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4. 「異世界ほのぼの日記2」79

Author: 佐行 院
last update Last Updated: 2025-07-01 09:53:40

-79 お供えと三つ巴-

 同級生3人が昔を懐かしみ、美味い料理と昔話、そして悪戯を肴にワインを酌み交わしたその夜の事だった。街の中心地に聳え立つ高層ビルのオーナーである倉下好美は王宮での夜勤に備え準備していた。

 好美が相も変わらず弁当を作り忘れていたので恒例と言った様子で余り物を詰めた弁当をデルアが手渡す、夜間の営業に影響しなければ良いのだが。

 今日は火曜日だ、という事は恒例の「あの日」なのだ。ナルリス・ダルランの妻、ダルラン光からいつもの香り高き「お供え物(2日目のカレー)」を受け取ると大切に『アイテムボックス』へ入れ、早速夜勤へと向かった。

 王宮へ到着し、挨拶を交わした好美には以前から気になっている事が1点。

好美「ニコフさん、鍋って誰が光さんに返しているんですか?」

ニコフ「申し訳ないのですが、私も存じ上げないのです。私達の休みの曜日に返却されているのでしょう。」

 すると、光ご本人から『念話』が。

光(念話)「その鍋ね、ここだけの話だけどいつも最後に食べてるエラノダさんがお忍びで返しに来てんのよ。」

好美(念話)「エラノダさんって、王様の?!」

光(念話)「うん、いくらあたしが取りに行くって言っても聞かなくて。これ、ニコフさんには聞こえてない様にしているから内緒ね。」

 『念話』で話していた間、見た目ではずっと沈黙していた好美の様子を心配そうに将軍長が伺っていた。

ニコフ「どうかされましたか?『念話』か何かで?」

 好美は咄嗟に胡麻化した。

好美「ちょっと、エリューの事で。店と言うか企業秘密なのでお気になさらず。」

ニコフ「オーナーさんも大変ですね、お察しいたします。」

 すると、聞き慣れた声が控室に響き渡った。「コノミーマート」のナイトマネージャーを兼任するサラマンダー、エリュー本人だ。

エリュー「おはようございます。」

好美「おはようございます。」

 好美は挨拶の後、即座に空気を読む様にとエリューに『念話』を飛ばした。

ニコフ「おはようございます、丁度今貴女の話をしていたのですよ。」

エリュー「好美ちゃん、えっと・・・、もしかしたら昨日の話?」

好美「そうそう、昨日皆で余った唐揚げを馬鹿食いした話・・・。」

エリュー「ああ・・・、揚げすぎちゃったあれね。本当にごめんなさい。」

好美「いえいえ、美味しかったからいいのよ。」

 そう言った会話を交わ
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    -90 洗い物の事実- 時刻は23:30、結愛との再会を果たした主役の人魚はしっぽりと呑みだした。流石に呑みすぎたかと感じた客たちはピューアに一言告げて帰って行った、ただ未だ女子高生達は白飯を食べ続けている。 そんな中、まさかの厨房呑みをしていた好美と光は大量の食器類と対峙していた。こうなる事は予想していたが流石に食洗器だけでは追いつかない。 しかし心配は無用だった、ここは日本ではなく異世界なので異世界らしい解決方法がある。白飯をずっと食べ続けていた人魚の妹が指を1本動かして大きな水泡の様な物を出した、よく見てみるとスライムだ。メラ「汚れならこの子が食べてくれますよ、放り込むだけでオッケーです。」 人魚特有の『メイクスライム』と言う魔法らしく、ダンラルタ王国に住む人魚族は大抵使えるらしい。ただ食洗器が気に入ったのか店での業務中にピューアが使わなかったので好美は初めて知った、かなり便利な物の様だ。 全ての洗い物を放り込まれたスライムは体内で汚れを消した(いや食べた)後、丁寧に乾燥まで終わらせて綺麗に皿を整理整頓して並べていた。 好美は正直このスライムを雇いたくなった、しかしその思いと裏腹にメラは魔法を解除してスライムを消してしまった。好美「あ・・・。」メラ「どうしました?」好美「いや、別に大丈夫。」 今思えば自分には『作成』がある、早速『メイクスライム』を『作成』して見様見真似で指を動かしてみた。 指先から出始めたスライムがどんどん大きくなっていく、そして最大のサイズになった瞬間に指先から離れて独りでに汚れた皿を探していた。 幸い、未だ白飯を食べていた女子高生達が茶碗やおかずの皿を重ねていたので迷わずそっちの方へいったのだが。メラ「このスライム、お姉ちゃんが出したの?」 話に夢中なのかメラの言葉はピューアの耳には届いていない、それどころか2人の会話の声量はどんどん大きくなっていく。結愛「だろ?そんでうちの光明がよ・・・。」ピューア「何それ馬鹿みたーい。」メラ「お姉ちゃんたら・・・。」ガルナス「良いじゃないの、誕生日位楽しませてあげようよ。」 好美は未だに首を傾げるメラの方へ近づいて行った、そろそろ自分がスライムを出した事を伝えるべきだと思ったからだ。好美「ごめん、紛らわしい事して。私がスライムを出したの。」メラ「あれ、好美

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