうございます!!おあと、⑦番テーブルお願いします!!」寄巻「はい、了解です!!」 寄巻の登場により一気に回転率が上がったシューゴの1号車は、今までで1番の売り上げを誇っていた。嬉しい忙しさにシューゴも汗が止まらない、熱くなってきたせいか寄巻はTシャツに着替えている。 数時間後、今いるポイントでの販売を終えシューゴが片付けている横で手伝いのお礼としてもらった冷えたコーラを片手に寄巻が座り込んでいた。シューゴ「寄巻さんだっけ?あんた・・・、初めてでは無さそうだね。」寄巻「数十年も前も話ですが、あっちの世界で拉麵屋のバイトをしていた事があったのでそれでですよ。」 いつも以上に美味く感じる冷えたコーラを一気に煽ると、寄巻はこれからどうしようかと黄昏ながら一息ついた。渚は隣に座り寄巻自身が1番悩んでいる事を聞いた。渚「部長・・・、家とかどうします?」寄巻「吉村・・・、さん・・・。こっちの世界では違うからもう部長と呼ばなくていいんだよ?それに君の方がこの世界での先輩じゃないか、お勉強させて下さい。」 寄巻は久々に再会した部下に深々と頭を下げた、渚は焦った様子で宥めた。渚「よして下さいよ。取り敢えず不動産屋さんに行ってみましょう、即入居可能なアパートか何かがあるかも知れません。」シューゴ「おーい、寄巻さんにまた後で話があるから連れて来て貰えるか?」 シューゴの呼びかけに軽く頷いた渚は寄巻を連れて『瞬間移動』し、ネフェテルサ王国にある不動産屋に到着した。以前渚もお世話になったお店だ。 寄巻は『瞬間移動』に少々驚きながらも目の前のお店に入ろうとした渚を引き止めた。不動産屋で契約出来たとしてもお金が・・・。渚「そうでしょうね、でも安心して下さい。部ちょ・・・、寄巻さんも神様にあったんでしょ?」寄巻「それはどういう事だ?「論より証拠」って言うじゃないか、分かりやすい形で見せて欲しいんだが。」渚「では、場所を移しましょう。」 渚は再び『

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」139

    -139 懐かしき再会- その眩しい光は渚にとって少し懐かしさを感じる物だった、ただ花火か何かかなと気にせずすぐに仕事に戻った。今いるポイントで開店してから2時間以上が経過したが客足の波は落ち着く事を知らない。 2台の屋台で2人が忙しくしている中、渚の目の前に『瞬間移動』で娘の光がやって来た。スキルの仕様に慣れたのか着地は完璧だ。光「お母さん、売れてんじゃん。忙しそうだね。」渚「何言ってんだい、そう思うなら少しは手伝ってちょうだい。」光「いいけど、あたしは高いよ。」渚「もう・・・、分かったから早く早く。」 注文が次々とやって来ている為、調理と皿洗いで忙しそうなのでせめて接客をと配膳とレジを中心とした仕事を手伝う事にした。2号車の2人の汗が半端じゃない位に流れている頃、少し離れた場所から女性の叫び声がしていた。先程眩しく光った方向だ。女性①「大変!!人が倒れているわ!!誰か、誰か!!」 大事だと思った屋台の3人も、そこで食事をしていたお客たちも一斉にそちらの方向へと向かった。一応、火は消してある。男性①「この辺りでは見かけない服装だな、外界のやつか?」女性②「頬や肩を叩いても気付かないわよ、死んでるんじゃないの?」男性②「(日本語)ん・・・、んん・・・。何処だここは、俺は今まで何していたっけ。」 どうやら男性が話しているのは日本語らしいのだが、まだ神による翻訳機能が発動していないらしい。男性①「(異世界語)こいつ・・・、何言ってんだ?やっぱり外界の奴らしいな。」男性②「(日本語)ここは・・・?この人たちは何を言っているんだ?」 しかし光の時と同様にその問題はすぐに解決され、光達が現場に到着した時には雰囲気は少し和やかな物になっていた。すぐに対応した神が翻訳機能を発動させ、男性は皆に今自分がいる場所などを聞いていた。ただ、男性の声に覚えがある光はまさかと思いながら群衆を掻き分け中心にいる男性を見て驚愕した。光「や・・・、やっぱり!!」男性②「その声は吉村か?!何故吉村がここにいるんだ?!」渚「あんた・・・、ウチの娘に偉そうじゃないか?」 光は男性に少し喧嘩腰になっている渚を宥める様に話した。光「母さん、この人は向こうの世界にいた私の上司の寄巻さんっていうの。」渚「え・・・、上司の・・・、方・・・、なのかい?」寄巻「そう、今

