Masuk-340 拘りって一体- 新しい副店長(予定)をそっちのけにしながら必死になってマークシートに予想を記入した「暴徒の鱗 ビル下店」オーナー・倉下好美、「別にSGとかでもないただの一般レースだし携帯のアプリで買えば良いんじゃねぇの?」と個人的に思ってしまうのは何となく俺だけであって欲しい。バハラ(当時)「もう・・・、気は済んだかい?息を切らしながらする程の事でもないと思うんだけどね?」ヤエル(当時)「そうだよ、あんたより時間が無いのはどちらかと言えばバハラの方じゃないのかい?それにこう言っちゃ悪いけどこのレースは内枠3艇が逃げるはずだから多分堅いよ?」バハラ(当時)「忙しいのに急に呼び出されて待たされるのは私じゃなくても誰だって嫌って事が分からないかい、それにここで働きながらでもレースを見続けているヤエルが言う程なんだから人気通りの決着になるかもだろ。」 周りから見ればそう見えるのかも知れない、しかし好美個人には必死になる理由があった様だ(※因みにですがこちらのヤエルさんは料理屋の女将さんであり決して予想屋さんではありませんので勘違いしない様に)。好美(当時)「そんな事無いもん、絶対このレース荒れるもん!!」ヤエル(当時)「もう・・・、こりゃムキになっちゃう悪いパターンだよ。それで「業務提携(さっき言ってたやつ)」はどう言う事なんだい?」 投票締め切りから数分の間はまだレースが始まらないのでその間に説明してしまおうという好美、こう言っちゃなんだが大切な事は焦ってはいけないと思うのだが聞こえている訳無いか。好美(当時)「バハラさん、確か家の畑って白菜も作っていたよね?」 やっと本題を話し出したか・・・、いつ話が進むかヒヤヒヤしてたんだよな・・・。バハラ(当時)「勿論さ、もうすぐ鍋料理が人気になる時期だからね。それに向けて栽培をしているけど、それがどうしたんだい?」 結愛が暑そうに見える長袖をよく着用している様に年中比較的温暖なこの世界でも少しヒンヤリとして鍋が恋しくなる時期がやって来る、特に夜に至っては日中との寒暖差が半端ではない事も事実と言えるだろう(まぁよく言う砂漠地帯みたいなもんだな、でもそれってバルファイ王国か・・・)。好美(当時)「それの一部を使ったキムチをうちで販売出来ないかなと思ってさ、それとヤエルさんのキムチも併せて販売させて
-339 そう言えば・・・- 数分経過してやっと競艇場前におけるざわつきが治まって来た中、「そろそろか」と頃合いを見たバハラは『人化』して普段通りの状態へと戻った(と言っても元々混沌龍なので何方の姿を普段と呼ぶべきなのかが分からないが)。 一行は一先ず場内の店へと歩を進ませた。好美(当時)「相変わらずの有名人ぶりだね、やっぱりテレビの影響力を舐めてはいけないね。」バハラ(当時)「笑い事じゃないよ、まだ私の姿を見慣れていない人だっているんだからそれなりに気を遣わなきゃいけない事を分かっておくれよ?」 そんな中で場内を数分程歩き店へと戻ってきた、「やっぱりな」と思う人も少なくないと思うが好美の右手には出走表と投票用のマークシートが。バハラ(当時)「それにしてもあんたはいつでも「遊ぶ」という事を忘れないんだね、私も見習いたいわ。」好美(当時)「良いじゃん、趣味を持つことは良い事だと思うけどな。」女将「そうだよ、仕事ばかりの毎日じゃ疲れちまうからね。」 自然な感じで会話に入ってきたがバハラと女将は今日が初対面だ・・・、多分。バハラ(当時)「そう言えば好美ちゃん、こちらの方は・・・?」 優しい眼差しを向けて女将を手差しするバハラ、今ではすっかり有名人となった混沌龍と言えどしっかりと礼儀をわきまえている。好美(当時)「ここの女将さん、今日バハラさんに来てもらったのはこの人と業務提携を結んで貰おうと思ってさ。」女将「「業務提携」?!あんた唐突に何言ってんだい?!」バハラ(当時)「そうだよ、そう言う事はシューゴさんって人に相談しなきゃいけないんじゃないのかい?」 するとポケットからスマホを取り出した好美、画面上にはシューゴから来たメッセージが表示されていた。シューゴ(メッセージ)「「ビル下店」の事だから好美ちゃんの自由にしてくれて良いよ、何せオーナーは好美ちゃんなんだからね。」 よく見ると好美が「ビル下店」のオーナーを始めてすぐの日付となっていたが今はそれを気にする程の余裕なんて勿論ない、今話し合うべきなのは女将とバハラでどういった業務提携を行おうとしているのかという事。バハラ(当時)「ハハハ・・・、あんたって心底信用されているんだね・・・。それでどうするつもりだい?こちらの・・・、女将さん・・・、ってあんたよく見ればバハムートのヤエルじゃない
