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第4話

Auteur: オレンジ
部屋のドアが再び開き、ナース服を着た女性が念入り周囲を見回してから、書類を彼女の手に押し込んだ。

「夏目さん、誰か恨みでも買ったんですか?こんなにひどい重傷があるのに、上からはあの方に見せるように偽の検査報告書を作るよう指示されてるんですよ。

これがあなたの本当の報告書です。気管に古傷がありますし、胃の中にも異物が残留しています。手術で取り出して検査する必要があります」

看護師はそう言うと、すぐに去っていった。

汐は真っ白な壁を見つめ、ぼんやりしていた。

気管の傷は、刑務所に着いたばかりの頃、集団で無理やり異物混入の食事を飲み込まされた時に負ったものだ。

あの日、彼女はたくさんの血を流した。

彼女は昔のことを思い出した。自分のカバンを奪われ、脚に傷を負ったあの時のこと。

彼女の脚の傷口を見て、研一の目には心痛みがあふれていた。

彼は一晩中、彼女をぎゅっと抱きしめ、謝り続けた。

あの日以来、彼は毎日、わざわざ反対方向から車を走らせ、彼女を仕事の後に迎えに来てくれた。

片道40分の道のり、春から冬まで、一度も不平を言わなかった。

それが今では……

汐は検査結果を嘲笑うように一瞥した。

バカだったのは自分だ。

男の口にする「愛」が一生続くものだと、本気で信じていたなんて。

汐は手術が必要だった。しかし手術費用を支払うお金がなく、仕方なく研一に電話した。

だって、以前仕事で得たお金は、全てまだ研一が握っていたから。

しかし、研一は「手術」という言葉を聞くや、呆れたように笑った。

「汐、まだ演じてるつもり?酒を数杯飲んだだけで、手術だなんて。俺の方だっててんてこ舞いなんだよ。これ以上、迷惑をかけないでくれ!」

電話の向こうではざわついた音がし、間もなく、先ほどまで自分を厳しく叱責していた同じ男が、優しい口調で裕美を安心させている声が聞こえてきた。「裕美、生理中だろう?これは食べちゃダメだよ。いい子だから、言うこと聞いて」

たとえ研一に完全に愛想を尽かしていたとしても、この瞬間、汐の心は紐でぎゅっと縛り上げられたように、息が詰まるような鈍痛が走った。

泣くことさえできず、彼女はただ嗤笑うしかなかった。

笑いに笑って、もう笑う気力も尽き果てるまで。

手術費用は、元獄友の藤沢恵(ふじさわ めぐみ)が支払ってくれた。

恵は彼女の見すぼらしい姿を見て、タバコに火をつけ、彼女の口にくわえさせた。

しばらくして、哀れんで怒るような口調で言った。「あなたってば、マジでどうかしてるよ?そんな男、出所してまでわざわざ探すことあんの?」

煙が輪をくぐりながら漂う中、汐の濁った瞳がじっと見つめる。

長い時間をかけて、彼女はそっと口元をゆるめた。

「私がまだ彼を愛していると思う?」

「そうじゃないの?私があなただったら、とっくにあのカス男とクソ女をぶん殴るわ!」

汐は目を細めて笑った。

「それだけじゃ、足りないでしょう?」

研一は彼女の人生をめちゃくちゃにし、世間から嫌われ、蔑まれるような立場に追いやってしまった。

それなのに、彼は相変わらずの『長坂家の御曹司』で、『長坂弁護士』だ。

裕美もこの三年で、彼と肩を並べる女性弁護士になった。

自分たちの血肉の上に立って、賞賛を浴びる存在になった二人のことを、果たして誰が知っているだろうか。

彼女は自分が受けたこれらの屈辱を決して忘れない。研一と裕美を這い蹲る泥の様な存在に引きずり下ろしてやる。

「恵、戸籍課の人、知り合いだったよね?」

恵は驚いたようにこっくりと頷いた。

「恵、もう一つだけお願い。一月後、私に関する全ての情報、夏目汐という存在を抹消してほしいの……」

汐が本当に手術を受けたことを知り、研一は真っ先に病室に駆けつけた。

彼はわざわざ専門家を手配し、汐の胃から取り出された腫瘍の分析をさせた。

食事の世話から身の回りのケアまで、彼女をお姫様のように寵愛した。

検査結果が良性であると分かるまで。

彼は安堵のあまり、汐をぎゅっと抱きしめた。

汐はその時、初めて彼の震える体に気づいた。

滑稽に思え、思わず嘲笑の言葉が口をついた。「私が手術するって信じてなかったくせに、今さらそんなに怖がるの?」

研一は彼女が怒っていることを理解していた。

彼は彼女の両手を掴み、自らの薄い唇に当てながら、心配と懊悩の入り混じった眼差しで見た。

「汐、偽の報告書を作った奴はもう突き止めた。あれは裕美の友達で、裕美の憤りを晴らしてやろうとしてやった馬鹿げた行為なんだ。もうきちんと罰してやったよ、お前の代わりに恨みを晴らした。これで――」

汐は忽然と顔を上げ、彼と見つめ合った。

「どう罰したのか、教えてくれない?」

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