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」138

    -138 事件後の屋台では- 事件が発覚してから1週間後、人事部長がバルファイ王国警察に逮捕され、お詫びとして受け取った温泉旅行から帰って来て笑顔を見せるヒドゥラの姿が渚の屋台の席にあった。渚「良かったですね、これで安心して働けるんじゃないですか?」ヒドゥラ「あれもこれも店主さんのお陰です。」渚「何を言っているんですか、私は何もしていませんよ。」ヒドゥラ「いえいえ、ここで拉麺を食べてなかったら社長に会う事は無かったんですから。」 その時、渚が屋台を設営している駐車場の前を1組の男女が歩いていた、貝塚夫妻だ。結愛「良い匂いだな、折角の昼休みだ。俺らも食っていくか?」光明「いいな、俺も腹が減っちったもん。」結愛「よいしょっと・・・、ヒドゥラさん、ここ良いですか?」 夫妻は前回と同じ席に着き、拉麺と叉焼丼を注文した。その時渚は既視感と違和感を半々で感じていた。渚「あれ?この前来たおばあちゃんと同じセリフな様な・・・。」結愛「き・・・、気のせいですよ、店主さん。やだなぁ・・・、嗚呼お腹空いた。」 結愛は光と渚が親子だという事を知らない、それと同様に渚は結愛と光が友人だという事を知らない。まぁ、この事に関してはまたいずれ・・・。 貝塚夫妻は以前とは逆に麺を硬めにとお願いした、前回は老夫婦に変身していたので仕方なく柔らかめにしていたが好みと言う意味では我慢出来なかったのだ。次こそは絶対硬めで食べると堅く決意していた、別に駄洒落ではない。 結愛達が注文した拉麺がテーブルに並び、3人共幸せそうに食べていた。やはり同様に転生した日本人が作ったが故に結愛と光明は何処か懐かしさを感じている。ヒドゥラ「おば・・・、理事長も拉麺とか召し上がるんですね。毎日高級料理ばかり食べているのかと思っていました。」結愛「何を仰っているのですか、私はドレスコードのある様な堅苦しい高級料理よりむしろ拉麺の方が好きでしてね。それと貴女、先程私の事・・・。」ヒドゥラ「て、店主さーん、白ご飯お代わりー。」渚「上手く胡麻化しちゃって、あいよ。」 数時間後、渚は屋台の片づけをして次の現場へと向かう事にした。実はシューゴに新たな地図を渡されていたのだが、2か所目のポイントを変更したというのだ。そこでは屋台を2台並べて販売する予定だと言っていた。 指定されたポイントはダンラルタ

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」137

    -137 人事部長の悪事- 夫婦は重い頭を上げヒドゥラにソファを勧めた、先程の入り口前にいた女性にお茶を頼むとゆっくりと話し始めた。夫人「初めまして、普段は学園にいるからお会いするのは初めてですね。私は貝塚結愛、この貝塚財閥の代表取締役社長です。隣は主人で副社長の光明です。」光明「初めまして、これからよろしく。」ヒドゥラ「しゃ・・・、社長・・・。そうとはつい知らずペラペラと、申し訳ありません。」結愛「何を仰いますやら、貴重なお話を頂きありがとうございます。」 実は最近の異動で人事部長が変わってから、やたらと人件費が削減されているので怪しいと思っていたのだ。削減された人件費の割には利益が昨年に比べて悪すぎると思っていた折、ヒドゥラの話を聞いた結愛は人事部長が怪しいと踏み、部の社員数人にスパイを頼み込んで調べていた。光明の作った超小型監視カメラを数台仕掛けて証拠を押さえてある。 調べによると金に困った人事部長が独断でありとあらゆる部署から人員を削り、余分に出た利益を書類を書き換えた上で自らの口座へと横流ししていたのだ。結愛「今回発覚した事件により貴女を含め大多数の社員に迷惑を掛けてしまった事は決して許されない事実です。人事部長は私の権限で以前の者に戻し、迷惑を掛けた皆さんには賠償金を支払った上で私達夫婦からお詫びの温泉旅行をプレゼントさせて頂きます。」光明「そしてヒドゥラさん、貴重なお話を聞かせて下さった事により我々にご協力下さいました。我々からの感謝の気持ちもそうなのですが、業務に対する責任感を感じる態度へと敬意を表し今の部署での管理職の職位を与え、勿論貴女にもお詫びの温泉旅行をプレゼント致します。」 ヒドゥラは今までの苦労が報われたと涙を流すと、全身を震わせ崩れ落ちた。2人に感謝の気持ちを伝えると自らの部署に戻り暫くの間泣いていたという。 問題の人事部長についての調査なのだが、以前から魔学校の入学センター長を兼任しているアーク・ワイズマンのリンガルス警部に結愛が直々にお願いしていた。そしてこういう事もあろうかと様々な魔術をリンガルスから学んでもいたのだ、屋台で使用した『変身』もその1つである。そのお陰でネクロマンサーとなり、多くの魔術が使える様になった結愛は魔法使い特有の念話も使える様になっていた(光は『作成』スキルで作ったが)。結愛(念話

