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第35話

last update publish date: 2026-01-23 19:00:00

「ええ。卑怯です」

正直に答えると、氷室様は少しだけ目を伏せた。

「……すまない。だが、他に方法がない」

私は唇を噛んだ。

「もし引き受けてくれるなら、報酬は上乗せする。月給150万でどうだ」

「え……」

「足りないか。なら200万」

「そういう問題じゃ……」

私は混乱していた。頭の中が、ぐちゃぐちゃになっている。

金、金、金って。私の誠意も、この家で過ごした時間も、彼にとっては全て数字で解決できるものだったんだ。

目の前のこの人は、私を「心を持った人間」として見ていないの?

「君の家族のことも、考えた」

氷室様は、続けた。

「旅館の修繕費。父親の薬代。全て、俺が負担する」

「……っ」

「1年後、契約が終わったら君は自由だ。好きなところで、好きな仕事をすればいい」

氷室様の目は、真剣だった。でも、どこか寂しそうだった。

私は、言葉が出なかった。喉

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