婚約破棄を告げたら、氷の侯爵の溺愛が限界を超えました

婚約破棄を告げたら、氷の侯爵の溺愛が限界を超えました

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「婚約を解消していただきたいのです」 十八歳のレティシアが十一年間の婚約に終止符を打とうとした瞬間、 冷静だった侯爵エドワールの理性が崩壊した。 「君が大人になるのを、どれだけ待ったと思っている」 十六歳の日、キス寸前で身を引いたのは嫌悪ではなく—— 「止まれなくなるから」我慢していただけ。 誤解が解けた瞬間、十一年分の想いが爆発する。 氷の仮面を被っていた侯爵の、独占欲と溺愛に満ちた本性が露わになる。 朝まで続く、甘く濃密な初夜。 「君は私のものだ。誰にも渡さない」 すれ違いの先に待っていたのは、深すぎる愛だった。

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บทที่ 1

プロローグ:レティシアの決意

 窓から差し込む午後の光が、重厚な木製の家具を照らしている。本棚には古い書物が整然と並び、革の匂いが空気に混じっていた。

エドワールが窓辺に立ち、背中を向けたまま外を眺めている。深藍混じりの銀髪が、光を受けて淡く輝いている。

 私は扉の前に立ち、手を握りしめた。爪が掌に食い込み、痛みが走る。

(婚約を解消していただく)

愛されていない相手の隣に立ち続けることは、私には耐えられない。

エドワールと婚約して十一年。ずっと彼だけを見てきたからわかる。彼は私を愛していない。

「レティシア」

 エドワールが振り返り、私を捉える。いつもの無表情で、何を考えているのかわからない。一時は、彼の無表情を勇ましくて格好いいと思っていたときもある。

 でも今は、見ていて辛いだけ――。

(私を見ていない)

「エドワール様」

 私は深く息を吸い込んだ。喉が渇き、声が震えそうになる。言葉を紡ぐために、唇を噛んだ。

「今日、来たのは婚約を……解消していただきたいと思ったからです」

 静寂が降りた。

 時計の音だけが、規則正しく部屋に響いている。エドワールは動かず、ただ私を見つめていた。表情が読めない。拒絶されるのか、それとも安堵されるのか。心臓が早鐘を打ち、全身に血液が駆け巡っていくのが分かった。

「……どういうことだ、レティシア」

 低い声が響いた。

 いつもと違う。感情が、声に含まれていた。驚き、動揺、何か別の感情。私は顔を上げ、エドワールを見た。彼の瞳が揺れている。初めて見る表情だった。

「私では、エドワール様にふさわしくありません。もっと、宮廷に相応しい方が……」

「誰だ」

 エドワールが一歩、近づいてきた。足音が床を踏む。静かで、重い音。

「誰のことを言っている」

「ミリエル様が、お似合いかと……」

「ふざけるな」

 声が低く沈んだ。エドワールがさらに近づいてくる。距離が縮まり、彼の影が私を覆った。見上げると、エドワールの顔が目の前にあった。真っ直ぐ見つめてくる目が私を捉えて離さない。

「十一年だ」

 囁きが耳朶を撫でた。

「君が大人になるのを、どれだけ待ったと思っている」

「え……?」

 言葉の意味が分からなかった。

(待った? 何を?)

 エドワールの手が私の肩を掴み、押した。背中がソファに沈み込む。柔らかい感触が身体を受け止めてくれる。すぐにエドワールが覆い被さってきて、重い身体が私を押さえつけ、逃げられなくなった。

「エドワール、様……?」

「あの日、触れなかったのは……止まれなくなるからだ」

 顔が近い。吐息が頬にかかる。心臓が跳ね上がり、息が詰まった。

「触れたら、君を抱いてしまう。まだ子どもの君を、壊してしまう」

 唇が重ねられた。

 温かく、柔らかい感触。

(キスをされている!)

