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第1245話

Penulis: 夏目八月
この爆弾的な告発は、帝師を崇拝する者たちの怒りを買った。

帝師と相良左大臣は大和国を代表する大学士として並び称されていたが、相良左大臣は朝廷から退き、政治的影響力も手放していた。そのため、かつて孫娘の相良玉葉が噂の的になった際も、相良家のために声を上げる者は少なかった。

一方、斎藤帝師は違った。息子は今なお式部を掌握している。真相も知らぬまま、斎藤家に取り入ろうとする官僚たちは、朝議で声高に広陵侯爵家の流言飛語を糾弾し、厳しい処罰を求めた。

この騒動も大事には至らなかったかもしれない。だが南風楼で捕まった官僚や名家の子弟たちは、天皇陛下のご配慮で表立っての処罰は免れたものの、民衆の口は容赦なく、街のあちこちで噂の的となっていた。

自分たちへの非難の矛先を逸らすため、彼らは必死になって新たな騒ぎの種を探していた。

それから二日と経たぬうちに、南風楼の下働きたちが証言を始めた。斎藤帝師は確かに常連で、数日おきに姿を見せ、時には荒れ狂う嵐の夜すら足を運んでいたという。

事態はもはや収拾がつかないところまで来ていた。当初は激怒していた清和天皇だったが、穂村宰相の進言を受け入れることとなった。事実を隠し通すことは得策ではない。それに、先帝にも本当の師がいたはずだ。その方を帝師として祀ることで、先帝の面目も保たれるというのだ。

かくして、すでに白骨となっていた青龍雲徳が帝師の位を追贈され、その位牌は皇室の御霊屋に移された。

雲徳には後継ぎがいなかった。文利天皇の治世七年に科挙第三位となった彼は、学識深く、才気溢れる人物だった。わずか二年の在官の後、辞職して四海を巡る旅に出た。

都に戻った際、文利天皇は皇太子——今の先帝——の教育を託した。しかし、雲徳は落ち着きのない性分で、二年ほど教えた後、再び辞職して旅立っていった。

奔放な性格の持ち主だった雲徳は、時弊を鋭く突いた文章を書き、その激烈な筆致ゆえに疎まれることも多かった。そのため後に詩作に転じ、数多くの詩集を残した。今なお千首以上の詩が世に伝えられている。

詩人としての名声も高く、その死に際しては先帝自らが追悼の詩を詠んでいる。今となっては、帝師の位を追贈し、御霊屋に祀ることも道理に適っていた。

清和天皇のこの決断には、もう一つの理由があった。太后の進言——「斎藤家の枝葉が繁りすぎた。剪定の時期だ」とい
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