تسجيل الدخولさあ、長かった戦いもついに最終盤。影羅対ロキ…いよいよ最後の一手である!
まずロキは、ついに冥帝鰹のサクを超高速で切り始める。おそらくは味や歯応えを楽しめる種々のベストサイズをマイクロ単位…いや本人が豪語するナノ単位で切り出しているのだろう。そしてそれを、すでに他の刺身や酢飯を盛ったどんぶりに並べていく。
対する影羅は、彗星鮎のシャワーを浴びた酢飯を均等に混ぜ始める。そして器に盛り分け、静かに、そして綺麗に白身魚の刺身を乗せ始めていた。
二人の対照的な、しかし美しい所作に観客たちは見惚れている。
同じように観ていた影光も、ふと声を漏らした。
「信じられない…なんて速さ、そしてなんて整った動きなんだ。姉さんが凄いのは知っていたけど、これほどのレベルだったなんて…」
思わず口を突いたそんな言葉だが…。隣にいた
「昨日までの影羅なら、あそこまではできん
さあ、各地で始まった第一回戦!毎週繰り広げられる日本全土を巻き込んだ料理対決は、次のように進んでいた。――――――――――第二試合、千葉県千葉市中央区。包丁の『伊蔵』対オーディンの末子こと焔王『スルト』。伊蔵が惨敗したうえ、スルトからは相当な暴言を吐かれたらしい。フレイヤ曰く:「うわ~態度悪い。戦いたくないね」影光曰く:「でも、強い。伊蔵さんがあんなにあっさり敗れるなんて…」――――――――――第三試合、香川県高松市。八傑衆にしてかつて『町食堂 かがやき』で勤務していた不真面目な天才『影時』対モブの『田中田中男』。まあ言うまでもなく影時が圧勝したらしい。哀れ田中田中男、出番さえなかった。影光曰く:「さすが影時さん。…あんまりさすがって言いたくないけど」フレイヤ曰く:「いや、それより田中田中男って…」――――――――――第四試合、岐阜県岐阜市。八傑衆若頭にしておなじみ熱い男『影真』対オーディンの正妻『フリッグ』。だが、フリッグは試合会場に来なかったらしい。何かの策略かと訝しがる影真だったが…来ない以上、彼の不戦勝が決まったようだ。影光曰く:「フリッグ…オーディンの正妻だっけ。何か企んでいるのかな?」フレイヤ曰く:「寝坊しただけなんじゃないの?」――――――――――第五試合、秋田県鹿角市。サイラス対八傑衆の一人『影風』。期せずして味方同士の戦いとなったが、サイラスはフリー参加なので組み合わせ上は同陣営とみなされなかったようだ。そして、やはり地力の差でサイラスが順当に勝利した。影光曰く:「影風さんだってかなり強いのに、やっぱりサイラスさんは強いな」フレイヤ曰く:「サイラスさん、鹿角市まで車で行ったらしいよ。遠っ」――――――――――第六試合、石川県金沢市。八傑衆の一人
さて、札幌予選から三日後…影光とフレイヤは、地元の都内S区花宮町へ帰ってきていた。札幌予選は勝ち抜け二名。影光(とフレイヤ)、そしてロキ。予選では勝ち抜け二名が決まれば終了のため、この両者の直接対決は行われず、本戦へ持ち越しとなった。次は各地の予選を勝ち抜いた総勢二十四名で本戦一回戦を始める…というわけだ。――――――――――ここは影光が拠点とする花宮町のマンションの自室。そこで、新千歳空港で買ったお土産のバターサンドを食べながらフレイヤが言う。「でも良かったよね、ロキと戦わなくて。あんなの絶対勝てるわけないし」そう、それは影光もわかっていたことだ。影光自身、一回戦も二回戦も変な相手だった。一回戦は『羅美麗栖・芭明日』、二回戦は『ジャスティス仮面』。正直、料理勝負以前の相手たちだった。まあラッキーだったと言っていいだろう。反面、ロキは一回戦はチョンチー、二回戦は影羅。この二人相手に真っ当に勝って予選を突破してきたのだ。類稀なる腕と言っていい。仮に影光がロキと当たっていれば、確実に負けていただろう。「本戦で当たったらどうしよう。