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4. 転職先

last update Veröffentlichungsdatum: 25.05.2026 19:16:36

 そんなこんなで入社1年ほどたったある日。

 部長から呼び出された。

 めったにないことなので緊張する。

「申し訳ないけど今期末で契約満了とさせてほしい」

 どうも新しい人を入れるために派遣社員を減らすらしい。

「高橋君も頑張っていたんだけど、上がどうしても新卒じゃないと駄目と言ってね」

「そうですか……わかりました」

 けっこう居心地の良い職場だったのに残念。

 でも彼は私がいなくなったら泣いちゃうんじゃないかな。

 少し早いけど送別会が開かれることになった。

 他にも転勤や退職する人がいるのでまとめてやるらしい。

「宮本さん、お疲れ様」

「おつかれさまです」

 いつものように彼が話しかけてくる。

「ごめんね、頑張って交渉もしてみたんだけど……」

 肩を落としてしょんぼりした様子で話している。

 藍さんから「正社員を増やすなら宮本さんを正社員にすればいい!!」と啖呵きっていたと聞いた。

 まあ派遣社員をわざわざ正社員にする会社なんて珍しいよね。

「まあ飲みましょうよ」

「ああ」

 頑張ってくれたみたいだし最後ぐらい構ってあげよう。

 最後だからなのか私が構ってあげてるからなのか普段より明らかにお酒を飲むペースが速い。

「いつ見ても綺麗な髪だよね」

「ありがとうございます」

 こらこら。

 私はいいですけど、同じノリで他の人にやったらセクハラになりますよ。

 飲み会もそろそろ終了。

 彼は大分酔っぱらっているみたい。

 私も今日は大分飲んじゃった。

 次行く所もこういう居心地いい所だといいなぁ。

 清算が終わって店の外に出ると、アルコールが入っていてもまだ少し寒い。

 道で寝たら風邪ひくどころか死んじゃうかもしれないなぁ。

 そんなことを思っていると、藍さんが彼に肩を貸しながら出てきた。

「本人は歩けるって言うけどちょっと心配なので送っていこうかと」

 たしかに途中で倒れちゃったら大変だもんね。

 ……藍さんにも彼にもお世話になったし、最後ぐらいもう少し付き合ってあげようか。

「藍さん、私が送っていきますよ」

「あ、いいの?じゃあお願い。でも狼に食べられちゃうかもよ」

「狼はぐでんぐでんになってますよ」

 藍さんに変わって、彼に肩を貸す。

 うーん、私がちっちゃいせいで逆に歩きづらそうだ。

 まあ、いいか。

 道を教えてもらいながら彼の家に到着する。

 普通の一軒家で一人暮らしにしては広そう。

 玄関のドアの前まで来たので声をかける。

「ここまでくればもう大丈夫ですよね?」

 反応がない。もしかして酔いつぶれちゃった?

 そう思っていると突然彼が私を抱きしめた。

「宮本さん、かわいい、かわいすぎるよ」

「ちょ、ちょっと」

 いきなりのキス。

 その上ギュッと抱きしめられたのに怖さより安心感がある。

「ずっと好きだったんだ、もう会えなくなるなんて嫌だ」

 愛の告白をしてまたキスをしてきた。

 私もお酒が入ってるせいかあんまり怒ろうと思えない。

 むしろ(ようやく私のことを好きって言ったね)って気分。

「奏、愛してる」

 そんなことを考えていたら突然の名前呼びと愛してるのコンボ。

 それをキスしながら言うのはずるいと思う。

 一生懸命唇を合わせてくるけど舌は入れてこないなぁ。

 ……こっちから入れちゃえ。

 舌を入れると彼が目を見開き、すぐに私の舌を舐め回し始めた。

 あ、お酒の味がする。甘くておいしい。

 玄関でキスしているこの状況、どう見ても恋人同士だよね。

 彼が私を抱きしめる力も強くなってる。嬉しそうだ。

 でもやっぱり外は少し寒いな。

「今、鍵を開けるから」

 彼も寒いと思ったっぽい。

 私を抱きかかえたままドアの鍵を開けて中に連れていかれる。

 そしてそのままベッドに押し倒された。

「奏、奏」

 ずっと私の目を見て名前を呼んでキスをしてくる。

 でもキスばっかり。普段あんなに見ていた胸は触ってこない。

 なので彼の目に語りかける。「いいよ」って。

「奏!!」

・・・

 行為が終わった後。

「もう離さない、奏」

 そういって、そのまま覆いかぶさったまま動かなくなった。

「あれ?おーい」

 ……寝ちゃってる。大分お酒入ってたもんね。

 語彙力がなくなったんじゃなくてお酒で思考力がなくなって本能のままだったんだね。

 ふふ、本能のままなのに私を気遣ってたのが彼らしい。

 そういえば子ども出来たらどうしよう。

 まあその時は責任取ってもらいますか。

・・・

 退職日が迫ったある日。

 藍さんが心配そうに声をかけてくれた。

「転職先は決まったの?」

 私はニコっと笑って婚約指輪を見せる。

「決まりました、永久就職です♪」

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  • 新しい派遣先の上司が私のことを好きすぎた件   4. 転職先

     そんなこんなで入社1年ほどたったある日。 部長から呼び出された。  めったにないことなので緊張する。「申し訳ないけど今期末で契約満了とさせてほしい」 どうも新しい人を入れるために派遣社員を減らすらしい。「高橋君も頑張っていたんだけど、上がどうしても新卒じゃないと駄目と言ってね」 「そうですか……わかりました」 けっこう居心地の良い職場だったのに残念。  でも彼は私がいなくなったら泣いちゃうんじゃないかな。 少し早いけど送別会が開かれることになった。  他にも転勤や退職する人がいるのでまとめてやるらしい。「宮本さん、お疲れ様」 「おつかれさまです」 いつものように彼が話しかけてくる。「ごめんね、頑張って交渉もしてみたんだけど……」 肩を落としてしょんぼりした様子で話している。  藍さんから「正社員を増やすなら宮本さんを正社員にすればいい!!」と啖呵きっていたと聞いた。  まあ派遣社員をわざわざ正社員にする会社なんて珍しいよね。「まあ飲みましょうよ」 「ああ」 頑張ってくれたみたいだし最後ぐらい構ってあげよう。  最後だからなのか私が構ってあげてるからなのか普段より明らかにお酒を飲むペースが速い。「いつ見ても綺麗な髪だよね」 「ありがとうございます」 こらこら。  私はいいですけど、同じノリで他の人にやったらセクハラになりますよ。 飲み会もそろそろ終了。  彼は大分酔っぱらっているみたい。  私も今日は大分飲んじゃった。  次行く所もこういう居心地いい所だといいなぁ。 清算が終わって店の外に出ると、アルコールが入っていてもまだ少し寒い。  道で寝たら風邪ひくどころか死んじゃうかもしれないなぁ。  そんなことを思っていると、藍さんが彼に肩を貸しながら出てきた。「本人は歩けるって言うけどちょっと心配なので送っていこうかと」 たしかに途中で倒れちゃったら大変だもんね。  ……藍さんにも彼にもお世話になったし、最後ぐらいもう少し付き合ってあげようか。「藍さん、私が送っていきますよ」 「あ、いいの?じゃあお願い。でも狼に食べられちゃうかもよ」 「狼はぐでんぐでんになってますよ」 藍さんに変わって、彼に肩を貸す。  うーん、私がちっちゃいせいで逆に歩きづらそうだ。  まあ、いいか。 道を教えても

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