Share

第973話

Author: かんもく
もともと二人は青山でバカンスを過ごして、関係を深める予定だった。だが一夜明けた途端、命に関わるような危険に巻き込まれてしまった。

「瞳が今朝一番に電話してきて、昨日の夜とわこからメッセージがあって、奏と再婚するって決めたって!」マイクはそのニュースに興奮していたが、それからわずか30分後、二人が青山で危険な目に遭ったことを知った。「でも無事でよかったよ、本当に」

「これは一郎を呼び戻して一緒に盛り上がらないと!」子遠はスマホを取り出し、海外出張中の一郎に連絡しようとした。

マイクは腕時計を見て立ち上がる。「俺、蓮の学校に行ってくる。この話、突然すぎるから、事前に伝えておかないと夕方家に帰ったときにショックが大きすぎるかもしれない」

子遠はマイクの腕を掴んで頼み込む。「お願いだ、蓮を説得してやってくれ。社長ととわこ、ここまで来るのに本当に大変だったんだ。やっと一緒になれるって決めたんだから、蓮の反対でダメになったら辛すぎる」

マイクはうなずいた。「大丈夫、分かってる。それに蓮は、そんな理不尽な子じゃない。あれだけ奏を憎んでるのも、奏が手加減なしだったからだろ?」

子遠はバツが悪そうに苦笑した。「うん、社長、レラと蓮が自分の子だって知らなかった時期は、本当に手がつけられないくらい短気だった。でも今はすごく変わった。これからは、絶対に子どもたちを大切にするよ」

「分かってる。任せとけ、蓮にはちゃんと話す」マイクは真剣にうなずいた。

夕方、館山エリアの別荘。

とわこと奏が無事に帰ってきたことを祝って、みんなが集まり、ちょっとしたパーティーが開かれた。

とわこは、蓮が奏に会っても部屋に引きこもらなかったことに驚いた。

全員が席につき、ディナーが始まった。

とわこは二人の子どもたちに視線を向けた。「蓮、レラ、ママから二人に話したいことがあるの」

レラの澄んだ瞳が彼女を見つめた。「うん、ママ。パパと結婚するんでしょ?それってママが自分の結婚相手を決めることでしょ?私たちの旦那さんを選ぶわけじゃないんだから、私たちに許可取らなくていいよ!」

蓮も静かに頷いた。

とわこ「......」

あまりにあっさりした二人の反応に、とわこは逆に戸惑った。

こんなにスムーズで、本当に現実なのかと疑ってしまうほどだった。

「ありがとう。でも、ママはやっぱりちゃんと
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter
Comments (1)
goodnovel comment avatar
シマエナガlove
今度は誰? っていうか 結局痴話ケンカじゃん 好きなら最初から離婚しなければ よかったのでは?
VIEW ALL COMMENTS

Latest chapter

  • 植物人間だった夫がなんと新婚の夜に目を開けた   第1095話

    「他人が何を言おうと、気にしなくていい」そう言って彼は彼女の小さな手を握り、抱き寄せ、顎を彼女の頭にこすりつけた。「ご飯、もう食べた?」「うん、食べたよ」彼の身体から薬品の匂いがして、彼女は少し不満げに呟いた。「朝はあまり食べてなくて、お昼すごくお腹すいてたから、しっかり食べた」「そうか」「和夫のこと大丈夫?重症になってない?」彼女は不安そうに聞いた。彼が和夫を見たとき、まるで我を忘れたような様子だったから。手加減せずに殴って、大事になっていたらどうしようと心配だった。「さあな。たぶん、まだ生きてる」彼はかすれた声で言った。「アイツさえいなければ、こんな面倒は起きなかった。アメリカで大人しくしてて、金を要求するだけなら、こんなに怒らなかった」「確かに、あの人は父親として最低だよ。でも奏、もう怒らないで。あの人がこれからどうなろうと、私たちには関係ないよ」「ああ」病院。和夫の身体は傷だらけだったが、幸い命に別状はなかった。医師が応急処置をしたあと、入院を勧めたが、和夫は「動ける」と言って入院を拒否した。病院を出ると、和夫はすぐに電話をかけた。相手は哲也。「すぐに病院に迎えに来い!」哲也「今、桜と一緒に空港に向かってるとこだ」「ふざけんな!オレの言うことが聞けねえのか?今すぐ来い!でなきゃ二度とオレの顔見れねぇと思え!」和夫は怒り心頭だった。もちろん、奏に殴られたからだけではない。殴られた時、自分も奏に二発お返しした。でもそのせいで、気持ちは余計に複雑だった。今、奏は常盤家から攻撃され、ネット中で叩かれて、顔も上げられない状況だ。こんな状態じゃ、これから金を無心するのも簡単にはいかない。こんなことじゃ困る。奏はもう常盤家の人間じゃない。今や、白鳥家の血を引く者だ。これは白鳥家と常盤家の戦いなんだ!和夫としては、白鳥家を負けさせるわけにはいかない。午後四時。和夫はある番号に電話をかけた。今の奏は、自分を憎んでいる。直接話すのは無理だ。だから奏の側近に話を通すしかない。和夫が調べたところ、奏の一番近くにいて信頼されているのは一郎だった。一郎は常盤グループの財務を握っていて、間違いなく影響力がある。和夫は電話をつなげ、自分の身分を明かしたうえで、自分の計画と要求を話した

