Home / BL / 欲しがり男はこの世のすべてを所望する! / 白熱する選挙戦に、この想いを込めて――⑪

Share

白熱する選挙戦に、この想いを込めて――⑪

Author: 相沢蒼依
last update Last Updated: 2025-08-13 13:00:09

「ぁあっ……か、つみさ、んっ」

「ただ触れているだけなのに、そんな顔して煽らないでくれ」

「そんなの、無理だ、よ。俺を感じさせることができるのは、アナタだけ……なんだから」

 スラックスの下で猛っている下半身を、克巳さんの下半身にぐいっと押しつけてやる。途端に眉根を寄せながら、まつ毛を微かに上下させる姿に、もっともっと責めたくなってしまった。

「克巳さんっ、いっぱい感じて。ほらほら!」

「うぅっ! 駄目だ、それ以上は……願掛けが無駄になってしまうだろ」

「いいよ、そんなもん。ぁあっ……んっ、自力でなんと、かしてみせる、から」

 互いの下着とスラックスに阻まれた状態だというのに、どうしても欲しいと思っているせいか、やけに感じてしまう。躰の奥が克巳さんを欲しがって、どんどん熱くなっていった。もう、腰の動きを止められない!

「くぅっ……駄目だと言ってるそばから、激しくするなんて。止めてくれ!」

 克巳さんが苦しげに言うなり俺の躰に両腕を回し、ぎゅっと強く抱きしめた。それは腰の動きを止めるためなんだろうけど、嬉しくて堪らない。

 今日一日離れていたから、克巳さんのぬくもりが、ずっと欲しかったんだ――。

「ごめんね克巳さん。はじめの匂いがしている俺なんて、抱きしめたくないでしょ?」

 顔を上げて恐るおそる訊ねた俺に、今日見た中で一番の笑みを浮かべる。

「さっきまではそう思った。だけど今はこうして、君の重みやあたたかさを感じてしまったら、どうでも良くなってしまって」

 言うなり更に抱きしめると、くるりと横回転させて体勢を入れ替えた。手際よく俺のジャケットのボタンを外して、ネクタイを緩める。

「克巳さん?」

「稜の着ている服を脱がせて肌に直接、俺の香りをつけてあげる」

 緩めたネクタイを外し床に放り捨てると、ワイシャツのボタンを外しにかかった。

(願掛けが無駄になるとか口では言ってたけど、やっぱり抱いてくれる気になったんだ)

「ねぇ昨日よりも激しくしてって言ったら、できたりする?」

 俺の言葉に一瞬だけ呆けた顔をし、見る間に呆れた表情に変わった。

「強請る気持ちはわからなくもないが、挿入はなしだ。願掛けがなくなってしまうから」

 出たよ、願掛けっていうワード。なんだかなぁ……この状況下において、随分と色気のない言葉だこと。

「そんなの、自力でなんとかするって言ったじゃん」

「自
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 欲しがり男はこの世のすべてを所望する!   白熱する選挙戦に、この想いを込めて――㉕

    「はじめ、俺はね――」「陵さん、本当に困るんです。……ちょっと待ってください」 困惑に満ち溢れた顔のはじめが、目の前に手をかざして俺の二の句を止めた。「秘書さん、もう少し陵さんを教育していただかないと困ります」「二階堂?」 俺との会話を中断して、克巳さんをいきなり呼んだはじめに、俺だけじゃなくスタッフのみんなで注目した。「この間おこなった、街頭での謝罪会見みたいな感じで説得されるならまだしも、情熱的な視線で見つめられながら、あんなふうに誘われたりしたら、誰だって断れないと言ってるんです」「ああ、確かに。陵は無自覚な18禁だからね」「ちょっと、なんだよそれ。俺ってば、そんなキャラじゃないし」 微苦笑する克巳さんを前にして、愕然としながら周りを見渡すと、スタッフそろって何度も首を縦に振る。「マジ……。俺は無自覚な18禁だったんだ」 じと目で克巳さんを見上げたら、すっと視線を逸らして隣にいるはじめに向かって、意味ありげに微笑む。すると二階堂は、その表情に応えるように笑いかけつつ、俺を見ながら口を開いた。「陵さんが無自覚だからこそ、有効に利くんだと思います。ですが公の場では、絶対に使わないでくださいね。間違いなく、スキャンダルな問題に発展しますので」 クスクス笑いだしたはじめにつられるように、スタッフも笑いだした瞬間、テレビからニュース速報の音が流れた。 慌てて背後にあるテレビ画面に食らいつくと、開票速報の最終結果が表示されていた。 なかなか差の縮まらない開票の行方のせいで、暗い雰囲気に耐えられなくなった誰かが入れっぱなしにしていた、某テレビ局のバラエティー番組。賑やかな場面とは相反する無機質なその文字は、しっかりと勝敗を表していた。「それでは僕はこれから、次の選挙に出る候補者のもとに向かいます」「もう行くのか。せめて――」 手身近に持っていた物を、無造作にアタッシェケースに突っ込むはじめに、克巳さんが慌てて声をかけた。「秘書さんの言いたいことくらいわかります。けれど僕自身は現在進行形で抱えている仕事が、山ほどあるんですよ。それをとっととやっつけたあとに、陵さんのもとに馳せ参じます。国会議事堂の中で人一倍映えるであろう、葩御議員の補佐をするために」 柔らかく微笑んだはじめの視線の先には、誰かが切り替えたテレビ画面があった。そこには俺