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」136

    -136 優しく頼もしき老夫婦- 先程まで抱えていた悩みなどどうでも良くなってしまったと周りに思わせてしまう位の笑顔で拉麺と銀シャリを楽しむラミア、その表情に安堵したのか渚は屋台の業務に戻る事にした。でもその表情には何処かまだ疲労感がある、そこで冷蔵庫からとあるものを取り出してヒドゥラに渡した。ヒドゥラ「あの・・・、頼んでいませんけど。」渚「いいんですよ、疲れている時は甘い物です。貴女この後も頑張らなきゃなんでしょ。」 ヒドゥラは手渡されたプリンを食後の楽しみにすると、より一層笑みがこぼれた。ヒドゥラ「ありがとうございます。」 その数分前、渚が屋台を構える駐車場の前を1組の男女が通りかかり、その内の女性が小声で男性に一言ぼそっと呟くと、2人は頷き合いその場を離れた。 それから数分後、ヒドゥラがプリンを楽しんでいる時に1組の老夫婦が屋台を訪れ席に座った。老夫人「よっこらしょ・・・、お姉さんここ良いかね?」ヒドゥラ「勿論どうぞ。」ご主人「ありがとうよ、昼間にやってる拉麺屋台なんて珍しいから食べてみたくてね。」ヒドゥラ「美味しいですよ、お2人も是非。」老夫人「嬉しいねぇ。店員さぁ~ん、拉麺2つね。歯が悪いから麺は柔らかめにしてもらえるかい?」渚「はい、少々お待ちを。」 渚が老夫婦の拉麵を作り始めると夫人がヒドゥラを見てお茶を啜り、声を掛けてきた。老夫人「そう言えばこの辺りでラミアを見かけるなんて珍しいね。」ヒドゥラ「あ、これ・・・。普段は魔法で足に変化させて人の姿で働いているんです。」ご主人「それにしてもお姉さんどこか疲れているね、何かあったのかい?」 老夫婦の柔らかで優しい笑顔により安心したのか、先程渚に語った会社における自らの現状をもう1度語った。老夫婦は親身になってヒドゥラの話を聞き、時に涙を流しつつまるでそのラミアが自分達の孫娘であるかの様に優しく手を握り頭を撫でた。 ヒドゥラは涙を流し老夫婦に感謝を告げると、手を振りながらその場を後にして会社へと戻って行った。 老夫人がご主人に向かって頷くと、残った拉麵を完食してすぐお勘定を払ってその場を去っていった。渚「ありがとうございました、またどうぞ!!」 老夫婦が去ってからは昼の2時半頃までお客が絶えず、ずっと皿洗いと調理を繰り返していた。正直こんなに大変とは思わなかったと感