  • 植物人間だった夫がなんと新婚の夜に目を開けた   第1094話

    「社長、招待客はみんな宴会場に移動しました」礼拝堂の外で、子遠がスタッフに聞いた情報を伝える。「よかったら、先に宴会場で食事をしませんか?とわこさんもそっちにいるかもしれませんし」奏はポケットからスマホを取り出した。画面にいつひびが入ったのか、割れていたが、操作には問題なかった。彼はとわこの番号を探し、発信する。すぐに通話が繋がった。「とわこ」「奏」ふたりは、同時に口を開いた。「今どこ?」「今どこにいるの?」再び、同時に言葉が重なった。数秒の沈黙のあと、とわこが先に答える。「別荘にいる。あなたは?」「今から行く。すぐに会いに行く」「うん」電話を切ったあと、とわこはようやく息を吐き出した。奏の声は、すでに落ち着きを取り戻していた。瞳が言っていたように、今日という日を乗り越えれば、二人の人生はきっとまた穏やかに進んでいく。もう何も、彼らを壊すことなんてできない。そう信じたかった。それから5分後、奏は別荘に戻ってきた。ふたりの視線が合った瞬間、どちらも言葉を失った。奏は、彼女がすでにウェディングドレスを脱ぎ、化粧も落とし、髪もセットし直していることに驚いた。今の彼女は、日常のロングワンピース姿で、見慣れた素顔をしている。そしてとわこは、彼の顔に包帯が巻かれているのを見て、思わず息を呑んだ。「結婚式、やめたの?」奏は落ち着かない様子で尋ねた。とわこは胸の奥が痛くなるのを感じながら、静かに言った。「奏、もう午後の2時過ぎだよ」「でも、何があっても式は挙げるって、約束しただろ?」「今のあなたの状態で、本当に式を挙げるつもり?服は汚れてるし、顔にはケガ。こんな姿でみんなの前に出て、誰かを驚かせたいの?もし本気で私と式を挙げたかったなら、せめて式が終わってから喧嘩してよ!」彼女は責めたくなんてなかった。でも、彼の方からこんなふうに訊いてくるなんて。彼女が礼拝堂で待ち続けていた時、彼は一秒でも彼女の気持ちを考えただろうか?奏は、自分が悪いと分かっているのだろう。何も言い返さなかった。「とりあえず服を着替えてきて。私、執事に昼食を運んでもらうよう頼むから」とわこは彼を寝室へと促した。「もう決めたの。式をやらなくてもいい。今日という日が、私たちの結婚記念日には変わりないん

