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第9話

Auteur: ポコニャン子
一方、美月は無事にカナダに到着した。遠くから両親が大きく手を振っているのが見えた。

久しぶりの家族との再会に、美月は小走りで駆け寄り、両親の胸に飛び込んだ。

「お父さん、お母さん!久しぶり、会いたかった!」

「よく来たね。やっと一緒にいられるよ」

父が荷物を受け取り、母は目に涙を浮かべながら娘を抱きしめた。

「さあ、10時間のフライトで疲れただろう?家で休むか、それとも何か食べに行くか?」父が優しく尋ねた。

美月は機内で7、8時間眠っていたので、両親との再会で元気いっぱいだった。両親の腕を取り、こう答えた。

「先に食事に行きましょう。まだ全然平気だよ」

両親は娘の希望に従い、3人で仲良く空港を後にした。

携帯ショップの前を通りかかると、美月は立ち止まり新しい携帯を購入した。母は少し驚いて尋ねた。

「前の携帯はどうしたの?新しいのを買ったら、日本の友達と連絡が取れなくなるんじゃない?」

美月は笑いながら首を振った。

「前のは忘れちゃったけど、大丈夫。もう国内に連絡を取る相手はいないから」

母は一瞬驚いたが、すぐに納得した。娘はこれからカナダに住むのだから、戻らないだろう。

せっかく帰ってきたのだから、もう美月を一人で帰すわけにはいかない。

両親は美月のためにお金を送り、ビデオ通話で気遣ってきたが、やはり娘が一人暮らしをしているのは心配だった。

母は父と目を合わせ、互いに微笑んで美月の頭を撫でた。

「そうね。これからはずっと一緒だよ。どこにも行かせないからね」

美月は心が温かくなり、両親をぎゅっと抱きしめて大きく頷いた。

父も話に加わった。

「お母さんがプレゼントを用意してるんだ。

久しぶりの帰国だから、お前の部屋を新しくしたんだよ。

中の物は全部自分たちで選んだし、小さい頃好きだったぬいぐるみも買ったんだ。

今も好きかどうか分からないけどね」

父のそんな話に、美月は目を細めて笑った。

「パパとママが選んでくれたものなら、何でも大好きだよ!」

その言葉に、3人はまた笑い合い、心は温かさで満たされた。
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