-338 大人買いの理由- いつもの事だが光と女将は好美による奇想天外な行動に驚きを隠せなくなっていた、個人的には落ち着いて話を進行していきたいのだがいつも上手く行かないんだよな・・・。好美(当時)「本当にあんたって失礼な人だよね、それじゃあ全部私の所為みたいじゃん。」 そうは言っていないけど・・・、ごめんって・・・。光(当時)「まぁまぁ好美ちゃん、横から茶々入れてばっかりの奴の事は放っておこうよ。それにしても本当にこのキムチを全部買うつもり?結構な量みたいだけど大丈夫?」 この店は最終レースが終わる時間まで開店しているのでこのキムチも念の為にそれなりの量を用意する様にしているみたいだ、ただ全部買って貰えるという意味では女将は嬉しいかも知れないが内心では心配している事もあるみたいだ。女将「そうさね、好美ちゃんは拉麵屋さんやお店を経営しているから知っていると思うけどキムチって日持ちしないんだよ?こんなに買い込んで全部1人で食べ切れるのかい?」 女将が心配するのも無理は無い、冷蔵ケース一杯に入っていたキムチは大食いの好美と光からすれば食べ切れる量かも知れないが好美は別の案を企んでいる様だ。好美(当時)「違うよ、うちの店に置かせて欲しいの。」 やっぱりか・・・、好美の目が輝く時は絶対「商売事」が絡むんだよな・・・。女将「「うちの店」ってまさか暴徒の鱗やコノミーマートにかい?嬉しいけど白菜から全て手作りで作っているから毎日納品できるか分からないよ、それでも良いのかい?」 女将が先程言った言葉をしっかりと覚えていた好美、何かを思い出したのか何処かへと『念話』を飛ばした。好美(念話)「ねぇ、ちょっと来れない?競艇場の所の韓国料理屋さんなんだけど。」 光は『念話』の相手に微かにだが覚えがあった、ただその女性は声色からして何処か呆れている様に思えた。女性(念話)「好美ちゃん・・・、あんた店が忙しいのに遊んでんのかい?お店のオーナーって結構自由が利くんだねぇ。」好美(念話)「夜勤明けなんだから別に良いじゃん、働いていない訳じゃ無いから許してよ。私の事は兎も角、来れるの?来れないの?」女性(念話)「今「忙しい」って言ったじゃないか、ものの数秒で忘れちゃったのかい?」 好美は店の壁にかけてあった時計を確認した、時間的にもランチのピークタイムが過ぎたくら
-337 客目線となって- ネフェテルサ競艇場にて続々とレースが進行していく中、場内にある韓国料理専門の食堂でサムギョプサルを楽しんでいた。そんな中、光が何故か辺りを見廻していたので好美はほんの少し不審に思っていた。好美(当時)「光さん、さっきからどうされたんですか?お知り合いの方でも来られるんですか?」 決して大きくないこの国において、「光の知り合いは好美とも知り合いである」と言う言葉を否定する事が出来ない気がする。その上好美の同棲相手で光の腹違いの弟も暫く登場してきていないのでそろそろ出て来ても良いのではないかとも思ってしまう、まぁこれに関しては俺の匙加減なのだが。光(当時)「い・・・、いや・・・。別に誰とも待ち合わせていないよ、それにこの国で待ち合わせするなら他にも良い場所があるじゃない。」 確かに市街地の真ん中にある噴水の前や「お風呂山」、それに王城やその隣の教会など待ち合わせに使えるスポットなどはいろいろあるはずだ。そんな中でこんな競艇場内にある食堂で待ち合わせる住民なんているのだろうか、いややはりここは異世界だからが故に十分にあり得る話なのかも知れない。好美(当時)「何言ってんの、私ここで遊ぶ時は絶対この食堂の前で待ち合わせるもん。」 そうなんすか・・・、何かすんません・・・。ただこのままでは一向に話が進みそうに無いのでお許し下さい。