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第2話

作者: 佳乃
意識は14年前のあの頃へと引き戻されていく。

あの年、俺は13歳、姉は21歳だった。

両親が交通事故で亡くなり、後に残されたのは莫大な桐生家の財産と、それを虎視眈々と狙う無数の親戚たちだった。

当時の姉は、まるで我が子を守る狼のようだった。

俺をその背にしっかりと庇い、すべての重圧をたった一人で背負い込んだ。

葬儀の席で、泥酔した親戚が俺を指さして罵声を浴びせてきた。

「この疫病神め!お前さえいなければ、あいつらが死ぬこともなかったんだ!」

その瞬間、姉はそいつを勢いよく突き飛ばした。

「私の弟に指一本でも触れてみなさい。死ぬより辛い目に遭わせてやるわ」

その日の夜、彼女は涙でぐしゃぐしゃになった俺を強く抱きしめ、何度も何度も囁いた。

「蒼夜、もう怖くないわ。姉さんがいるからね。一生、姉さんがあなたを守ってあげるから」

俺はその言葉を信じた。

俺たちはこの先もずっと、こうして支え合って生きていくのだと、そう思っていた。

だが、腹違いの弟である桐生朔久(きりゅう さくひさ)がやってきてから、すべてが変わってしまった。

あいつは体が弱かった。だから姉は、「あっちの方が日当たりがいいから」と言って、俺の部屋をあいつに与えた。

あいつがお手伝いさんの作ったご飯を食べたがらないと、姉は毎日あいつを連れて外食に出かけた。

あいつが一人で寝るのを怖がれば、姉はあいつが眠りにつくまでベッドの傍に付き添った。

俺の大学受験まで残り1ヶ月という時、朔久が珍しい肝臓の病気にかかり、危篤状態に陥った。

姉は半狂乱になった。あいつを連れて全国の有名な病院を駆け回り、ありとあらゆる専門医を訪ね歩いた。

最終的に、医師から提示された選択肢は二つ。

ドナーを待つか、生体肝移植か。

ドナーを待てば1年や2年はかかるかもしれないが、あいつにそんな時間は残されていない。

生体肝移植には、血液型が適合する直系親族が必要だった。

そして桐生家の中で、あいつと血液型が一致するのは俺だけだった。

姉が俺のところに話をしに来たとき、俺は受験に向けた最後の追い込みをしていた。

「蒼夜」彼女の口調は、いつになく柔らかかった。「朔久のこと、知ってるわよね」

俺は黙っていた。

「お医者さんが言っていたわ。あなたの肝臓が一番適合率が高いって」

俺は参考書のページを一枚めくった。

「朔久が死んじゃうのよ」彼女の声は微かに震えていた。「お願い、朔久を助けて」

俺はようやく顔を上げ、彼女を見つめた。

「姉さん、覚えてる?前に俺が病気で寝込んだとき、姉さんが何をしてたか」

彼女は虚を突かれたように固まった。

「俺が40度の高熱を出して、たった一人で2日間も部屋で寝込んでいたのに、誰も見向きもしなかった。姉さんは?朔久と一緒に買い物に出かけてたよな。あいつが『気分が沈んでるから』なんて理由で」

彼女はハッとして口を開いた。「蒼夜、あの時は私が悪かったわ……」

「それから」俺は彼女の言葉を遮った。「俺が階段から突き落とされたあの時のこと、覚えてるか?

俺が『朔久に突き飛ばされた』って訴えたとき、姉さんは何て言った?

『自分の不注意のくせに、それを朔久のせいにしようとしないでよ』って言ったよな」

彼女の顔からサァッと血の気が引いた。「蒼夜……」

「あいつを助けてほしいのか?」俺は立ち上がり、彼女を見下ろした。

「いいだろう。だが、これで貸し借りはなしだ。俺はもう桐生家の人間じゃないし、お前も俺の姉じゃない!」

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