Share

34.美紀との小旅行

Auteur: 桜立風
last update Date de publication: 2026-03-22 12:29:40

「…ふぅ……………」

「…ちょっと待ってため息?桜ちゃん、どうかしたの?」

平日、昼下がりの室井酒店。

窓から差し込む太陽の光が、夏のそれを思わせるようになり、昭仁がクーラーのスイッチを入れにやって来た。

「え?ため息なんて…つきました?」

「…どうかしたの?」

母屋で食事を済ませた美紀がやってきて、昭仁と桜を見比べる。

「いや…桜ちゃんが大きなため息をついたから、美紀さんがきっと心配するだろうなぁって…」

「あ、それは…心配すると思います…よ?」

向かい合い、うふふ、あはは…と恥ずかしそうに笑う2人。間を取り持った気分になり、桜も笑顔を添えた。

…以前、麗香さんを交えて集まった女子会で聞いた昭仁の件は、どうやら解決したらしい。

ゆっくり少しずつ…深め合っている2人の絆が見えるようで、とても嬉しい

けれど私の方は…

4人で行った食事会で、蔵之介のまさかの行動とエレベーターのトラブルに見舞われ、彼から知らされたことを忘れられずにいた。

結婚式の日取りが決まったこと…そんな結婚を取りやめるのは難しいであろうこと、そして…

龍之介の麗香への気遣い…

もしかしたら、はじめから自分が入り込む余
Continuez à lire ce livre gratuitement
Scanner le code pour télécharger l'application
Chapitre verrouillé

Latest chapter

  • 極道と、咲き乱れる桜の恋   51.龍之介の想い③

    麗香に言われて出かけた桜が屋敷に戻ってきたようだ。……遠目に俺を見て、立ち尽くしている。「帰りは夜になる」すれ違いざま声をかけると、弾かれたように、通り過ぎる俺を振り返る桜。…優しい視線を感じる。…しばらくして、今度は俺が振り返った。白いワンピースの裾を揺らし、薄茶色のロングヘアをなびかせて歩く桜を、俺は花を愛でるような気持ちで見つめた。……齋藤という松白屋の専務と会ってきたのだろう。麗香にそう言われたときは、ただの嫉妬が心に渦巻いた。まるでガキと一緒だ。「ちゃんと、話をしよう。龍之介」桜が出ていって、麗香に腕を掴まれた。まだ、桜との未来を諦めてはいなかった。この時は……まだ。「親に、式の日取りを決めろって言われてる」「蔵之介を諦めて……組のために俺と結婚するって決めたのか」「うん。決めた」……深いため息を漏らす俺に、麗香がこれ以上ない本音を打ち明けた。「やっぱり似てるから。蔵之介の面影を乗せて、龍之介を見てる。多分それで私…結婚生活やっていける」「俺は桜以外、抱けねぇぞ」本音に本音をぶつければ、麗香は諦めたような笑みを浮かべた。「適当に欲望を発散する手助けをしてくれたらいいわ」「そんなこと…ごめんだな」「…ひど」本気で言っているわけではないことはわかったが、俺がどこまで譲歩するか確認している気がした。「計画的離婚についてはどうだ?式を挙げて1年後までに志田川の組織を変えるつもりだ。うちの後ろ盾がなくてもやっていけるようにする」「…うちの組長がどう言うか…」「組織を強くして、文句なんかねぇだろ」タバコに火をつけ、唇の端で咥えながら続けた。「志田川組を独立させたら、さらに1年後までに、俺たちは離婚」「晴れて、桜ちゃんのもとに行けるってわけ?」「うちの組織と組員、蔵之介の力があれば可能な計画だ。お前に話をつけたら、うちの組長に伝えようと思っている」自分の質問に答えない俺を見上げ、意味深に笑う麗香。「……桜ちゃんを離さないつもり?」「どうしてそんなことを聞く?」「あの子のためにならないからよ」…それは何度も頭をよぎったことだった。離してやるのが桜のためで、自分のような極道のそばに置くことは、静かな幸せから遠ざけることだと…十分すぎるほどわかっている。過去……百合にも同じことをした。結果あいつは病気になり、

  • 極道と、咲き乱れる桜の恋   50.離れてゆく…?