頭が真っ白になり、何も考えられなくなっていく。今までの、触れるだけの子どもじみたキスとは違う。

唇が強く押し付けられ、舌が唇をなぞる。口を開けるように促してくる。口を開くと、舌が中へと侵入してきた。舌が絡み合い、甘い吐息が漏れる。

「ん……」

 声が漏れた。恥ずかしくて慌てて離れようとするが、エドワールが私の手首を掴み、頭上に押さえつけた。逃げられない。キスが深くなり、息が苦しくなる。

「ずっと、ずっと我慢してきたんだ」

 キスが首筋に移動し、鎖骨を舐める。熱い舌が肌を這い、身体が震えた。エドワールの手がドレスの胸元に触れ、布を引き下げる。

胸が晒され、冷たい空気が肌に触れた。鳥肌が立ち、羞恥心が込み上げてくる。

「やぁ……」

 自然と声が出た。エドワールの手が柔らかい膨らみを包み込む。大きな手が、胸を覆い尽くす。揉みしだかれ、指先が先端を弾いた。

「あっ」

 身体が跳ねた。甘い痺れが全身を駆け巡り、腰が浮く。エドワールの唇が胸の先端へと辿り着き、吸い上げた。舌で転がされ、歯で軽く噛まれる。

「ん、あ……」

 鼻にかかったような声が勝手に漏れ出て、止められない。エドワールの手がドレスの裾を捲り上げ、太腿に触れた。ゆっくりと撫でられ、熱が集まっていくのが分かる。内側を撫でられ、息が荒くなった。

