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第604話

Auteur: フカモリ
大げさに同情を引こうとする信行に対し、真琴は穏やかな声で、何事もなかったかのように返した。

「それなら、早く帰って休むことね。もし運転がキツいなら、武井さんを呼んで代わりに走らせればいいわ」

真琴のその素っ気ない態度に、信行は首を巡らせて彼女をじっと見つめた。

しばらく無言で視線を注いだ後、ゆっくりと口を開く。

「お前……今は本当に薄情になったな。よくそんな冷たいことが言える」

責めるような言葉に、真琴はシートベルトの金具をカチャリと外し、焦る様子もなく言い返す。

「あなたに比べれば、まだまだ足元にも及ばないわ」

信行と関わる中で、真琴は過去を蒸し返す気など毛頭なかったし、身分を認めて彼と昔のように向き合うつもりもなかった。

信行があまりにも身勝手で、執着してくるだけだ。

だからこそ、彼女も遠慮はしない。

これまでの経験から嫌というほど学んでいた。図々しい人間を相手にする時は、こちらも気を使ってなどいられないのだと。

感情の波を一切見せない真琴に対し、信行はそっと彼女の手を掴み、小声で囁いた。

「もう少し一緒にいてくれ。それか、お前の部屋に上げてくれてもいい」

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