    「家庭環境に恵まれず、進学を断念したり夢を諦める若者の支援をしています」「そう…なんですか。あの、麗香さんとは……?」「松白屋のお客さまです。そのお付き合いで担当者が何度か櫻川へ行ってまして、あなたの美しさに魅了されたようです」意外な話の流れに、頬を染める桜。「いえ、私なんてまったくの素人で…お恥ずかしいです」「担当者が麗香さんにあなたの話を聞いて…私に伝えてきました。それで、あなたを指名して櫻川へ行ったのですが…」担当者は、齋藤がボランティア活動をしていると知る、数少ない人物だったそうだ。桜はちょこんと頭を下げる。「すみません。私は櫻川に出なくなったあとでしたね…」齋藤は緊張をほぐすように笑った。「桜さんに支援が必要な時は、ぜひ連絡をしてください。私は社会的立場もあり、決して怪しいものではありませんから」「…はい」ありがとうございます…なんて言っていいのか。桜の迷いに寄り添うように、齋藤は明るく言った。「さぁ、冷めないうちにコーヒーとケーキをどうぞ」齋藤は、押し付けがましさがなく、終始落ち着いた紳士で、育ちの良さを感じさせる人という印象。そんな彼との間に不思議な縁があることがわかったのは、コーヒーを飲み終えた頃のこと。「櫻川の前は、どんな仕事をなさってたんですか?」「室井酒店というお店で働かせてもらってました」「……室井?」ふと考え込み、齋藤は愉快そうに言った。「もしかしたらオーナーは、室井昭仁…ですかね?」「え、昭仁さんをご存知なんですか?」「はい。大学の同期で、今も連絡を取り合ってますよ」携帯に収められた写真を何枚か見せてくれた。それはよく知る昭仁に間違いない。「恋人ができたって言ってたなぁ…」…美紀ちゃんのことだ。なんだかとても嬉しくなった。「一緒に働いていた女の子のことです。美紀ちゃんと言って、とても優しい人で…」「…そう!それならぜひ今度、4人で食事でもしましょう!」「はい、ぜひ!」2人に会えるとしたら、こんなに嬉しいことはない。坂上や父親が雲隠れしている今、1人で出かける事も2人に会う事も危険かもしれないが……。齋藤と別れ、屋敷に向かう。出てきた時と同じ裏門に近づくと、中にいた男性が桜に気づき、門を開けてくれた。「和哉さん、ありがとうございます」「おかえりなさいまし…桜さん」「あ

  • 極道と、咲き乱れる桜の恋   49.桜を支える人

    「どうしてお前が勝手に決める……?」「櫻川を私に任せるって言ったのは龍之介でしょ?せっかく大企業の御曹司と接点ができたのに、これをビジネスに変えなくてどうするのよ」「その御曹司とやらに、どうしても桜を会わせると言うなら、俺も同席する」「だめよ」2人のやり取りをハラハラする思いで見守る桜。…龍之介さんにこんな風に意見ができるのは、麗香さんと…蔵之介さんくらいだろう。「龍之介が出ていったら、櫻川は西龍会と繋がってるって思われるわ。あの店は、もう私のものよ?西龍会とも志田川とも一線を引いた……私の店なの」そこまで言われ、さすがの龍之介も黙った。「確かに経営は譲った。それぞれの組がバックにあるなんて知られちゃあ、うまくないわな」こちらに視線をよこす龍之介に気づき、桜も隣にいる龍之介を見た。……どことなく悲しそうに見えるのは、気のせいだろうか。「桜ちゃん、裏の門から出て…大通りにある『川北珈琲』って店に行ってくれる?そこで齋藤専務が待ってるから」「はい…わかりました」そう答えたものの、そんな大企業の偉い人が、自分にどんな話があるというのだろう。「齋藤専務…すごくいい人よ。…とは言っても、坂上の裏の顔を見抜けなかったんだから、信用できないか…」裏門まで送ってくれた麗香が、桜の肩に手をかけながら自嘲気味に笑う。桜も曖昧に笑顔を返して、門を出ようとした時…「桜ちゃんは、もっと外の世界を知った方がいい」「……え?」「龍之介のことが好きな気持ちはわかる。……でも、あいつと一緒にいるってことは、わかるでしょ?普通の幸せから遠ざかることなんだよ?」もしかしたら、麗香さんは。「2人の邪魔をするつもりはない。でも龍之介は……最終的に私に任せて」「それは……どういう意味ですか?」「もう1人、支えてくれる人を作っておくの。龍之介と別れたあとに、支えてくれる……男を」返事を待たず、行きなさい…と、そっと背中を押された。若い衆の1人が飛んできて、門を開け、通してくれた。振り返った麗香の顔は…決して意地悪なわけではない。多分今の自分と同じような表情。どうしようもなく悲しくて、どこか諦めがまじって……さっき龍之介さんも、同じような表情をしていたっけ。喉の奥に涙のかたまりを秘めながら、桜は言われた通り大通りに出た。川北珈琲というカフェは、すぐに見つかっ

  • 極道と、咲き乱れる桜の恋   48.麗香の狙いは…?

