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第23話

作者: 長月
美月は仕方なく、一番近い便の飛行機で帰国した。

帰国すれば騒動は収まっていると思っていたが、彼女の「伝説」は未だ語り継がれているとは思いもしなかった。

全身をすっぽり覆い隠したのは、惨めな姿を誰にも見られたくなかったからだ。

その異様な格好に、人々は皆、距離を置いていく。

目的地に着くと、美月はまず不動産屋へ向かい、立地の良い物件を選んだ。

しかし、カードで支払おうとすると残高不足だと判明した。

隆司が彼女に渡したこのカードには、家を一軒買える程度の金額しか入っていなかったのだ。

美月は怒りに震え、隆司に電話をかけようとしたものの、すでに番号は繋がらなくなっていた。

その時、不動産屋には美月だけでなく、太鼓腹の金持ち風の男も物件を選んでいた。

男は美月の焦りに気づき、その全身を覆う布の下に隠されたしなやかな体つきにも目を留めた。

男は長く夜の世界に身を置いていたため、美月の置かれた状況を直感的に察した。

男はそっと近づき、足りない金額をすべて補ってやった。

美月はまだ小声で隆司を罵っており、隣に誰かが立っていることに気づいていなかった。

やがて男の行動を理解すると、美月の胸にはある考えがよぎった。

ゆっくりと近づき、男の手の甲へ自分の指を滑らせる。

男はじっと彼女を見つめ、二人は寄り添うようにして上の階へと姿を消した。

美月は今や仕事もなく、金持ちの庇護のもとで生活を維持するしかなかった。

相手の素性は謎に包まれていたが、美月も深く知ろうとはしなかった。

美月が求めていたのは、ただ心を預けられる存在だけだった。

その頃、凛の海外での仕事が一区切りつき、優也と帰国の相談をしていた。

急いで出国したため、国内には凛が片付けなければならない用事がいくつも残っていた。

一方、隆司の生活は急落し、翔太も次第に口数が少なくなっていた。

二人もまた帰国の予定を立て、そして偶然にも、凛たちと同じ便の飛行機に乗ることとなった。

凛を見た瞬間、隆司の瞳には再び光が宿ったかのようだった。

翔太は真っ先に駆け寄って凛に抱きつき、「ママ」と何度も叫んだ。

凛は驚愕から、疑念へ、そして怒りへと表情を変えた。

「隆司、私をつけてきたの?」

隆司は即座に否定し、慌てて説明した。

「俺は治療のために帰国する必要がある。この子も学校の都合で戻らな
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