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第3話「Gift」

last update Petsa ng paglalathala: 2026-07-10 09:36:46

さあ、卵料理バトル、調理開始!

まずはサイラスが鶏卵けいらんを一つ手に取るが…。

「教えてやろう。このサイラス、料理において一切の不得手はない。中でも卵料理は、食材に敬意を持って我が腕を振るうにふさわしい。卵こそ料理の基礎基本にして最重要とも言うべき食材だからだ!」

そう言うと、彼は手にした鶏卵を一つ空中に放り投げ、人差し指で軽く突く。すると卵が勝手に割れ…黄身と白身が一瞬のうちに分離し、別々のボウルに流れ落ちた。

それを見た影光とフレイヤも、目を見合わせながら驚愕し大声を出してしまう。

「うえええええ!?何あれ!?」

「あ、あれほどの技術…というか超能力?そんな人が、なんで地上げ屋の専属シェフなんかやってるんだ?」

「あと、卵放り投げるのって食材に敬意持ってるのかな…」

驚く二人をよそにサイラスはさらに次々と卵を割り、ボウルに中身を注いでいく。

驚いている影光とフレイヤだが…ハッと我に返り、自分たちの調理の準備を始める。調理タイム終了までに料理が完成しなければ不戦敗…その時点で敗北が決定するのだ。何はともあれまずは動かなければならない。

(しかし卵料理と言っても広範だ…何を作ればいい?あのサイラスという人、生半可な相手じゃなさそうだぞ。そんな人に対抗できる卵料理と言えば…なにがある?)

オムレツ、キッシュ、目玉焼きに卵焼き、スクランブルエッグ…卵料理はあまりにも多種多様だ。解釈によってはベーコンエッグトーストやマカロン、スポンジケーキ、T.K.G.卵かけご飯も含まれるかもしれない。創作料理まで含めればその数はもはや膨大だ。サイラスが言った『卵こそ料理の基礎基本にして最重要』というのは、決して言い過ぎではないだろう。

影光が思案している中…彼のアシスタントとして入っているフレイヤは卵を割っている。どのみち卵を使うのだから今から割っておいても問題はない。

だが、それを見た地上げ屋のおじさんは審査員にクレームをつける。

「コラァ!審査員ども!目ン玉ついとんのかワレコラァ!!二対一でこっちが不利になっとるやろがい!!」

しかし審査員はすぐにその意見を却下する。アシスタントは二名まで認められるのがルールだからだ。特に料理勝負に詳しくなかった地上げ屋のおじさんは、悔しそうに地団太を踏むが…。

「ええい、ならばわしがサイラスの助っ人に入ってやる!」

「なっ!?…バ、バカ!やめろ!!」

敵チーム、完全におじさんが足を引っ張っているようである。これを好機として、影光はフレイヤに作るべき料理名を伝えた。

「フレイヤさん、決めました。オムライスでいきます!」

卵そのものの技術だけでサイラスに挑めば、分が悪い。ならば卵と米、具材、ソースの総合力で勝負する…影光はそう考えたのである。

――――――――――

さて湯を沸かした鍋に影光は生米を入れる。そして皮をむいた玉ねぎを取り出し、包丁を構えると…。

「はあっ!」

残像しか見えないレベルで玉ねぎを切り始めた。まるでマシンガンのような音が響く。

「ううっ、なんという速さだ!包丁が残像に見える!」

「し、しかも切るサイズも0.1㎜単位で正確だ!」

「あれほどの速さで切って玉ねぎは大丈夫なのか!?」

観客が影光の包丁さばきを見て、その技術を口々に感嘆する。いやすごいなお前らもよく見えてるな、と言いたくなるほどだ。

同じように影光は鶏肉を切り、玉ねぎと一緒に米を煮ている鍋に投入する。

米は炒めるんじゃなくて煮るの?というフレイヤの言葉に、煮るも炒めるも自由自在ですと言いながら影光はバターと油、そしてケチャップを鍋に投入しようとするが…。

この時、彼は違和感に気づいた。審査員が用意した調味料の中に、ケチャップがなかったのだ。

「…うっ!ケチャップがない!」

影光は呆然と呟き、フレイヤもそれに気づき声を上げる。

「ホントだ!なんで?いつもは用意されてるのに…」

ケチャップがなければチキンライスを作るのは絶望的だ。ざわざわとする観客だが、審査員たちは間違いなく用意したと言い張る。嘘を言っているようには見えないが…。

(さては…あいつか!)

