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第4話

Author: 日々バズり
【任務失敗。抹殺までの残り時間は十二時間です】

私は聞こえないふりをして、手にしたハンマーを力任せに振り下ろした。

一緒に手作りした土人形を、一つ一つ打ち砕いていく。

巨大なウェディングフォトも、ハサミでズタズタに切り裂いた。

クローゼットを空にし、宝石はすべて寄付し、彼が自ら選んでくれたぬいぐるみや人形たちもすべてゴミ袋へ放り出した。

彼が冗談めかして「愛の巣」と呼んでいた花に囲まれたこの家は、がらんどうの廃墟と化した。

夜八時、柊真からの電話がいつも通りに鳴った。

「夢、明日はいよいよ俺たちの晴れの日だ。嬉しいかい?

今夜は実家に戻っているから、明日は直接会場で待っているよ」

受話器越しの男の声は相変わらず落ち着いていて、揺るぎない自信に満ちていた。

彼は知っているのだ。愛に飢えた私が、温かい家庭を何より渇望していることを。だからこのタイミングで、私が彼を見限ることなど絶対にないと高を括っている。

だから今までと同じように、義務的な機嫌取りの電話をかけてきたのだ。

「ええ、嬉しいわ」

自分の冷めきった声が、耳に届いた。

「そうか。じゃあ早く寝て、しっかり休んでおけ。また明日」

彼が電話を塞ぐ直前、かすかに聞こえてきた。結城家の本当の奥様――白石莉乃(しらいし りの)の甘ったるい笑い声が。

私は電話を切り、目を閉じて眠りについた。

システムのカウントダウンなど、もう知ったことではない。

翌日。陽射しは眩しく、会場は蒼海市の名士たちで溢れかえっていた。

誰かが小声で囁く。「結城社長も気前がいいな、愛人遊びにここまで金をかけるとは……」

「堂々と正妻と愛人を並べるんだよ。結婚式は建前、跡継ぎのお披露目が本命さ。分かってないな」

私は聞こえないふりをして、祭壇に立つ男に向かって歩み出した。

柊真の傍らには、すでに一組の母子が立っていた。莉乃とその息子だ。彼の両親も後ろに控えている。

三世代が揃った、絵に描いたような家族。

名ばかりの花嫁である私の方が、よほど無理やり割り込んだ部外者に見えた。

私の姿を認めるなり、男の目つきが変わった。

「夢、どうしてウェディングドレスを着ていないんだ?」

私は彼を見上げ、淡々と答えた。「他人のお下がりには触りたくないの。物も、人もね」

柊真の顔色が曇った。「どういう意味だ?」

私は答えず、ただ傍らで笑みを浮かべている莉乃を見つめた。

「今日はあなたの息子さんの誕生日でしょう?とっておきのプレゼントをあげるわ」

彼女は眉をひそめ、一瞬警戒の色を見せたが、すぐに表情を緩めて得意げに笑った。

「結城家のすべてがこの子のものよ。プレゼントなんて必要ないわ」

男の子は私を睨みつけ、軽蔑を込めて言い放った。

「お前みたいな汚い女の物なんかいらない!汚らわしい!」

「黙れ!」

頭上から柊真の怒声が降ってきた。

男の子は、よほどの屈辱を受けたかのように目を赤くし、テーブルの上のワインボトルを掴むと、力任せに私に投げつけた。

ガチャンという砕ける音と、悲鳴。それが同時に響き渡る。

鮮やかな赤が、視界を埋め尽くした。

目の前を流れるのが赤ワインなのか血なのか分からない。ただ頭を割るような激痛が、電流のように全身を駆け巡るのを感じた。

無意識に、手が男の方へ伸びる。

血の霞の向こうで、私だけを愛すると言い、家庭を与えると約束した柊真は――真っ先に背中を向け、あの母子を庇っていた。

私は自嘲気味に唇を歪め、伸ばした手を力なく下ろした。

莉乃は、口元の笑みを隠そうともしなかった。

足を振り上げ、私を力任せに蹴り飛ばした。

体が吹き飛び、ガラスの破片が散らばる床に叩きつけられる。鋭い破片が肉に食い込み、じわじわと血が滲み出した。

システムの、切迫しているようでどこか冷酷な声が脳内に響いた。

【任務失敗。抹殺まで残り三十秒】

この時になって、ようやく柊真は私に目を向けた。手を差し伸べながらも、その口調には私を責める響きがあった。

「合意したはずだろう。偽の妊娠騒動を起こしておいて、今度はわざとあの母子を挑発して、怪我までして同情を引こうというのか?一体何がしたいんだ?」

私はじっと彼を見つめた。

そして、ふっと笑った。

ほらね。

私がこれほど虐げられても、この男はまだ私が悪いと思っているのだ。

【抹殺まで残り五秒】

頭の中で、ごうごうという音が鳴り響く。

私は震える手を伸ばし、懐に隠していた短剣を取り出した。

周囲から、一斉に息を呑む音が聞こえた。

柊真は目を見開き、声が震え始めた。「夢!何をする気だ!」

【カウントダウン、三、二、一……】

恐怖に染まった彼の眼差しを受け止めながら、私は短剣を高く振り上げ、思い切り振り下ろした。

鋭い刃が、私自身の心臓に深く突き刺さる。

私は首を傾け、彼に向かって微笑んだ。

「私たち母子を消して……あなたたちの三人家族を、完成させてあげるわ」
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