好美(当時)「もう・・・、それでどうされたんです?誰かとの待ち合わせじゃ無いんだったら何か探し物ですか?」 美味いサムギョプサルで白飯やビールがどんどん進んで行く中、光は1人物足りなさを感じていた様だ。おいおい、それ以上の贅沢なんてあるのかよ。光(当時)「私ね、このお肉をキムチと一緒にサンチュで巻きたいなと思ってたのよ。」 韓国料理を提供する店でキムチが置かれていない事が果たしてあっただろうか、いややはりこういった事も「異世界が故に・・・」と言える可能性が無くも無い。好美(当時)「それ私もしたいです。あの・・・、これじゃ無かったですか?」 卓上で薄い冷却魔法の膜の様な物で包まれた茶色の壺を指差した後にその蓋を開ける好美、中には「当然」と言った様によく漬かっているキムチがたっぷりと入っていた。光は自らの興奮を抑えつつ小皿2枚に取り分けて好美と1口、すると・・・。2人(当時)「これこれ・・・、やっぱ
-336 遊びまくる転生者達- 第4レースにおいて頭2艇が2週目の2マークへと差し掛かったボートレースネフェテルサにて多くの観客が肩を落とし、諦めた様に各々が持っていた舟券をゴミ箱へと捨てに行こうと向かう中で好美は1人息を飲んで決着の時を待っていた。因みにこのまま好美が持っていた5-4-2での決着となればこの競艇場始まって以来の最高配当となる様だ、ただ「勝負は下駄を履くまで分からない」と言う様に最終周回で勝負がひっくり返る可能性も十分あり得るので決して気を抜いてはいけない(俺も鳴門場外でずっと緊張していた記憶があるな)。好美(当時)「何でよ、ここまで来れば勝負なんて決まった様な物でしょ。」 分からんじぇ、さっきの様な突風がまた吹いたら勝負が大きく変わるかも知れんやろ。ほれにここはわいらの地元である鳴門競艇場(徳島)と違って流れの激しい河川競艇場じぇ、下手な奴じゃったらターンする時に外に流れたり減速しすぎてそキャビる(その場でとまる)時やってあるじゃろうが。好美(当時)「いけるもん、我がが買うた4号艇と5号艇は両方ともチルト0度じぇ?ほれで1周のタイムが1番時計と2番時計を占領しとるけん信じとるもん。」 待てぇや、落ち着いて出走表を見てみんかい。支部や級別から考えても4号艇の方が腕持ちだって事は一目瞭然じゃろうが、逆転すればおまはん終わるじぇ?光さんに飯奢らないといけなくなるんじぇ(※光は好美が勝っても奢って貰うつもりでいるみたいだが)?好美(当時)「嫌じゃ、勝ったお金でお酒のおつまみを買うつもりなんじゃ!!」 かなりの高配当を手にしてでも買いたい酒の肴け・・・、ってどんだけ高い肴を買うつもりじゃい!!好美(当時)「勿論私が呑む様に買うつもりではあるけど店でも提供出来ればと思っとんのんじぇ、ほれなりに量が必要なの作者なら分かるじゃろ?」 おいおい、まさかと思うけどお前が今賭けてる金って店の経費ちゃうんえ?好美(当時)「失礼な事を言わんとって、ちゃんと私の口座から卸した軍資金で来とるもん!!あんな、いくらオーナーじゃからって店の金に手を出す訳無いじゃろ!!」 すんません・・・、大変失礼致しました・・・。 それで光さん・・・、恐れ入りますがレースの方はどうなっていますかね・・・?光(当時)「えっ・・・?!えっとね・・・、今最終周回のバックストレ
-335 またもや・・・- 突然だが話は数か月程前に遡る、好美は偶然休みの合った光と共にネフェテルサ王国にある競艇場にいた。2人共考える事は同じ、「大穴を当てて美味い物を食う」事であった。簡単そうに言うが俺の経験からして公営競技での勝負がそこまで上手く行くとはハッキリ言って思えない。光(当時)「次のレースは間に合いそうに無いから見送って、その次から買う事にしても良いよね。私朝ごはんまだの、付き合ってくれない?」 しかし光の希望は速攻で崩れ去った、好美はここに来るまでに新聞や近所で入手していた出走表を利用して既に予想をしていたが故に何の抵抗もなくマークシートの記入を終えて発券機へと一直線に向かっていた。光(当時)「ちょっと好美ちゃん・・・、もう少し考えてからでも良いと思うんだけど。」 彼氏の姉の言葉も空しく、投票を続ける好美。自分の予想によっぽどの自信がある様だが大丈夫なのだろうか。