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5. 「あの日の僕ら」㊼

Author: 佐行 院
last update Last Updated: 2025-09-28 06:53:00

-㊼ 美麗の涙-

 金上の告別式がしめやかに行われ、守、好美、正、桃、裕孝、そして香奈子の6人が集まり、そして店を臨時休業にした松戸夫妻が駆け付けた。しかし、その場に美麗は来ていなかった。

王麗「この度は・・・。」

 全員王麗の声に合わせて頭を下げると金上の母で王麗の同級生である洋子が近づいて来た、ずっと涙をこらえている様だ。

洋子「麗(れい)・・・、まさかこうなるとは思わなかったよ。皆も秀斗(しゅうと)の為にありがとうね。」

王麗「洋子・・・、辛かっただろう。うちの美麗(メイリー)に秀斗君の心臓をくれてありがとう。」

 2人共互いの肩を抱いて涙を流していた、そして洋子が辺りを見廻した。

洋子「あの・・・、そう言えば美麗(みれい)ちゃんは?」

王麗「うちの子なら部屋にずっと籠っているよ、あれからずっと塞ぎ込んでいるみたい。」

 十数年待ち続けた恋人が目の前で亡くなったので無理もない。

洋子「犯人、まだ捕まってないんだって。車も被害届が出ていた盗難車で山の中に捨てられていたって聞いたわ。」

王麗「そう・・・、まだ解決しないんだね・・・。」

 必死に涙をこらえる王麗、すると洋子が懐をごそごそと探り始めた。

洋子「麗、お願いがあるの。美麗ちゃんにこれを渡してくれる?」

 洋子は小さな箱を王麗に託した、式場から家へと戻った王麗は真っ直ぐ美麗の部屋に向かいドアを静かにノックして2人だけの会話にする為に中国語で話しかけた。

王麗(中国語)「美麗、開けるよ?」

美麗「・・・。」

 何も言葉を発しない美麗、王麗が部屋へ静かに入ると泣き疲れたのかベッドの横で美麗がうなだれていた。

 ただそれ所では無い問題が起きた、娘の左手首に大量のリストカットの痕を見つけた母は娘の頬をビンタした。

王麗(中国語)「馬鹿な事しなさんな!!かんちゃんがそんな事望むとでも思ったの?!」

美麗(中国語)「止めないでよ!!かんちゃんがいないなら、この世界にいる意味が無いの!!会いたいの!!」

 娘は母の膝で泣き続けた。

美麗(中国語)「返してよ!!私の大好きなかんちゃんを返してよ!!」

王麗(中国語)「今でもあんたとかんちゃんはずっと一緒だろ、そうだ・・・、これ。」

 王麗は膝でずっと震えていた美麗に洋子から託された小箱を手渡した、箱をゆっくりと開けると中にはハート形のイヤリングが入っていた。

美麗(中国語
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