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密かに甘噛み 11

Auteur: 玄糸雨楽
last update Dernière mise à jour: 2025-05-24 14:52:05
ーー嫌だ。セツ君が、ヤクザだなんて。

「ごめんね、黙ってて。怖いよね」

口調があまりにも優しいから、私は混乱してしまう。

「い、いや⋯⋯」

「こんな僕から、逃げないでね。もし、逃げたら」

逃げたら、どうするの。

まさか⋯⋯私に酷いことするとか?そんなん、セツ君がするはずない。

ゆっくりと近づいてきて、手首を掴んできた彼に、思わず声をあげてしまった。

「なーんてね。花ちゃんを傷つけたりしないよ。逃げられないように、今から捕まえてあげる」

セツ君の顔が近づいてきて、恐怖のあまり目をつむってしまった。

唇に柔らかい感触がして、キスをされたのだと分かった。

「僕は、花ちゃんの普通の日常を壊してしまうよ。僕を心底好きになる運命にしてあげる」

今までに見たことのない表情をしたセツ君。

本当に私を捕らえるような、妖しい微笑み。

なんだか、獲物を求めるケダモノみたいで。

いつもの優しさなんてほんの少しですらもない顔だった。

再びキスをされそうになり、拒むと私の頭を引き寄せて、舌を入れてきた。

嫌なはずなのに、身体が反応してしまう。拒むと尚更深いキスになっていく。

熱が下腹部に集まるような、きゅっとした甘たるい痛みを感じてしまう。

ざらりとした舌が絡んでくるのが、気持ちよくて頭がぼんやりとしてくる。

でも、受け入れちゃ駄目。

危ない人なんだから。

分かっているはずなのに。

セツ君の優しさに、甘いぬくもりに抗えば抗うほど堕ちていくみたいで、たまらなく怖い。

私の全てを奪いにいく、そんな強引なキス。全てを委ねてしまいそうになる。
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