「レティシア」

 名前を呼ばれ、顔を上げた。エドワールが私を見つめている。銀青色の瞳が、熱を帯びていた。今まで見たことのない、激しい感情が瞳に宿っている。

「君を、抱く」

 低い声が宣言した。

 心臓が激しく脈打ち、全身が熱くなっていく。エドワールの手が、さらに奥へと進んでいった

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プロローグ:レティシアの決意
 窓から差し込む午後の光が、重厚な木製の家具を照らしている。本棚には古い書物が整然と並び、革の匂いが空気に混じっていた。エドワールが窓辺に立ち、背中を向けたまま外を眺めている。深藍混じりの銀髪が、光を受けて淡く輝いている。 私は扉の前に立ち、手を握りしめた。爪が掌に食い込み、痛みが走る。(婚約を解消していただく)愛されていない相手の隣に立ち続けることは、私には耐えられない。エドワールと婚約して十一年。ずっと彼だけを見てきたからわかる。彼は私を愛していない。「レティシア」 エドワールが振り返り、私を捉える。いつもの無表情で、何を考えているのかわからない。一時は、彼の無表情を勇ましくて格好いいと思っていたときもある。 でも今は、見ていて辛いだけ――。(私を見ていない)「エドワール様」 私は深く息を吸い込んだ。喉が渇き、声が震えそうになる。言葉を紡ぐために、唇を噛んだ。「今日、来たのは婚約を……解消していただきたいと思ったからです」 静寂が降りた。 時計の音だけが、規則正しく部屋に響いている。エドワールは動かず、ただ私を見つめていた。表情が読めない。拒絶されるのか、それとも安堵されるのか。心臓が早鐘を打ち、全身に血液が駆け巡っていくのが分かった。「……どういうことだ、レティシア」 低い声が響いた。 いつもと違う。感情が、声に含まれていた。驚き、動揺、何か別の感情。私は顔を上げ、エドワールを見た。彼の瞳が揺れている。初めて見る表情だった。「私では、エドワール様にふさわしくありません。もっと、宮廷に相応しい方が……」「誰だ」 エドワールが一歩、近づいてきた。足音が床を踏む。静かで、重い音。「誰のことを言っている」「ミリエル様が、お似合いかと……」「ふざけるな」 声が低く沈んだ。エドワールがさらに近づいてくる。距離が縮まり、彼の影が私を覆った。見上げると、エドワールの顔が目の前にあった。真っ直ぐ見つめてくる目が私を捉えて離さない。「十一年だ」 囁きが耳朶を撫でた。「君が大人になるのを、どれだけ待ったと思っている」「え……?」 言葉の意味が分からなかった。(待った? 何を?) エドワールの手が私の肩を掴み、押した。背中がソファに沈み込む。柔らかい感触が身体を受け止めてくれる。すぐにエドワールが覆い被さってきて、重い身
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第一話
◆七歳で決まった婚約 私が七歳の春、父は私を書斎に呼んだ。 重い扉を開けると、見知らぬ大人の男性が二人、ソファに座っている。一人は白髪混じりの髭を蓄えた老侯爵で、もう一人は銀髪の青年だった。青年は窓際に立ち、光を背に受けていた。逆光で顔がよく見えなかったが、背が高く、凛とした佇まいをしていた。「レティシア、こちらへ」 父が手招きをして、私は緊張しながら父の隣に立った。父の手が私の肩に置かれ、温かさが伝わってくる。「ハーシェル侯爵家の御子息、エドワール様だ。お前の婚約者となられる方だよ」 ――婚約者。(将来、私の夫となる人……) エドワールが私に近づいてきた。銀青色の瞳が私を見下ろし、膝を折って目線を合わせてくれた。近くで見ると、整った顔立ちをしていた。冷たそうな印象なのに、瞳は優しかった。「初めまして、レティシア」 低い声が響いた。大人の男性の声。(胸がドキドキする)「は、初めまして……」 小さな声で答えた。エドワールが微笑んだ。口角が僅かに上がり、瞳が柔らかくなる。「私の可愛いお姫様」 大きな手が私の頭に置かれ、優しく撫でられた。温かく、包み込むような手。父とは違う、大人の男性の手だった。