  • 植物人間だった夫がなんと新婚の夜に目を開けた   第1093話

    子遠がまだ言い終わらないうちに、和夫がわめき始めた。「奏!てめぇこのクソガキ!人の話も聞かずに手ぇ出すとはどういうことだ!やるなら悟をぶん殴れよ!どうせ俺が親父だからって、加減してくると思ってるんだろ?ああ?情けねぇ!」奏は、和夫のパクパク動く口元を見て、心底うんざりしていた。その口から飛び出す言葉は、気持ちが悪い。もし、彼が黒介を連れて帰国して金をたかろうとしなければ、あの一連の悲劇は、そもそも起きなかったのだ。今ここにあるすべての混乱は、この男が蒔いた種だった。そんな自覚もないくせに、今日という日に乗り込んできて騒ぎを起こすなんて、もはや死に急いでいるとしか思えない!たとえ今日の結婚式が台無しになってもいい。だが、この男だけは絶対に許せない。二度と、調子に乗れないようにしてやる!一方、礼拝堂では。どれくらい時間が経ったのか、とわこは背後から聞こえてくる足音に気がついた。横目でそっと確認すると、マイクが戻ってきていた。「彼はどこに?」その一言は、思わず氷のような冷たさを帯びていた。こんなにも長く待っているのに、まだ彼は現れない。もしかして、もう来る気がないのでは?「ケガをして、病院に運ばれたよ」マイクは深いため息を吐いた。「とりあえず、食事をしよう」とわこの指先は、無意識にぎゅっと握られていた。本当は、彼の元へ駆けつけたい。でも、足が動かない。今はただ、ここに座っていたい。何も考えずに。「とわこ、気持ちは分かるけど、今日の状況じゃ、どう考えても式は無理だよ。せめてご飯を食べよう。式が中止になって、君まで倒れたら元も子もない」マイクは彼女の腕を掴み、連れて行こうとしたが、とわこはその手を振り払い、首を横に振った。「マイク、先に皆さんを食事に連れて行って」瞳が口を開いた。「結婚するのはあなたじゃないんだから、とわこの気持ちは理解できないでしょ」「分かった。じゃあ、先に行ってる」マイクは軽くため息をつき、招待客たちを宴会場へと案内していった。静まり返った礼拝堂には、とわこと瞳だけが残った。「とわこ、たとえ今日式ができなくても、あなたと奏はきっと幸せになれるよ」瞳はそっと隣に座って、優しく語りかけた。「今日は、本当にいろんなことが起きすぎた。もうこれ以上悪いことなんて起きない。だから大丈

  • 植物人間だった夫がなんと新婚の夜に目を開けた   第1092話

    リゾートの正門前。マイクと子遠は、和夫の突進力を甘く見ていた。普通の人なら、追い返されれば諦めて帰る。でも、世の中には絶対に引かない人もいる。和夫は、人生の大半をゴリ押しと逆ギレで生き抜いてきた男だった。彼は地面に腰を下ろして、大声で叫びながら暴れていた。実のところ、ボディーガードは指一本触れていない。というより、今日は事が事だけに、下手に手を出すことができなかった。なにせ、目の前の男は「奏の実の父親」だと名乗っている。そして、これ以上騒ぎが大きくなれば、近所の住民にまで知れ渡り、今日の結婚式が台無しになりかねない。奏が駆けつけた時、目に飛び込んできたのは、地面で転げ回っている和夫の姿だった。その瞬間、彼の体内を熱い怒りが一気に突き抜けた。今朝、悟と完全に決裂し、心の限界はとうに超えていた。そんな中、今度は和夫が結婚式を台無しにしに現れるなんて、まるで神様が、今日の彼に幸せを与える気など一切ないかのようだった。すでに世間では「極悪人」として指をさされている彼にとって、これ以上悪評が広がることなど、もはやどうでもよかった。「何しに来た?」奏はまっすぐ和夫の前に立ち、大声で問い詰めると、その襟首をガッと掴んだ。その様子を見ていた周囲の人々は、彼が次の瞬間、本気で殴りかかるのではと息を呑んだ。「お前が誰かにボコボコにされたって聞いてな!だから心配で来てやったんだよ」和夫は怒鳴り返した。「何だよこのクソガキ、人にやられた腹いせをオヤジにぶつけるってのか?さっさと手ぇ離せ!」とわこは声を出そうとしたが、喉が詰まったように何も言えなかった。彼がどれだけ怒りで満ちているか、すぐに分かった。今この感情を吐き出さなければ、きっと彼の心の中で何かが壊れてしまう。和夫は、まさに最悪のタイミングで地雷を踏んだ。「とわこ、先に礼拝堂へ行こう」マイクは、今後の展開があまりにも危険だと察し、彼女をその場から引き離した。奏の怒りは、もはや手がつけられそうになかった。マイクはとわこを半ば強引に連れて、礼拝堂へと向かう。荘厳で華やかな礼拝堂には、すでに多くの招待客が座っていた。マイクととわこが入ってくると、場の空気が一気にざわついた。式の開始時間から、すでに10分が経過している。司会者からは「式は30分遅らせる」と