正直、勝ち筋が全然見えないよ…」帰ってきてからずっとそんなことを考えていた影光だった。「そうだねえ。本戦で当たったら麻酔銃でも撃つ?ジャスティス仮面みたいに」「…それが一番勝ち目がありそうだけど、なんかそれも通用しなさそう」――――――――――さて、TVでは全国各地の予選の戦いが流れている。何といっても料理勝負はこの世界の最大の娯楽、料理戦争は放送し続けているだけで視聴率を稼げる番組だ。そして時折流れる予選突破者、つまり本戦出場者の紹介もされている。まず、G.O.D.からの推薦者は十人。その全員が予選突破したらしい。そして闇食倶楽部からの推薦者も十人。予選でロキと戦った影羅以外は全員予選を突破したようだ。
さあ、長かった戦いもついに最終盤。影羅対ロキ…いよいよ最後の一手である!まずロキは、ついに冥帝鰹のサクを超高速で切り始める。おそらくは味や歯応えを楽しめる種々のベストサイズをマイクロ単位…いや本人が豪語するナノ単位で切り出しているのだろう。そしてそれを、すでに他の刺身や酢飯を盛ったどんぶりに並べていく。対する影羅は、彗星鮎のシャワーを浴びた酢飯を均等に混ぜ始める。そして器に盛り分け、静かに、そして綺麗に白身魚の刺身を乗せ始めていた。二人の対照的な、しかし美しい所作に観客たちは見惚れている。同じように観ていた影光も、ふと声を漏らした。「信じられない…なんて速さ、そしてなんて整った動きなんだ。姉さんが凄いのは知っていたけど、これほどのレベルだったなんて…」思わず口を突いたそんな言葉だが…。隣にいた暗黒食王がそれを聞いてフッと笑った。「昨日までの影羅なら、あそこまではできん。宿敵の存在が、己の力量をこの一時で驚異的に上達させたのだ。 まったく…あのわがままな娘がよくここまで育ったものよ。もしかすると、今の影羅なら我に並ぶかもしれんな」己の娘が一人前になったことを確信したのか、少し寂しそうに暗黒食王がそう呟く。それが聞こえたかどうかはわからないが、調理場の影羅は少し笑いながら仕上がった海鮮丼に薬味を乗せタレをかけ、宣言した。「調理終了!完成したわ!」対するロキも冥帝鰹のタタキから切り落とした端身を空中に放り投げ、一瞬でみじん切りにする。そしてその欠片と塩を海鮮丼にまぶし、最後に薬味とわずかなタレを海鮮丼にかけて宣言した。「フン、俺も調理完了だ!」…こうして、ついに両者の海鮮丼が出揃ったのである。――――――――――さあ、審査員の下に丼が運ばれていく。そんな一時の休憩の中…フレイヤが、まだ調理場にいるロキを見て、不思議そうに言った。「ロキ、今
『あの男は、俺の母を殺した』…。突然の告白に、その場にいた全員が驚く。…その中で、一番最初に反論したのが影光だった。「あ、ありえないそんなこと!父さんが、人を殺すなんて…!!」大声でそうロキに異議を申し立てるが…ロキは、何も言わず腕を組んだままだ。そして、答えの代わりとばかりに言い放った。「俺が言うのはそれだけだって言ったろ。経緯や理由なんて言うつもりはねえ。知りたきゃお前の親父から聞け。…まあ、きっとお前には教えねえと思うがな」その言葉を受けて、影光は慌てて近くにいた父を見るが…。父、暗黒食王は静かに目を瞑り、腕を組んでいた。そして…。「…そうか。お前は、あやつが遺した子だったのか…」――とだけ呟いた。「と…父さん!いったいどういうこと!?まさか本当に…」影光は慌てて必死に父に問うが…父は言葉少なく影光を見て、こう言った。「…影光よ。あやつのいうこと、すべてが偽りではない。だが、断じて我が殺したわけではない。それだけは言っておく。だが…すべてを知るには、まだお前は幼すぎる」「そんな!なんで…」必死に食い下がる影光だが…。そんな中、調理場から大きな声が響く。「影光!父さんを信じなさい!父さんは、人を殺すような人間じゃない!」…そう発したのは、影羅だった。そう、それは影光もわかっていたことだ。父は、決して人を殺すような人間ではない。そんな人間なら、自分も影羅も、闇食倶楽部の人間もここまで慕っていない…と。しかし、それでも何かの間違いで、と考える影光だが…。フレイヤが、影光の肩に軽く手を置き、優しく諭す。「影光。私は|暗黒
