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第105話:それぞれの道⑤

Penulis: 花柳響
last update Terakhir Diperbarui: 2026-01-22 06:00:26

 面接会場のビルを出た頃には、冬の陽はすでに西の空へと傾きかけていた。

 極度の緊張から解放された身体は鉛のように重いけれど、胸の奥には確かな熱が残っている。

「……終わったぁ」

 大きく伸びをすると、冷たい空気が肺いっぱいに満ちた。

 隣にいた奏くんは、「少し頭を冷やしてくる」と言って、近くの大型書店へと消えていった。

 彼なりのクールダウンなのだろう。去り際に見せた、今までになく晴れやかな横顔が印象的だった。

 私はといえば、ふと、ある場所へ足が向いていた。

 私のもう一つの居場所であり、大切な後輩がいる場所。

 『Caffe Felice』だ。

 輝くん、プレゼンどうだったかな。そろそろ終わってる頃かも。

 スマホを取り出すが、輝くんからの連絡はない。

 まだ戦いの最中なのかもしれない。

 邪魔をしてはいけないと思い、私はそのままバイト先へと向かった。今日はシフトが入っていないけれど、店長や陽翔くんに、就活の第一歩を踏み出した報告をしたかったのだ。

 夕暮れの街を歩き、店の前までたどり着く。

 まだ営業時間は終わっていないはずだが、入り口のドアには『CLOSED』の札がかかっていた。

「あれ? 臨時休業?」

 不思議に思ってガラス越しに店内を覗き込む。

 照明が落とされ、薄暗くなった店内。

 そのカウンター席に、二つの人影があった。

 一人は、エプロン姿の陽翔くん。

 そしてもう一人は、見間違えるはずもない、私の彼氏――天王寺輝くんだ。

「輝くん? どうしてここに?」

 ドアに手をかけようとして、私はぴたりと止まった。

 二人の間に流れる空気が、いつもの「恋のライバル同士の小競り合い」とは明らかに違っていたからだ。

 張り詰めた、真剣勝負の気配。

 ガラス越しでも伝わってくるその熱量に、私は息を殺して立ち尽くした。

「――頼む、七瀬」

 静まり返った店内に、輝くんの声が響いた。

 換気扇の回る微かな音に混じりながらも、その言葉ははっきりと私の耳に届いた
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