光(当時)「ねぇ、お小遣いはもうちょっと大切にした方が良いと思うんだけど?」 ここでようやく好美が口を開いた、ただ相当自身に満ち溢れている様に思われる。好美(当時)「大丈夫ですって、実はさっきから詳しい情報を携帯で見てたんです。」 実は街中のカフェで2人が待ち合わせてからと言うもの、好美はずっと携帯(スマホ)と睨めっこしていた。まぁ・・・、よくある事かと俺は許容していたが。光(当時)「だからって絶対当たるだなんて保証は何処にも無いでしょ、もしそれで外れたらあそこの食堂で何か奢ってね?」 そこは「勝ったら奢ってくれ」と言うべきだがきっと保険をかけたんだろうなと思われる、きっと勝った時も「儲かったんだから取り分をくれ」とせがむんだろうな・・・。好美(当時)「駄目ですよ、勝ったらやろうと思っている事があるんですから。」光(当時)「・・・?」 疑問が残る光をよそにレース開始のファンファーレが場内に鳴り響いた、多くの観客が一斉に息を飲みながら競争水面を見つめる。勿論好美もその1人だった、ただ好美の場合は訳が違う気がしたが今は気にしない方が良いんだろうな。 静寂の中、未だ現役で担当するカバーサによる実況が鳴り響いた。カバーサ「おはようございます、このレースからご観戦のお客様も少なくは無いのでございましょうか。まぁ・・・、それは良いとして・・・。今現在こちらネフェテルサ
-㊿ 信じたくない- 結愛の発言に驚きの表情を隠せない守、急ぎ家へと戻りトイレの扉を叩いた。ドアノブを見てみると扉の鍵は閉まっていた、まぁ当然の事か。守「母ちゃん!!母ちゃん!!中にいるんだろ!!開けろって!!」 まさか「トイレに行ってくる」が母の最期の言葉になるとは思いたくない守はドアノブを必死に動かしていた、しかしドアはピクリとも動かなかった。これも当然の事。結愛「守待てよ、落ち着けって。もしドアが開いて、お前の母ちゃんが生きてたとしてもしも脱いでたらどうするつもりだよ。俺がやるからどかんかい。」 自らも死者だからか、やたらと落ち着いていた結愛は守と交代して中にいると思われる筆
-㊽ 漏洩- 結愛に渡された手紙にずっと感動の涙を流す守、行き方も分からない遠い世界でだが好美が生きている事を心から喜んだ。手紙に書かれている好美の意志に反してしまう思考だが、正直、「会いたい・・・。」 真帆は体を小刻みに震わせて大粒の涙を流す守の肩に手をやった。真帆「守、良かったね。」結愛「お前充実してんな、いっぱい女の子に囲まれてよ。」龍太郎「お・・・、お前遂に二股か?」守「そんな訳ねぇだろ、今の彼女は真帆だぞ!!」 守の言葉に少し顔を赤らめる真帆。真帆「それ、守の方から言うのは反則だよ。真帆がその言葉で守を煽るのが楽しいのに!!」結愛「良いぞ真帆ちゃん、どんどん言って
-㉝ 馬鹿げた噂- 龍太郎は油淋鶏をおかずに白飯を頬張る結愛を調理場からチラチラと見ながら数回程首を傾げていた、何処か違和感があったからだ。高級外車で店にやって来た大財閥の代表取締役はそんな店主に気付いて一言尋ねた。結愛「さっきから何だよ、俺の顔に何か付いてるか?」龍太郎「いやすまねぇ、いつもそればっかり食ってるのにやたら美味そうに食うからよ。」結愛「大好物の美味いもんを不味そうに食えって言う方が難しいだろう。」 義弘による残虐な独裁政治が終末を迎えてから数日後、守や圭と一緒に松龍に来て初めて食べたこの「油淋鶏定食」に惚れこんだ結愛は店に来るとこればかり頼んでいた。龍太郎「そうだ
-㉜ 高嶺の同級生との再会- 麻婆豆腐の追加注文が入ったので、龍太郎が必死に鍋を振っている横をお手洗いを済ませた守が浮かない顔をして通った。 守の表情を見た店主兼警視総監はさり気なく電話の内容について聞いてみる事にした。龍太郎「おい守、さっきまでの元気はどうしたんだよ。結愛ちゃんは何て言ってたんだ?」 結愛も守や正と一緒にちょこちょこ店に来ていたので龍太郎にとっては友達みたいなものだった為に普段から「結愛ちゃん」と呼んでいた。守「好美の事故についてだったんだけど、どうやら義弘が関与しているらしいって言ってたんだ。」 警視総監として義弘についてずっと捜査しているので龍太郎は勿論知っ