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第16話

Author: 平坂果音
枝里は、とっくに彼を愛していなかった。ただ、彼がその現実を受け入れたくなかっただけ。

翔真の胸には、どうしようもない絶望が渦巻いていた。それでも彼は、事実を拒み、必死に否定した。

美羽の首を狂ったように締め上げたその目は、怒りと執着に染まっていた。

「黙れ!そんなこと言うな!枝里は俺を誰より愛してるんだ!お前なんか、今すぐ俺の前から消えろ!」

冷たく鋭いその声が、まるで氷の刃のように美羽の胸を突き刺した。

彼が壊れるより先に、彼女の心はもう砕けていた。

これまで積み上げてきたすべてが、枝里の名前ひとつに霞んでいく。

彼にとって、枝里はそれほどまでにかけがえのない存在なのか。

呼吸もできず、顔を真っ赤に染めながら、美羽は必死に翔真の手を叩いた。

死が迫るその瞬間、ふいに力が抜け、彼の手が離れた。

咳き込みながら空気を必死に求める美羽の瞳からは、もはや光が消えていた。

すべては、自分の勘違いだった。

彼の優しさは愛ではなく、ただの慰めであり、幻想だった。

ならば、せめてその幻想の代償を彼自身にも味わわせてやりたい。

美羽はスマホを取り出し、枝里とのメッセージ履歴
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