頬が熱くなり、恥ずかしくて下を向いた。「よろしくお願いします、エドワール様」 私は丁寧にお辞儀をした。ドレスの裾を摘み、習った通りに膝を曲げる。エドワールが微笑んでくれる。「よろしく頼む、レティシア」 大きな手を差し出され、私は小さな手を重ねた。エドワールの手が私の手を包み込み、軽く握ってくれる。「私、花嫁修行を頑張りますね」 無邪気に笑った。エドワールの瞳が揺れ、何か言いかけて口を閉じた。「ああ、期待しているよ」 穏やかな声で答えてくれた。私は嬉しくなり、エドワールの手を両手で握る。「エドワール様は、どんな花嫁さんが好きですか?」 無邪気に尋ねた。エドワールが少し驚いたような顔をして、それから優しく微笑んだ。「そうだね……笑顔が素敵な人かな」「じゃあ、私、いっぱい笑います!」 私は満面の笑みで答えた。エドワールの表情が柔らかくなり、もう一度頭を撫でてくれた。「ああ。君の笑顔を、楽しみにしているよ」 老侯爵が笑い声を上げた。「良い子じゃ。エドワール、大切にしてやれよ」「はい、父上」 エドワールが頷いた。私を見つめ
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第二話
◆十歳と十四歳の記憶 エドワールは月に一度、必ず屋敷を訪ねてきてくれた。 いつも手には小さな箱や包みを持っていて、私への土産だと言って手渡してくれた。宝石のような飴細工、絹のリボン、外国の珍しい絵本。一つ一つが私の宝物になった。部屋の棚には、エドワールからの贈り物が並んでいる。眺めるたびに、胸が温かくなった。「今日はどんなお話を聞かせてくれるの?」 私は目を輝かせて尋ねた。エドワールはいつも、旅先の話や珍しい出来事を語ってくれた。遠い国の風景、見たこともない動物、不思議な習慣。私は夢中になって聞き入った。「レティシアは賢いね。物覚えがいい」 エドワールが微笑んだ。褒められるたびに、嬉しくて顔が熱くなった。もっと褒めてほしくて、一生懸命勉強した。刺繍も、ピアノも、ダンスも、全部エドワールに見せたくて頑張った。 十歳の誕生日。彼の月一での訪問日と重なった。嬉しくてエドワールに駆け寄ろうとしたら庭で転んで膝を擦りむいた。痛みに涙が溢れ、立ち上がれなかった。「レティシア!」 エドワールが走ってきてくれる。膝をついて私の傷を見つめ、眉を寄せた。「痛いか?」「う、うん……」 涙声で答えた。エドワールが私を抱き上げた。腕の中で身体が宙に浮き、思わずエドワールの首に腕を回す。(胸がドキドキする)「すぐに手当てをしよう」 優しい声が耳元で響いた。抱かれたまま屋敷へ運ばれ、医師に手当てをしてもらった。エドワールはずっと傍にいてくれた。手を握ってくれて、大丈夫だと言って私を安心させてくれる。 十四歳の冬、社交界にデビューした。初めての舞踏会。緊張で足が震え、階段を降りるのが怖かった。「手を」 エドワールが手を差し出してくれた。大きな手に支えられ、階段を降りた。ダンスの時間、エドワールが私をエスコートしてくれた。失敗しても笑わなかった。「上手だよ、レティシア。綺麗だ」 囁きに、胸が熱くなった。 彼の婚約者として、立派なレディにならなくちゃ――そう思った。(私はエドワール様が好き) 一人の男性として。彼の声を聞くと心臓が跳ね、触れられると頬が熱くなった。会えない日々は寂しく、会える日を指折り数えて待った。 エドワールは優しかった。いつも気遣ってくれて、守ってくれる。 それは婚約者として当たり前の対応であって、私を女性として見ているわけじゃな
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第三話
