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第9話

Author: 南杏
それでも、雪枝は諦めなかった。

まるで狂ったように、かつて俺の偽装死を手助けした人物の行方を追い続けた。

その人物さえ見つければ、時間を巻き戻し、俺をもう一度生き返らせられると信じていた。

そしてついに、わずかな手がかりを頼りに、西南の国境地帯まで辿り着く。

彼女はその日のうちに飛行機へ乗り、現地へ向かった。

だが、そこにいたのは世捨て人でも怪しげな術師でもなかった。軍服をまとった、一人の老兵だった。

雪枝はその場へ膝をつき、深く頭を下げた。

「お願いします……裕人がどこにいるのか、教えてください」

老人は静かに首を横へ振った。穏やかな口調だったが、その言葉に揺らぎはなかった。

「昔、あの子を助けたのは、父親に命を救われた恩があったからだ。

だから死亡証明書を偽造し、身を隠す手助けをした」

雪枝の瞳に、わずかな希望が宿る。

「でしたら今回は……」

「今回は無理だ」

老人は彼女の言葉を遮った。

「前は生きていた。だから隠すことができた。だが今回は違う。私は、死人を生き返らせることはできない」

そう言うと老人は、一つの封筒を彼女の胸元へ投げ渡した。

「自分
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  • 来世では、他人のままで   第9話

    それでも、雪枝は諦めなかった。まるで狂ったように、かつて俺の偽装死を手助けした人物の行方を追い続けた。その人物さえ見つければ、時間を巻き戻し、俺をもう一度生き返らせられると信じていた。そしてついに、わずかな手がかりを頼りに、西南の国境地帯まで辿り着く。彼女はその日のうちに飛行機へ乗り、現地へ向かった。だが、そこにいたのは世捨て人でも怪しげな術師でもなかった。軍服をまとった、一人の老兵だった。雪枝はその場へ膝をつき、深く頭を下げた。「お願いします……裕人がどこにいるのか、教えてください」老人は静かに首を横へ振った。穏やかな口調だったが、その言葉に揺らぎはなかった。「昔、あの子を助けたのは、父親に命を救われた恩があったからだ。だから死亡証明書を偽造し、身を隠す手助けをした」雪枝の瞳に、わずかな希望が宿る。「でしたら今回は……」「今回は無理だ」老人は彼女の言葉を遮った。「前は生きていた。だから隠すことができた。だが今回は違う。私は、死人を生き返らせることはできない」そう言うと老人は、一つの封筒を彼女の胸元へ投げ渡した。「自分で見なさい。これは、あの子がお前に伝えられなかったものだ」雪枝は震える手で封を切った。中に入っていたのは、1枚だけの危篤通知書だった。記された日付は――5年前。俺が高層階から転落した、あの日。その瞬間、彼女は理解した。あの時の俺は、本当に死の淵を彷徨っていたのだと。涙がぽたりと地面へ落ちる。一滴、また一滴。水たまりが広がっていく。長い間抑え込んでいた泣き声が、ついに溢れ出し、雪枝は胸が張り裂けるような思いで泣き崩れた。帰宅した彼女は、俺の遺体を火葬した。盛大な葬儀は行わなかった。静かに、二人用の墓を1基だけ購入した。墓碑には俺の名前が刻まれ、その隣の空白は、彼女自身のために残されていた。納骨の日。空からは冷たい雨が降り続いていた。その頃、絵夢は高熱を出し、意識を失っていた。再び目を覚ました時には、重い自閉症を患っていた。誰が呼びかけても返事をしない。食事も摂らず、泣くことも騒ぐこともない。魂を失った人形のように、ただ静かに座っているだけ。それでも、「パパ」という二文字だけは違った。その言葉を耳にした時だけ、空っぽだった

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