「良かったよぉ…良かった。久々にマジになっちゃった!君、きっと売れっ子になれるよ」あられもない格好で、奥のバスルームに消えていく店長。………今だ!シャワーを出す水音を聞いて…私は最初で最後のチャンスだと確信した。そして次の瞬間…ピンク色のカーテンを翻して走り出した。…暗くて狭い廊下を走り抜けると、それぞれの個室にかけられた薄いカーテンがはためく。ブルーやオレンジなど…色とりどりだったことに初めて気づいた。誰にも会わずに受付にたどり着き、一瞬後ろを振り返ったが…走り抜けた私に気づく人はいない。ドアを開け、地上へ続く階段を勢いよく駆け上った。苦しいほど上がる息が、さらに上がる。ハァハァと漏れる息、心臓の鼓動がこれでもかと早まって…やがて、止まるかと思うほど。最後の一段を上がると、目立つことしか考えていない下品な看板が目に入る。上下する胸に手を当て、息を整えながら…それを蹴り飛ばした瞬間、駆け上がってきた階段の下から声が聞こえた。「…おい!チェリー!どこいった?…トイレか?」店長だっ…!左右を確認し、人が少ない方に走り出した。できるだけ遠くに…追い抜く人にギリギリぶつからないように…自分はこんなに足が速かったのかと、不思議に思った。2度とあの店に戻らないように…あの地下の部屋に、足を踏み入れないように……路地を曲がったのは、男のいやらしい目と女の軽蔑した視線がまとわりつくのを避けたいからではなかった。確かこの近くに、痩せたおばさんがやってる店がある。名前は知らない…でもそこは、カフェなんて洒落た店ではなくて、コーヒーを飲ませる店だ。お酒なんて出さない、喫茶店。なんかあったら頼ってきな…って、言ってくれた。そうだ…あのおばさんの店に行こう。私は今、まさに助けを必要としている。これ以上暗闇に落ちていかないように…私をこの世に、引っかけておいてくれるフックのような人の助けが。闇雲に走って、走って。…やがて覚えのある道に出た。そこの路地を曲がれば、確かおばさんの喫茶店に行ける…「…きゃっ…!」スピードを落とさずに曲がった小道で、ドンッと誰かにぶつかってしまった。その拍子に、砂利を含んだアスファルトに投げ出される。「…コラァッ!前を見て歩かんかいっ!」野太い男の怒鳴り声がして、反射的に体を縮めた。立ちはだかる数人の男たち。…あんまりか
Last Updated : 2026-02-01 Read more