◆十六歳・キス未遂 十六歳の初夏、エドワールが一ヶ月ぶりに屋敷を訪ねてきた。 長期の出張から戻ったばかりで、日焼けした肌が健康的な色をしていた。いつもより少し疲れた様子だったが、私を見ると僅かに表情が緩んだ。 応接室に通され、メイドがお茶を運んでくる。紅茶の香りが部屋に広がり、窓から入る風がレースのカーテンを揺らしていた。「北方の視察は大変だったでしょう」 私は紅茶を注ぎながら尋ねた。エドワールは窓の外を見つめ、静かに答えた。「ああ、雪解けの時期で道が悪かった。馬車が何度も泥濘にはまってね」 淡々と語る声。いつもの落ち着いた口調だ。 私は彼の顔を見つめた。銀青色の瞳が窓の光を反射し、透き通って見える。(いつ見ても、エドワール様は格好いい)「お疲れ様でした。お怪我はありませんでしたか?」「大丈夫だ。心配してくれたのか?」 エドワールが私を見つめてくれる。視線が絡み合い、心臓が跳ねた。「婚約者ですから……」 私は頬が熱くなるのを感じた。エドワールの視線が優しく、少しだけ驚いたような色を含んでいたように感じる。「ありがとう。怪我はしなかったよ」 囁くような声で答えてくれ、エドワールが懐から小さな箱を取り出した。「土産だ。受け取ってくれるか」 差し出された箱を受け取る。指先が触れ、温かさが伝わってきた。 箱を開けると、繊細な細工の施された銀のブローチが入っていた。小さな薔薇の形をしていて、中央に淡いピンクの宝石が嵌め込まれている。「綺麗……」 息を呑んだ。今までもらった贈り物の中で、一番大人びた品だった。子ども向けの可愛らしい物ではなく、女性が身につける装飾品。(嬉しい)「君に似合うと思って選んだ」 エドワールの声が近くで聞こえた。顔を上げると、いつの間にか距離が縮まっていた。ソファに並んで座る私たちの間には、ほんの僅かな空間しかなかった。エドワールの吐息が頬にかかる。「ありがとう、ございます」 声が震えた。心臓が早鐘を打ち、全身が熱くなっていく。エドワールの瞳が私を見つめている。銀青色の深い色。吸い込まれそうになる。「レティシア」 名前を呼ばれた。低く、掠れた声。今まで聞いたことのない艶のある声色でエドワールの手が私の頬に触れる。大きく、温かい指先が優しく肌を撫で、髪に触れる。「……エドワール様」 もう少しで唇
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第四話
◆初めての嫉妬 ブリーチをいただいてから三日後、王宮で催された夜会に出席した。 父に連れられ、華やかな広間に足を踏み入れる。シャンデリアの光が煌めき、無数の蝋燭が部屋を照らしていた。 楽団の音色が響き、優雅なワルツが奏でられていた。貴族たちが色とりどりのドレスや正装に身を包み、優雅に会話を交わしている。笑い声があちこちから聞こえてきて、華やいだ雰囲気が広間を満たしていた。 私は淡いピンクのドレスを纏い、父の後ろを歩いていた。ドレスは母が選んでくれたもので、レースの装飾が施された可愛らしいデザインだった。 でも、周囲の令嬢たちと比べると、やはり幼く見える気がした。大人の女性たちは深い色のドレスを着こなし、宝石を身につけ、成熟した美しさを放っている。(私は女性としてまだ未熟だわ) これではいつまでたっても、エドワールに振り向いてもらえない。 ふと視線をあげれば、窓際にいるエドワールを見つけた。黒いタキシードに身を包み、いつもの無表情で、一人グラスを傾けている。月明かりが窓から差し込み、彼の銀髪を淡く照らしていた。(エドワール様!) 私は彼に近づこうとしたが、足を止めた。 一人の女性がエドワールに近づいていくのが見えたから。 プラチナブロンドの長い髪が、シャンデリアの光を受けて輝いている。紫水晶色の瞳が美しい。深紅のドレスが身体の曲線を美しく際立たせ、首元には大粒のルビーのネックレスが輝いていた。 まさに私が想像する大人の女性像だ。 ドレスの着こなしが洗練されていて、歩き方一つとっても優雅だった。私よりずっと年上で、大人の女性の色気を纏っている。(私とは全然違う)「ミリエル・フォン・アーデルハイト公爵令嬢だ」 父が小声で教えてくれた。「宮廷で外交を担当されている、優秀な方だよ。若くして公爵家を支えておられる」 ミリエル。名前は聞いたことがある。 社交界の華と呼ばれ、多くの男性貴族から慕われている女性だ。多くの殿方から求婚されているのに、いまだに結婚を決めないという――。 ミリエルがエドワールに声をかけた。エドワールが振り返る。一瞬、彼の表情が変わったように見えた。 距離が近い。ミリエルがエドワールの隣に立ち、親しげに話しかけている。エドワールは一歩も引かず、ミリエルの言葉に耳を傾けていた。 ミリエルが何か言い、エドワールの肩