    「私は、こっちで寝かせてもらいますね」 柔らかい毛布を手に、ソファに座る桜。 「ダメだ。…こっちへ、ベッドへ来いよ」 「ダメです…」 頑なな表情…そんな顔をされればされるほど、俺の心は燃えていくのに。 「麗香を気にしてるのか?」 細い手首を引くと、瞬間的に抵抗されたが、力の差があるのはわかりきっていること。 「だったら心配するな。…俺が愛しているのは桜だと知っている。あいつに邪魔はさせない」 引き寄せ抱きしめれば、その力は呆気なく抜けていく。…キスをかわし、唇の柔らかさに、己を見失うのは容易かった。 「龍、いるの?」 しばらくして、背中越しに麗香の声が聞こえた。…ドアの鍵は閉まっている。リビングのソファに桜が着ていたドレスをかけておいたから…彼女がここにいることはわかるはずだが… 「…ねぇ、龍?…ちょっと、話できない?」 コンコン…っとリズミカルにノックされ、それが妙に…自分に火をつけた。 「あの…出た方が良くないですか?私も、麗香さんに挨拶をしないと…」 「…そんなの、いいから」 細い肩に口づけながら言う。手は脇の下からのびて、柔らかな双丘を揉みしだいていた。 ぷっくりと固くなった頂を指でつまめば、必死に声を押し殺し、桜はゴクリと喉を動かす。 声を我慢する仕草が、さらに俺を滾らせた。…足の間に指を滑らせれば、すでに潤みきっている。…まだ続くノックの音を聞きながら…中指で何度か擦ってやれば、桜は自分から足を開き、腰をくねらせた。 「桜…欲しいか…」 耳にキスをしながら吐息で問いかけたのは、聞き耳を立てる麗香に聞かせないため。 「…んっ…んあっ…」 抵抗なく俺の指を呑み込む彼女の秘部は、先端の突起が存在を主張していて… 「龍之介、桜ちゃんもそこにいるの…」 聞いたことのない麗香の暗い声…それを聞いて、俺は後ろから自身を桜に突き立てた。 感じやすい桜を頂点に持っていくのは簡単だ…律動を繰り返しながら、固くなった突起を撫でてやれば… 「…んっ…んんっぅ…ッ」 瞬間的に、撫でている手とは反対の俺の手を取り、指先を口に入れる桜。 キュッと噛みながら、達する彼女の妖艶な美しさに、自分もたまらず愛を放った。 …気づけばノックは止み、静かになっている。 俺たちは裸のま