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」135

    -135 大企業の事実- 以前の職場で噂されているとは知らない2号車の渚はシューゴに手渡された地図で指定された販売ポイントの駐車場に到着した、シューゴとは逆回りでこの後渚にとって懐かしきダンラルタ王国の採掘場での販売をも予定している。渚「この辺りだね・・・、よし。」 本来はとある職場の職員が使う駐車場で、管理人とシューゴが特別に月極契約している端の⑮番の白線内にバックで止める。何があってもすぐに対応できる様に「必ず駐車はバックで」と言うのがシューゴとのお約束だった。 渚は運転席から降車し、少し辺りを見てみる事にした。渚「ここはどこの駐車場なのかね・・・。」 駐車場から数十メートル歩いた所に大きな建物が2つ並んでいた、1つは大企業の本社ビルで最低でも20階以上はありそうだ。また、隣接する建物は15階建てのものらしく横に大きく広がっている。2つの建物は数か所の渡り廊下で繋がっていて窓の向こうから行き来する人々がちらほらと見えている。渚「大きいね・・・、何ていう建物なんだい?」 入口らしき門が見えたのでその左側に書かれている文字をじっくりと読んでみた、見覚えのある文字がそこにある。渚「「貝塚学園高等魔学校 貝塚財閥バルファイ王国支社」ね・・・、貝塚財閥ってあの貝塚財閥かい?!確か向こうの世界で教育系統に力を入れているって聞いた事があるけどこっちの世界にお目見えするとはね、こんな所で屋台をするのかい?贅沢だねぇ・・・、ありがたやありがたや。」 渚はハンカチで汗を拭いながら軽バンへと戻り営業の準備を始めた、屋台キットを展開しスープの入った寸胴を火にかける。暫くしてスープの香りが漂い始めると先程の建物から昼休みを知らせるチャイムが聞こえて来た。すると女性が1人、疲れ切った様子で屋台へとやって来た。へとへとになりながら渚が差し出した椅子へと座る、お冷を手渡すと砂漠を彷徨っていたかの様に一気に喉を潤した。目にはクマがあり、酷い寝不足らしい。聞くと人件費の削減でかなりの人数を減らされ毎日酷い残業らしく、今日みたいに昼休みを過ごせない日もあるそうだ。せめて今日の昼休みくらいは美味しい物をとスープの匂いに誘われてやって来た。女性「えっと・・・、拉麺を1杯お願いします。麺は硬めで。」 疲れ切った表情で渚に伝えると懐から手帳を出し、午後からの仕事の確認をし始めた。渚

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」134

    -134 懐かしの味- 常連さんの注文に応じ、新メニューである「特製・渚の辛辛焼きそば」を作り始めた1号車の担当・シューゴ。まずは豚キムチを作っていくのだがここで必ずお客さんに聴いて欲しい事があるそうだ。シューゴ「辛さはどれくらいがお好みですか?」 判断基準の為、ラミネートされた用紙を渚から手渡されていたのでそれをブロキントに見せる。辛さは5段階まで表示されており、それに応じて各々の辛さのキムチを使用する事になる。キムチはこの調理用に全て渚が特製で漬けていたのだが、シューゴには5種類とも試食する度胸が無かった。最高の5辛のキムチは色が尋常じゃない位に黒く、恐怖心をあおる様に唐辛子の匂いがやって来る。5辛以上の辛さを求められた場合は5辛の物に特製ペーストを加えて作る。 因みに最初のお客さんには1辛を勧める様にと伝えられており、1辛のキムチは多めに作られていた。シューゴ「最初は1辛をお勧めさせて頂いているのですが。」ブロキント「せやね・・・、丁度刺激が欲しかったんで敢えて3辛でお願いできまっか?」シューゴ「3辛で・・・、分かりました。お好みで辛さ調節できますのでね。」 3辛用のキムチを加え調理にかかる、後で炒めなおすので最初は軽く火を通す程度に。一度皿にあけ少し硬めに茹でていた麺をソースと辣油で炒め先程の豚キムチを加え一気に煽る。それを見た瞬間、ブロキントが何か思い出したかの様な表情をして聞いた。ブロキント「店主はん・・・、それまさか赤江 渚はんのレシピちゃいますのん?」シューゴ「はい、なので「渚の」が付いているんです。」ブロキント「渚はんって、ホンマにあの渚はんなんですか?」シューゴ「ど・・・、どうされたんです?」ブロキント「いやね、以前ここで事務と調理の仕事をしとった人がおったんですけどね、その人と同じ作り方やなぁと思っとったんです。」 そういうと幸せそうに、そしてどこか懐かしそうに微笑みながら調理を眺めていた。シューゴ「渚さん・・・、多分今日中にこの場に来るはずですよ。実は今日からウチの2号車としてデビューする事になったんで。」ブロキント「ほんまでっか?!ほな夕飯に渚はんの作った拉麺を食べてみます!!」シューゴ「ふふふ・・・、お楽しみに。さぁ、出来ましたよ。」 皿に炒めた麺を盛り付け辛子マヨネーズを振りかけて出来上がり、お客の