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第五話
◆抑えきれない想い レティシアがもうすぐ十八歳になる。 いつの頃からか、彼女は「氷の令嬢」と呼ばれるようになった。舞踏会の会場で、男性たちの視線を集める女性へと成長していた。 美しくて、笑わない。まるで心が凍ってしまったのではないかと、貴族たちの間で噂されている。どの殿方にダンスを申し込まれても断っているらしく、彼女は誰なら踊るのであろうかと囁かれている。 最近のレティシアは舞踏会に出席しても、いるのは最初だけだった。ホールでダンスが始まる頃にはいつの間にか姿を消している。一通りの挨拶を終えると、どうやら帰宅しているようだった。『私、いっぱい笑います!』 七歳の彼女が言った言葉が脳裏に蘇る。あんなに素敵な笑顔だったレティシアは、どこへ消えてしまったのだろうか。 今夜も王宮の舞踏会が開かれている。レティシアが来ると聞いて、私も出席した。会いたかった。出張から戻ったばかりで疲れていたが、彼女に会えるなら何でもない。 広間に入ると、すぐにレティシアの姿を見つけた。淡いピンク色のドレスを纏い、シャンデリアの光を浴びて立っている。胸元には、十六歳の時にプレゼントした銀のブローチが輝いていた。まだつけてくれているのか。嬉しさが込み上げてくる。 十六歳の頃から、レティシアの雰囲気ががらりと変化した。身体も一気に大人へと成熟し、ドレスのデザインも大人びたものになってきた。柔らかな曲線を持つ身体。女性らしい丸みを帯びた腰。華奢だった肩は滑らかで、鎖骨が美しく浮き出ている。 近づいて、気づいた。ドレスの胸元が開きすぎている。白く柔らかそうな谷間がよく見えるデザインだ。指を引っ掛けただけですぐに胸元がはだけてしまいそうで、不安になる。 レティシアの素肌を知っているのは私だけでいい。 他の男の目に触れさせたくない。 嫉妬だとわかっている。醜い感情だとわかっている。でも、抑えられない。苛立ちが込み上げてくる。「レティシア、久しぶりだな。元気にしていたか?」 レティシアが振り向いて淡金色の髪が揺れ、ローズピンクの瞳が私を見つめる。美しい。息を呑むほど綺麗だ。「お久しぶりです。エドワール様。昨日、帰ってきたばかりだと聞きました。長い出張、お疲れ様でした」 レティシアが目を伏せ、ドレスの裾を掴んで挨拶する。丁寧で、礼儀正しい。でも、距離がある。私と彼女の間には、
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第六話
◆婚約破棄の申し出 侯爵邸の門をくぐる時、足が震えた。 馬車から降り、石畳を踏みしめる。一歩一歩が重く、時間が引き延ばされているように感じた。執事が扉を開け、私を中へと導く。廊下を歩く音が響き、自分の心臓の音と重なって聞こえた。「書斎でお待ちです。どうぞ」 執事が扉の前で立ち止まり、ノックをした。中から低い声が響く。「どうぞ」 扉が開かれ、私は一歩を踏み出した。書斎はいつも通り静かで、窓から差し込む午後の光が重厚な家具を照らしていた。本棚には古い書物が整然と並び、革の匂いが空気に混じっている。エドワールは窓辺に立ち、背中を向けたまま外を眺めていた。深藍混じりの銀髪が、光を受けて淡く輝いている。「レティシア」 振り返ったエドワールの顔は、いつもの無表情だった。銀青色の瞳が私を捉え、何も語らない。冷たく、遠い。私は胸が締め付けられるのを感じた。あの夜会での光景が蘇る。ミリエルと談笑するエドワール。初めて見た彼の笑顔。柔らかく、心を開いた表情。私には決して見せてくれなかった笑顔。胸が痛んだ。息を吸い込むたびに、肺が軋むような感覚があった。「エドワール様」 私は声を絞り出した。喉が渇き、声が震えそうになる。言葉を紡ぐために、唇を噛んだ。「お話があります。婚約を……解消していただきたいのです」 静寂が降りた。 時計の音だけが、規則正しく部屋に響いている。エドワールは動かず、ただ私を見つめていた。