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第12話

Auteur: 桜庭蒼
「美咲ちゃん……」恭介は、自分の胸を締めつけるこの衝動に驚いていた。

結婚して何年も経つというのに、まるで恋に浮かれた若い頃に戻ったみたいで、彼女に会いたい気持ちを抑えきれなかった。

家の中は灯りがついていない。外の街灯が窓から差し込み、広いリビングをまだらに切り取っていて、どこか冷え冷えとして見えた。

「美咲ちゃん、帰ったよ」

けれど、いつもなら車椅子で迎えに出て、微笑みながらバッグを受け取ってくれるはずの彼女が、今日はどこにもいない。

鍵を置こうとした手がふと止まる。

美咲は毎日散歩に出るから、いつでも取りやすいように玄関に鍵を置いていた。

なのに――そこは空っぽだった。

胸がざわめき、恭介は我を忘れて彼女の部屋へ駆け込んだ。

ドアを開けると、部屋はきちんと整えられていて、クローゼットは半開きのまま、中は空っぽだった。

何も残っていなかった。

恭介はその場に崩れ落ちるようにベッドに腰を下ろし、うわごとのように呟いた。

「……ありえない。いつ出ていったんだ?」

震える手で携帯を取り出し、何度も深呼吸してから、指が覚えている番号を押す。

だが、返ってきたのは冷たい機械音だった。「おかけになった番号は、現在使われておりません」

「そんな……」

真っ赤に充血した目で、何度も番号を確認し、何度もかけ直す。

それでも、繋がることはなかった。

彼女は番号を消してしまったのだ。

呆然と座り込み、ぶつぶつと独り言のように言う。

「きっと怒ってるんだ……だから帰ってこないんだ……」

次の瞬間にはもう車のキーをつかみ、飛び出していた。ハンドルを握る手は震え、車は速度を上げて曲がりくねった山道へ。

真っ暗な山のふもとには人影一つない。

恭介は後悔で胸を掻きむしりたくなった。あの時、自分はなんて残酷なことをしたのか。障害を抱えた彼女を、この山に一人置き去りにするなんて。

「美咲ちゃん!どこだ!美咲ちゃん!返事してくれ……」

声を枯らして叫んでも、答えてくれるのは風に揺れる木々の影の音ばかりだった。

夜通し必死に探し回り、最後は地面に膝をついて、涙声で呟く。

「美咲ちゃん……本当に悪かった。お願いだ、戻ってきてくれ……」

翌朝。

美和の車が会社に着いた途端、突然ボロボロの姿の男がフロントに飛びかかり、窓を叩き始めた。

あまりの必死
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