冥帝鰹とは…!?本来ならば暖かな表層海域を高速で回遊する鰹という魚だが、稀に常識を超えて深く、冷たい深海へ潜る個体がいる。通常の鰹ならば、そこで体温と体力を奪われ、長くは生きられない。しかし、その中でもさらに稀に、深海の冷気と圧力に耐え生き延びる…いや『生き延びてしまう』鰹がいるという。その鰹は『冥鰹』と呼ばれ、深海の生物を食い荒らしながらもいずれ寿命を迎えるが…。稀にしか存在しないその冥鰹の中にも、稀に、極めて稀に数十年から数百年の時を生きるものがいるとされる。その鰹は『この世で最高の美味』と言われるが、その皮膚は包丁はおろか鉄砲、ライフルの弾さえもはじき返すという。その性格は極めて獰猛、時にはイルカやシャチ、ダイオウイカや鯨にさえも襲い掛かり、骨も残さず食らい尽くすとか。かつて古代に存在した海の帝王『メガロドン』や『アーケロン』、『モササウルス』。さらには神話にしか存在しなかったはずの『クラーケン』『リヴァイアサン』が滅びたのは、この鰹に食い荒らされてしまったからだという…。料理研究者はその鰹…千年に一匹いるかいないかのそれを、冥鰹の帝王…『冥帝鰹』と呼んだ!――――――――――「…うむ、これが私が知っている冥帝鰹の伝承だ」重い顔をしながら暗黒食王が冥帝鰹についてそう説明するが…。周囲は呆気に取られている。そんな魔物みたいな魚…いや生命体が存在するのか。いくらなんでも盛りすぎではないか。巨大鮫メガロドンや肉食亀アーケロンに海の覇者モササウルス、さらには伝説上の生物クラーケンや正体不明の神獣リヴァイアサンが、まさか鰹に敗れて絶滅してしまうとは…。というかそんな時代に鰹がいたのだろうか。はっきり言ってツッコミが追い付かない。ど
さあ、料理戦争札幌予選、ついに最終戦。最後の戦いは、G.O.D.総帥オーディンの長男『ロキ』対、闇食倶楽部総帥暗黒食王の長女『影羅』。おそらくは料理戦争参加者でもトップクラスの実力を持つ両者の激突。本当に予選でやっていいのかと思うほどの勝負である。さあ、舞台の上の調理場に立った二人が、相変わらず挑発合戦を行う。「俺が優勝すれば闇食倶楽部の支配権も手に入る。どのみち解散させるつもりだが、お前は継続して雇ってやる。その時は、ヤツメウナギの飼育係にでもしてやるよ」「あら、意外と楽しそうね。じゃあ私が優勝したらあなたは烏骨鶏の飼育係ね。一匹一匹に名前をつけさせてあげるわ。当然、シメるのもあなたがやるのよ」…なんというか、本当に精神的に責める陰湿かつ強烈な挑発である。耐えきれなくなった審査員たちが、最終決戦のテーマを発表する。最後の戦い、そのテーマは…ついに出た『海鮮丼』である!「でっ、でたああ!ついに!ついに海鮮丼だ!」「札幌名物にして日本人の心に訴える海鮮と米…たまらん!」「この二人でこのテーマとは!審査員!わかってるじゃねえか!」これを聞いたロキと影羅も、まるですでにテーマを分かっていたかのように動き出す。「フン、この札幌予選では味噌ラーメンもスープカレーもすでに出た。残る大物はジンギスカンか海鮮丼だけだ。手抜かりはねえ!」「その二つのうち、どちらが最後を飾るかといえば…。やはり料理人の腕や食材チョイスが味を大きく左右する海鮮丼。とっくに準備はできているわ!」さあ…宿命の対決、調理タイム開始!――――――――――さあ、開始宣言後すぐに動く対決者両名。影羅がまず米を洗い、炊飯器に入れる。そこに昆布を一枚入れ…右手で銃を撃つ仕草を取った。「本当は自然に浸水させたいけど、今回はそういう時間はないか