表情が読めない。拒絶されるのか、それとも安堵されるのか。心臓が早鐘を打ち、全身に血液が駆け巡っていくのが分かった。「……どういうことだ、レティシア」 低い声が響いた。 いつもと違う。感情が、声に含まれていた。驚き、動揺、何か別の感情。私は顔を上げ、エドワールを見た。銀青色の瞳が揺れている。初めて見る表情だった。「私では、エドワール様にふさわしくありません。もっと、宮廷に相応しい方が……」「誰だ?」 声が低く沈んだ。エドワールが一歩、近づいてきた。足音が床を踏む。静かで、重い音。「誰のことを言っている」「ミリエル様が相応しいかと」「――ふざけるな」 さらに近づいてくる。距離が縮まり、彼の影が私を覆った。見上げると、エドワールの顔が目の前にあった。瞳が私を捉えて離さない。「十一年だ」 囁きが耳朶を撫でた。「君が大人になるのを、どれだけ待
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第七話
◆浴室で 身体の力が抜け、ソファにぐったりと身を沈めた。 全身が疲れ果て、指一本動かすことができそうにない。エドワールが私を抱きしめたまま、額にキスを落とす。優しく、慈しむような口づけだ。「もっと一緒にいたい」 囁きが耳元で響いた。「今夜は泊まっていってくれないか」 エドワールの声が甘く、懇願するような響きを含んでいた。私は疲れた身体を起こし、エドワールを見上げた。銀青色の瞳が私を見つめている。優しく、愛おしそうな眼差しに胸が温かくなった。「私も……一緒にいたいです」 エドワールの顔がほころび、笑顔になった。柔らかく、温かい笑顔。私だけに向けられた特別な表情だと思うと嬉しい。「レティシアの家には私から伝えておく」 エドワールが微笑んだ。立ち上がり、服を整える。書斎の扉を開け、使用人を呼んだ。「客室の準備を。レティシア様が今夜は泊まられる」 命令する声。使用人が恭しく頭を下げ、準備に向かった。エドワールが私に手を差し伸べる。大きく、温かい手。手を取り、立ち上がった。足が震え、まっすぐ立てない。エドワールが私の腰を支え、身体を寄せてくれた。「歩けるか」「大丈夫です」 強がってみたものの、足に力が入らず、一歩踏み出すのも辛かった。エドワールが私を抱き上げた。腕の中で身体が宙に浮き、思わず首に腕を回す。「無理をするな」 優しく叱られ、頬が熱くなった。 廊下を歩く使用人たちが行き交い、私たちを見て目を伏せる。恥ずかしさが込み上げてきた。抱きかかえられて運ばれる姿を見られている。何があったか、察せられているだろう。 客室へと案内され、エドワールが私をベッドに降ろした。柔らかい感触が背中に伝わる。「入浴の準備が整いました」 メイドが部屋に入ってきて告げた。エドワールが頷き、私を再び抱き上げる。「一人で大丈夫です」「いや、送る」 有無を言わせない口調で浴室まで運ばれ、扉の前で降ろされた。「ゆっくり浸かっておいで」 エドワールが髪を撫でた。頷き、浴室へと入る。扉を閉め、息をついた。 浴室は湯気が立ち込めていた。大きな浴槽に温かい湯が張られ、薔薇の香りが漂っている。服を脱ぎ、身体を洗う。太腿の内側に、白濁した液体が伝っている。エドワールに抱かれた痕跡だ。頬が熱くなり、胸が高鳴った。 湯船に身体を沈めると温かさが身体を包み込み、疲
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第八話
◆寝室で「歩けないだろう」 囁きに、頷くことしかできなかった。エドワールが私を抱きしめたまま、廊下を歩く。客室ではなく、別の扉の前で立ち止まった。「私の部屋だ」 エドワールが扉を開けた。寝室は暖炉の火だけが灯り、薄暗かった。 炎が揺れるたびに、影が壁を這う。中央には天蓋付きの大きなベッドがあり、深紅のカーテンが垂れ下がっている。 窓からは月明かりが差し込み、床に淡い光の帯を作っていた。空気は暖かく、木の香りが混ざり合っている。 ベッドへと運ばれ、柔らかい感触が背中に伝わった。エドワールが私の隣に横たわった。横向きになり、私の頬に手を添える。「疲れただろう」「はい……」 正直に答えた。