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」133

    -133 お仕事開始- 夜明け前、弟・レンカルドの経営する飲食店の調理場を借り、毎日継ぎ足して使っている秘伝の醤油ダレをシューゴが仕込んでいた。 自らの舌で選び抜いた素材と独自に調合したスパイス、そして黄金比をやっとの思いで見つけ出し配合した調味料を沸騰させない様にゆっくりと火入れしていく。 幾度となく納得のいくまで味見を繰り返し、完成しかけたタレに煮込み前の叉焼を入れ肉の脂を混じらせつつ双方を仕上げていった。 シューゴ「これは味見・・・、味のチェック・・・。」 出来たばかりの叉焼を1口、十分納得のいく味付けと全体的にトロトロの食感が織りなす絶妙なハーモニーを口いっぱいに頬張って首を縦に振った。その味に堪らなくなってしまっていたのか数秒後には白飯に手を出していた、こうなると予想していたレンカルドが気を利かせて用意してくれていたのだ。シューゴ「うん・・・、これは仕事終わりにビールだな。」 数切れ程タッパーに残し楽しみに取っておき、屋台2台分の準備をし始めた。そう、これからは屋台が2台だから味付けの責任も2倍だ。 2台分の醬油ダレ、叉焼、そしてその他の具材を用意し終えた頃に裏の勝手口から渚が声を掛けた。渚「おはようございます、良い匂いですね。」シューゴ「おはようございます、宜しければ味の確認も兼ねて出来立てを如何ですか?」 そう言って1口サイズに切った叉焼を小皿に乗せて渡すと渚は目を輝かせながらパクついた、目を閉じてその味を堪能する。シューゴ「その表情だとお口に合ったみたいですね。」渚「これビールの肴としての叉焼単品や叉焼丼でも売れるんじゃないですか?折角辛子マヨネーズも持っていくのでそれをかけて。」シューゴ「そのアイデア・・・、採用しても良いですか?」 シューゴは調理場に渚を残しパソコンのある部屋に向かい、急ぎ電源をつけた。どうやらメニュー表や注文用のメモの改定と魔力計算機(レジ)のボタン設定を即座に行っている様だ、因みに値段は原価等を考慮して即席で決定した。渚「シューゴさん、いくら何でも早すぎないかい?私でも焦りますよ。」シューゴ「いや、折角のアイデアです。是非採用させて下さい、容器はまたいずれ作りますので今日は取り敢えず今ある分でお願いします。」渚「了解しました。」 新メニューが即席で誕生した所で屋台への積み込みだ、忘れ物

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」132

    -132 出来立ての屋台と焼きそば- 秘伝の醬油ダレとスープ、そして叉焼を含む営業用の商売道具を説明の為に一通り外に止めてあった新しい屋台に積むと一緒に積んでいた丼を1つ取り出し拉麺の作り方説明し始めた。シューゴ「まず最初に注文を取ってメモに書き、丼の底にゆっくりとこの醬油ダレを入れて頂きます。次に箸で溶かしながらスープを入れていくのですが、それと同時並行で別の鍋にて麺を茹でていきます。各硬さに対応する茹で時間はメモしてありますのでこれを見ながらやって見て下さい。」 茹で上がった麺を取り出し上下に振って湯切りする、これがきっちり出来ていないと折角のスープの味がゆで汁で薄くなってしまう。シューゴ「予め切ってある叉焼などの具材を乗せて完成です、提供する時に必ずお箸を一緒にして下さい。」 経費の削減の為、今回の屋台では割り箸ではなく洗って使う塗り箸を用意してある。しかし希望する客がいれば割り箸を提供する。 お箸と割り箸を入れている引き出しの真下にドリンク用の冷蔵庫が設置されていた、中ではグラスも冷やせる様になっており、固定して運ぶ為に移動中割れる心配がない。 この屋台には魔力計算機(レジ)が標準装備されており、各ボタンに値段が登録されているので記憶する必要が無い。トッピングや白飯、またドリンクのオーダーにも対応出来る様にもなっている。 因みに注文用のメモには各商品の名前が記載されていて、「正」の字を書けばいいだけになっているので大助かりである。各席の厨房側にメモを挟めるようにピンが付いていて、すぐに調理にかかれるシステムだ。 渚がメモをじっくり読み込んでいると「特製・辛辛焼きそば」の文字が。渚「シューゴさん、これ・・・。」 渚がメモ用紙の「特製・辛辛焼きそば」の箇所を指差しながら聞くと、シューゴは懐から看板らしき板を取り出した。シューゴ「そうそう・・・、これは私からの開店祝いです。それとこれからは渚さんにお教え頂いたあの焼きそばを新メニューとして取り入れる事にしました。」 シューゴがプレゼントの看板を裏返すと、全体的に黒の背景に赤い文字で「新メニュー 特製・渚の辛辛焼きそば」と書かれていた。右下には唐辛子や辛子マヨネーズの絵が描かれている。渚「いつの間に・・・、それに私の名前入りで・・・、良いんですか?」シューゴ「勿論です、渚さんの拘りのお

Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status