影光は地上げ屋のおじさんを睨むが…彼はニヤニヤと笑いながら言う。

「なんじゃ?ワシがパクったと言いたいんか?困りますなあお客さん。言いがかりはやめてくんなはれ」

もはや言葉の統一感さえなくなった彼だが、犯人は明らかだ。しかし影光もフレイヤもまったく気づかない早業だった、どうやら相当慣れているようだ。料理勝負のルールはよく知らないくせに。

さすが令和まで生き残った地上げ屋と言ったところか、ダーティな手段には長けているようだ。おそらく証拠など残していないだろう。追求してもしらばっくれるだろうし、その間に米も具材も煮えすぎてしまう。そうなれば圧倒的に不利…いや、敗北は間違いない。

こうなればケチャップを使わないガーリックライスやバターライスに切り替えるしかない。しかし今から方向転換となるといろいろ調整をやり直さなければいけない。そんな時間があるのか、と悩む影光だが…。

「お店からケチャップ持ってきたよー」

と、フレイヤが『町食堂 かがやき』から持ってきたケチャップを鍋に投入した。そう、材料や調味料、調理器具の持ち込みはOKである。

「あ、どうも。そういえば持ち込みはOKなんでしたっけ」

「何イイイィィィッ!」

と悔しがるおじさんだが…調理中のサイラスは卵を焼きつつ彼に吐き捨てる。

「当たり前だろう、いったい何を考えているんだ…契約は昨日からだが、もうあんたにはほとほと愛想が尽きた。この勝負をもって、あんたとの専属契約は解約させてもらう」

――さあ、材料を投入し、しばらく煮込んだ影光。頃合いと見て、鍋に向けて拳を構え…。

「はああっ!!」

と右の正拳突きを撃ち込む。すると、鍋からはとんでもない量の蒸気が噴き出してきた。昨日の勝負を知っている観客は、これが煮込んだお粥を炊いた米に戻す超常現象的な奥義と知っているが…。

「もう一発!」

と声を上げ、今度は左の拳を撃ち込む。すると鍋がモーター音を上げながら横に高速回転し、一瞬で中身が炒め上げられてしまった。

「えっ!?」

「なにっ!?」

「な…なんだあっ!?」

「うわああああああ!!」

観客と審査員はまたしても困惑の大声を上げる。物理法則が泡を吹いて倒れそうな技術…というか魔法だ。

お粥を白米に戻すのはまだ百歩譲ってわかるにしても、なぜ鍋を殴って中身が炒められるのか。痛めつけるんじゃないんだから。

いやお粥を白米に戻すのもそういえばはっきり言って意味が分からない。まあいいや、とにかくこれでチキンライスは完全に材料や調味料と混ざり合い、完成したらしい。

――会場でこの技術に驚かなかったのは三人のみ。

まずはその一人、フレイヤが呆れつつも軽く笑いながら、鍋のチキンライスを作っておいたオムレツに移す。

「なんだかズルイよねえ、それ。私たちが真面目に炊いたり炒めたりするのが馬鹿らしくなってきちゃう」

そして二人目、サイラス。自分の卵料理を仕上げつつ、余裕綽々に笑う。

「ふふ、『暗黒食王クッキング・オブ・ダークネス』…その実子ならば当然のこと。だが、大事なのは奇術ではない、味だ。そこを確かめさせてもらうぞ、少年」

そして三人目…またいつの間にか勝負を見に来ていた父の『暗黒食王クッキング・オブ・ダークネス』である。

「ふっ、まだ未熟…せいぜい及第点といったところか」

――――――――――

さて、調理は進み…審査員により調理タイム終了が宣言される。

オムライスを作った影光&フレイヤだが、サイラスが何を作ったのかはまだ不明だ。決して中途半端な料理ではないだろうと影光は気を引き締める…まあ、今からできることは特に何もないが。せいぜいケチャップを盗まれたクレームだろうか。

それはともかく両者の料理が出揃った。いよいよ決着の時である!

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