エドワールが微笑み、額にキスを落とす。「休んでいい。ただ、隣にいさせてくれ」 優しい声。エドワールが私を抱きしめた。温かい胸板に顔が押し付けられ、心臓の音が聞こえる。規則正しく、力強い鼓動。「愛している」 囁きが頭上で響いた。「私も、愛しています」 囁き返した。エドワールの腕に力が込められ、強く抱きしめられる。 キスが落とされた。額に、頬に、唇に。優しく、愛おしむような口づけ。唇が重ねられ、舌が絡み合う。 深く、甘いキス。エドワールの手が寝衣の上から身体を撫でる。肩から腕へ、腰から太腿へ。優しく、丁寧に。「触れていいか」「はい」 エドワールの手が寝衣の紐を解き、肌を露わにしていく。冷たい空気が肌に触れ、鳥肌が立った。胸が晒され、エドワールの手が柔らかい膨らみを包み込む。大きな手が、胸を覆い尽くす。揉みしだかれ、形が変わる。「ん……」 声が漏れた。エドワールの唇が胸に移動し、先端を吸い上げた。舌で転がされ、歯で軽く噛まれる。もう片方の胸も同じように愛撫され、身体が熱くなっていく。「君の身体、全部が愛おしい」 エドワールの声が掠れていた。唇が腹を撫で、腰骨にキスを落とす。太腿を撫でられ、内側を這われる。熱が集まり、身体が反応する。「休んでいいと言ったが……悪い。もう一度、君を感じたい」 囁きに、胸が高鳴った。エドワールの瞳が私を見つめている。熱を帯びた、愛に満ちた眼差し。「はい……」 囁いた。エドワールが微笑み、私を優しく抱きしめた。 エドワールの手が私の太腿を撫で、膝を掴んで開かせた。 恥ずかしさに顔が熱くなり、目を閉じる。エ
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第九話
◆朝食 目を覚ますと、陽の光が窓から差し込んでいた。 全身が鉛のように重く、動かすのが辛い。腰が痛い……太腿の内側も、秘所も、鈍い痛みが残っていた。 昨夜のことを思い出し、頬が熱くなった。エドワールに抱かれて何度も求められ続けた。(嬉しい) 隣を見ると、エドワールが眠っていた。穏やかな寝顔で胸の奥が温かくなる。銀髪が乱れ、額にかかっている。思わず手を伸ばし、髪を撫でた。エドワールの瞼が動き、ゆっくりと目を開ける。「おはよう、レティシア」 掠れた声が色っぽい。エドワールが私を抱き寄せてくれる。温かくて心地よい。「おはようございます、エドワール様」 エドワールの腕の中で、安心感が全身を満たしていく。「身体は……大丈夫か」 心配そうな声でエドワールの手が私の背中を撫でる。「痛いです……少し」「すまない。激しくしすぎた」「いえ……幸せでした」 囁いた。エドワールの瞳が揺れ、額にキスを落とす。「愛している」「私も……愛しています」 抱き合ったまま、しばらく時間が過ぎた。やがて、エドワールが身体を起こした。「朝食を用意させよう」 使用人を呼び、朝食の準備を命じる。私も身体を起こそうとしたが、腰に力が入らなかった。「起き上がれません」 小さく呟いた。エドワールが私を抱き上げる。「無理をするな」 エドワールが私を抱いたまま、バスルームへと運んでくれた。温かいお湯を張った浴槽に、ゆっくりと身体を沈める。お湯が痛む身体を包み込み、痛みが和らいでいく。「気持ちいい……」 小さく呟いた。エドワールが私の髪を撫でる。「ゆっくり浸かっていてくれ。朝食ができたら呼ぶ」 エドワールが部屋を出ていく。 湯から上がると、エドワールが用意してくれた寝衣を着た。部屋に戻ると、テーブルに朝食が並べられていた。パン、スープ、果物。食欲はあまりなかったが、エドワールに勧められて席についた。「食べられるか」 心配そうに尋ねられ、頷いた。スープを一口飲む。温かく、優しい味。身体に染み込んでいく。「美味しいです」 私の言葉にエドワールが柔らかく微笑んだ。 朝食を終えると、エドワールが私を抱き寄せて移動する。ソファに座り、私を膝の上に乗せてくれた。温かい胸板に頭を預けて、私は幸せを噛み締める。「レティシア、話がある」 エドワールの真剣な声が頭上で
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