  • 植物人間だった夫がなんと新婚の夜に目を開けた   第1091話

    「とわこが怖がってないのに、怖がる理由ある?」子遠は言い返した。「まさか、とわこに脳みそがないとでも言いたいわけ?」「お前らはそう思ってるかもしれないけど、世間は違うぞ。あの二人の子どもにだって影響あるかもしれないんだ」マイクは不安げに眉をひそめた。「奏が当時、どうして人を殺すことになったのか、その理由を説明してくれたら少しはマシになるのに」「社長が説明するわけない」子遠はきっぱり言い切った。「誰よりも他人に釈明するのが嫌いな人だ。でも、あそこまで極端な行動に出たからには、正当な理由があるはずだ。正当防衛とかさ」「そう、それは分かってる。でもさ、彼ってとわこにすら説明しないタイプでしょ?他人になんか、なおさら説明するわけない。とわこみたいに我慢できる人じゃなきゃ、到底付き合えないわ。あの頑固さ、今日ちょっとは懲りたんじゃない?」「まさか嬉しがってるのか?もし社長に罪があるなら、法が裁くだろ。でもな、今日の件は完全に仕組まれてた。組織的な嫌がらせだよ。絶対に奴らを許しちゃいけない。一人残らず、報いを受けさせてやる!」「まあ奏にとって、人生で初めての屈辱だったかもな。キツいわ」「いい加減にしろよ!」子遠は苛立って声を荒らげた。「彼はもうとわこの旦那なんだ。無事でいてもらわないと困る。じゃないと、とわこがもっと泣くんだよ!」「なんでいつも、とわこを盾にするんだよ?」「だって、とわこしか君を黙らせられないからな、いやなことばっか言う」しばらくして、マイクが薬箱を持ってとわこの元に戻った。「結婚式、30分遅らせた方がいいかもな。もうすぐ正午になるし」時計を見ながら、彼はとわこに提案した。とわこは少し考えたあと、コクリと頷いた。「彼に着替えさせたら、すぐ行くから」「それと、メイク直した方がいいよ。顔、泣き腫らしてる」マイクが小声で忠告した。「分かってる」彼女は薬箱を持って部屋に戻っていった。その頃、マイクは別荘の外に出て、司会者に式の延期を伝えに行こうとしていた。ちょうどそのとき、一人の警備員が慌てて走ってきた。「なんだよ、その慌てっぷり。何があった?」マイクが訊くと、警備員は困ったような顔をした。「別荘の入口に中年の男性が現れて、『自分は奏社長の父親だ』ってどうしても中に入れろって聞かないんです。招待状は持

  • 植物人間だった夫がなんと新婚の夜に目を開けた   第1090話

    ふたりは前に約束していた。たとえ悟がすべてを公にしたとしても、結婚式は予定通り挙げると。けれど今の彼の精神状態を見ると、とわこの胸は締めつけられるように痛んだ。結婚式を続けたい気持ちはある。でも、彼に無理をさせたくなかった。現地には多くの招待客が集まっていた。みんなが奏の知人友人ではあるが、今となっては、見世物を見るつもりで来ている者もいるかもしれない。そう思うと、とわこの心は乱れた。彼女の涙が、そっと奏のスラックスに落ちた。そんな彼女の顔を見て、奏がかすれた声で口を開いた。「泣かないで」その一言で、とわこの心が現実に引き戻された。「泣かない。もう、泣かないよ」そう言いながら、とわこは洗面所におたらいを戻し、クローゼットから新しいスーツのセットを取り出してきた。「もうここまで来たんだもん。ネットで広まった今となっては、怖がる必要なんてないよ」そう話しながら、ベッドにスーツを置き、彼のシャツのボタンを一つひとつ丁寧に外していった。シャツ自体は汚れてはいなかったが、しわくちゃだった。彼女は、奏にそんな姿でいてほしくなかった。何年もの間、彼はいつも気品あふれる貴公子だった。たとえ世間が彼を「殺人犯」と呼んでも、とわこの目には、今もなお冷静で気高い奏の姿しか映っていなかった。「奏、人が何を言おうと、私たちには関係ない。私たちは、ちゃんと結婚して、ちゃんと幸せになるんだから」そう口にしながら、とわこの声は詰まった。シャツのボタンを外し終えたとき、彼女の目に飛び込んできたのは、彼の身体中に広がる無数の痣。やっとの思いでこらえていた涙が、またしても止まらなくなった。あんな野蛮な連中がどうして、こんなにも彼を傷つけていいと思ったの?許せない。絶対に許せない。「痛くないの?」彼の傷口に、そっと指先を当てながら、かすかに震える声で尋ねた。「泣かないで。俺約束したよな。どんなことがあっても、結婚式には影響させないって」彼女の涙に触れたことで、奏の今にも崩れそうだった理性が、少しずつ戻ってきた。そうだ。とわこの言う通りだった。悟はもう、持っていたカードをすべて切った。これ以上、悪くなることはない。「うん、奏、私はね、この人生であなた以外の人なんて、絶対にいらない。たとえ本当に極悪非道な人間だったとしても、私はあ

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status