  • 極道と、咲き乱れる桜の恋   47.龍之介の想い②

    「…龍之介さんが身につけていたものだから、大切にしたいんです」「…俺の…?」「はい。…別れる覚悟だったのに、今でもこんな風に顔を合わせて、お世話になって…自分の弱さが情けないです」目を伏せた桜の頬に赤みが差し、ここがどこなのかも忘れて手を伸ばす龍之介。「…おっと、お触りはお断りしてますよ?西門さま」サッと手首を取り、有無を言わさない表情で麗香が睨んできた。龍之介はそんな彼女を無視し、桜に顔を向ける。「…桜、水割りを…」「あ…この子、源氏名をつけたんです。本名を知られすぎたら、何かと危ないと思って…」麗香とは、この数日ろくに話をしていない。引き続き櫻川の事務所で寝泊まりする桜のボディーガードとして付き添っているからだが…「…それじゃ百合ちゃん、後をよろしくね」「…百合?」立ち上がる麗香に、龍之介は厳しい視線を向ける。他でもない…百合とはどういうことだ。もう1度呼ぼうとして、先に他の客に呼び止められているのを見て諦めた。…話はあとにするか。「…麗香との結婚式、白紙に戻したって?」他のホステスと話していると思っていた蔵之介は、いつの間にか一部始終を聞いていたようだ。水割りを飲み干し、グラスを桜に渡しながら、蔵之介はからかうような目を向ける。「あぁ。式は形式的なもので、俺たちは本当の夫婦になるわけじゃないって、あいつには再三言ってるんだが…」桜の視線を避けたいのと、この話題を終わりにしたいのと、そばに置きたいのと。複雑な思いがまじりあい…龍之介はテーブルを挟んで前に座る桜を呼び寄せる。「真ん中に座ってよ。…俺も大事なお客だからね?」ソファの真ん中を叩き、龍之介の隣に座ろうとした桜を蔵之介が呼ぶ。…俺の複雑な思いに気付かれたのかもしれない…「麗香さ、龍之介と結婚するって言ってたけど?」「…は?」「桜ちゃんを保護して、事務所に泊まった最初の夜、俺らを一緒に帰したろ?その時、覚悟を決めたって言ってたよ」桜にも聞こえるように、わざと真ん中に座らせたな…蔵之介とは桜抜きでいくらでも話す機会はあるというのに。「そうか。だが俺は願い下げだ」「わかるけどさ、事態は複雑になってるってことだぜ?…わかってる?」お前が麗香を女として微塵も見ないからこんなことになった…と言いたいが、人間の心を都合よく操れるはずがないことは、自分でもよくわかっ

  • 極道と、咲き乱れる桜の恋   46.龍之介が甘い…

    「…いきなり働かせるって…ねぇ?」麗香は少し困ったように、龍之介を見た。「そうだな。まずは手と足の怪我を治せ。話はそれからだ」「ありがとうございます…」「…は?」ペコリと頭を下げる桜に、首を傾げた龍之介。認めたつもりはなかったらしい。「盗まれて、美紀ちゃんにお金を返せなくなったんです。父に居場所を知られて…迷惑をかけるといけないから、酒屋は退職しました。…だから」「だからじゃねぇだろ。夜の商売なんかじゃなくて、もっとこう…昼間の仕事をだな、」「昨夜、私の安全を考えて、酒屋のオーナーが泊めてくれたんです。でも父が現れたことで、辞めることは決意してました。…2人には絶対迷惑をかけたくなかったから、何も言わないで出てきて…でもお金を借りっぱなしで、出て行きづらくて…キャッシングして美紀ちゃんに少しだけお金を返しました。…だから、遊んでなんていられないんです」ここ、櫻川のホステスなら、今すぐ仕事に就くことができると思った。ホステスが1人失踪したと龍之介も言っていた。麗香もいるし、すぐに働くには最適な場所だ。「そうは言ってもな、まずはひざの怪我を…」「はい。傷は以前ほどひどくないので、あさってにはきっと、治ります。そしたら働いていいですか。…麗香さん、ご指導よろしくお願いします」まだ顔色も戻らないながら、人の恩に背きたくないと強い思いを抱く桜に、龍之介は苦笑いしつつ胸を熱くした。「…私が泊まるからいいのに」櫻川の営業を終え、麗香が事務所に戻ってきた。龍之介は奥に備え付けられた簡易的なベッドを整え、自分はそばにあるベッドで横になるつもりのようだ。桜を呼び、手を貸して寝かせようとしている。「いや、それじゃ何かあった時守れねぇだろ。麗香は蔵之介と帰れよ」「まぁ、そりゃそうか」龍之介に意味深な視線を送られ、麗香はそっとため息をついて、蔵之介のそばに行く。「夫婦は一緒に帰ったら?…泊まるのは俺でよくねぇか?」「は…?ふざけんな」半笑いで言う蔵之介の肩を強めに押し、2人を事務所の外に出し、龍之介は…ドアの鍵を閉めた。「…さて」スラックスのポケットに両手を入れ、小動物を愛でるような甘い目で近寄ってくる。「今回の件、なんで俺に一番に知らせねぇんだよ」「それは…タイミングです。今日、坂上さんとご飯食べたあと…連絡するつもりでした」けれどこ

Plus de chapitres
Découvrez et lisez de bons romans gratuitement
Accédez gratuitement à un grand nombre de bons romans sur GoodNovel. Téléchargez les livres que vous aimez et lisez où et quand vous voulez.
Lisez des livres gratuitement sur l'APP
Scanner le code pour lire sur l'application
DMCA.com Protection Status