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第50話:ゼミ合宿は混浴パニック!? ②

作者: 花柳響
last update 最終更新日: 2025-12-02 20:00:57

「うわぁ……すごい……!」

 バスを降りた瞬間、感嘆の声が漏れた。

 目の前に広がるのは、手入れの行き届いた日本庭園と、歴史を感じさせる重厚な日本家屋。打ち水がされた玄関先では、涼やかな風が風鈴を揺らしている。

 『月光院』の名に恥じない、幽玄な美しさをたたえた旅館だった。

「へえ、悪くないね」

 輝くんがサングラスを外し、品定めするように旅館を見上げる。その横顔は、すっかり「御曹司モード」だ。

「部屋割りだが、女子学生は離れの大部屋。男子学生は本館の二階だ」

 教授が事務的に告げる。

 よかった。女子部屋と男子部屋が離れているなら、夜這い……じゃなくて、不測の事態は避けられそうだ。ホッと胸を撫で下ろしたのも束の間。

「ただし」

 教授が、ニヤリと底意地の悪い笑みを浮かべた。

「夕食までの間、班ごとに周辺のフィールドワークを行ってもらう。課題は『観光資源としての温泉の効用と限界』。レポート用紙十枚分。提出できなければ、夕食は抜きだ」

「はぁっ!?」

 学生たちから悲鳴が上がる。到着早々、鬼畜すぎる。

 しかも、班ごとということは……。

「……よろしくね、栞」

「……足手まといにはならないようにする」

 左右から、同時に声がかかった。

 輝くんの甘くねっとりとした声と、奏くんの静かで硬質な声。

 A班:天王寺輝、氷室奏、月詠栞。

 この地獄のトライアングルで、フィールドワークという名のデート(?)の開始だ。

「じゃあ、行こうか」

 輝くんが右手を握る。

 すかさず、奏くんが反対側に回り込み、無言で左側のスペースを確保する。手こそ繋いでいないものの、その距離は限りなくゼロに近い。

 傍から見れば両手に花かもしれないが、当事者にとっては両側が高圧電流だ。

 私の心の叫びなど露知らず、二人のイケメンに挟まれたまま、観光客で賑わう温泉街へと連れ出された。
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