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第1352話

Penulis: 夏目八月
連日の議事に参加したさくらは、宰相の言葉を身をもって理解していた——人の数だけ意見があり、誰にもそれなりの道理がある。延々と議論を重ね、賛同や反対を得ても、事態は一向に明確な方向を見出せない。

もはや議事に加わるべきではないと彼女は悟った。数日間、諸々の意見に翻弄され、どう歩を進めるべきかも分からなくなっていた。

その上、天皇の病も完全には回復せず、咳が続いている。無理に気力を奮い立たせている隙に、この機に乗じて皇太子冊立を煽る者まで現れた。

提案したのは斎藤式部卿の門下生、若い官僚たちだった。かつて皇后に取り込まれ、皇太子の件で尽力するよう言い含められていた彼らが、天皇の病気と内憂外患を見て、早急に国本を定めるべきだと言い出したのである。

斎藤式部卿は怒りで顔を青くし、御前で必死に反対したが、それがかえって策略と受け取られるか、必死に責任逃れをしているようにしか見えなかった。

この件で清和天皇は再び喀血し、一同を狼狽させ、事態は極度に混乱した。

さくらは練兵を口実に、宮中での議事を避けるようになった。

邸に戻って有田先生と深水師兄にこの件を話すと、有田先生も眉を寄せて言った。「皇后は謹慎中のはず……なぜまだ政局を攪乱できるのです?今この時期にこんな騒動を起こすなど、ご自分と斎藤家を火あぶりにかけるようなものでしょう」

斎藤家と皇后がどうなろうと、さくらの知ったことではない。だが本来なら文武百官が心を一つにしているべき時に、この件で足並みが乱れてしまった。

深水が口を開いた。「私はむしろ疑っている——この時期の皇太子冊立提案こそ、寧世王の策略ではないかと。皇后が取り込んだ連中の中に、寧世王の手の者が紛れ込んでいる可能性は?奴は人心掌握に長けている」

有田先生は考えを巡らせた。「それも不思議ではありませんな。大皇子は凡庸、今冊立したところで帝はお喜びにならない。とはいえ諦めてもおられず、潤お坊ちゃまに読書のお相手をさせ、相良左大臣までお招きして丁寧にお育てになっている。こんな火急の折に提案すれば、帝のお怒りは必至。一度勅旨が下って皇后の望みが絶たれれば、まさに水泡に帰すでしょう」

「斎藤家も巻き添えを食う」深水が微かに嘆息した。「以前聞いた話では、皇后は聡明で道理をわきまえた女性、才女として都にその名を轟かせていたというのに……なぜこれほど軽率な
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