  • 欲しがり男はこの世のすべてを所望する!   白熱する選挙戦に、この想いを込めて――㉔

    *** すぐ傍にいるのにどうしても落ち着かなくて、克巳さんのスーツの袖を掴んでしまった。「ねぇ克巳さん、どうしよう。胸が苦しいくらいにドキドキする」「俺が愛の告白をしたときと比べて、どっちがドキドキするだろうか?」 元村との大差ある得票数を目の当たりにして、最初のうちは暗い顔をしていた克巳さん。だけど今は、こんな冗談が言えるくらいに明るくなった。 落ち着かせるためなのか、スーツを掴んでいた俺の右手を手に取り、両手で撫でさすってくれる。白けた顔をしたはじめが、俺たちの様子を見ながら口を開いた。「僕が考えた予想ほどではないですけど、いい線いってますよね」 改めて3人そろって並んで、ホワイトボードに記入された数字を見やる。葩御 8100 25800 59600 83000 114500元村16500 42000 70500 88000 115600 背後にいるスタッフも、歓喜を抑えながら最終結果を待っていた。「はじめ、さっきの克巳さんの話だけど――」「さっきの話とは?」「俺の補佐をしないかってヤツ」 言いながら二階堂の横にいる克巳さんに向かって、誘うようなウインクをした。それを合図に、黙ったまま頷く。「陵さん、その話はお断りしたはずですが」「俺はこの選挙に勝って、国会議員になる。目指すところは、自分の考えた政治をするのに手っ取り早い、内閣総理大臣になることなんだ」 克巳さん以外に、自分の夢を語ったことはなかった。そんな俺の夢を聞いたはじめは驚きを隠せなかったのか、目を見開いたまま、ズリ下がっていないメガネを何度も押し上げる。「二階堂、陵に返事をしてやってはくれないか。俺の誘いは断ったが、本人からの依頼だ。どうする?」 焦れた克巳さんが、二階堂に返答を促してくれた。「陵さんが内閣総理大臣……。そんなの――」「はじめの言いたいことはわかってる。そんなの、無理な話だって言うことだよね」 思慮を巡らせているのか、目を泳がせた言葉数少ない二階堂に、ズバリと突きつけてやった。「陵さん。参ったな……」 せわしなく触れていたメガネを外し、両目をつぶりながら目頭を押さえる。相変わらず、考え事をしているらしい。二階堂はなにかを深く考えるときに、よくこの仕草をしていた。 そんな彼の考えを覆すことを言えるとは思えなかったが、やろうとしていること

  • 欲しがり男はこの世のすべてを所望する!   白熱する選挙戦に、この想いを込めて――㉓

     なにを言えば陵が納得するかを考えていたら、渋い表情の二階堂がやれやれと先に言葉を発した。「僕としては最初からぶっちぎりの得票差で勝つよりも、今みたいにハラハラしながら追い上げていく選挙が好きです」「はじめには聞いていないのに、どうして口を出してくるかな」「なにを言うかと思ったら。仲のいいところを見せつけられる、僕の身にもなってほしいです。口出しの一つや二つくらいしたくなりますよ」 軽快なやり取りをするふたりを、俺は漫然と眺めるしかなかった。 最初よりも差が縮んでいるとはいえ、それがもっと縮まるという保障はどこにもない。このまま、元村が逃げ切る可能性だってある。 そんな不安を抱えるせいで、いつものように会話することができない。「秘書さん、いい加減にそろそろ、眉間のシワをとっていただけませんか。陵さんを心配する気持ちはわかりますが、最終的な結果が出るまでは、できるだけ笑顔を心がけていただけると助かります」 不安な表情をズバリと指摘されたので、自分なりに笑顔を作ってみたのだが、どうしてもうまくいかず、引きつり笑いになるのがわかった。「済まない。選挙プランナーの君の意見をきちんと聞かなければいけないことくらい、頭ではわかっているのに」「克巳さん、無理しなくていいよ」「陵……?」 自分を見つめる陵の眼差しはどこまでも澄んでいて、不安の欠片がまったく見当たらないものだった。「俺の代わりに克巳さんが、マイナスの感情をわざわざ背負ってくれている気がするんだ。そのおかげでどんな状況でも、ポジティブに考えられる。ありがとね」「そんな、こと――」(こんなときだからこそ、大事な君を支えなければならない言葉のひとつくらい、かけることができたらいいのに)「さぁて、凄腕の選挙プランナーの得票予測数を見たいんだけど、用意しているんでしょ? はじめならやっているよね?」 二の句が継げられず困惑して固まってる俺を解放するためなのか、陵は二階堂に話しかけながら、ホワイトボードのあるところに向かう。頼もしいその背中を、ただ見送るしかなかった。「さすがは陵さんです、当然予想していますよ。僕の考えによる、奇跡の道程をお見せしましょう」 弾んだ声に導かれるように、スタッフも二階堂の傍に集まった。 がらりと雰囲気が変わった事務所のおかげで、俺の中にある不安もかなり癒され

  • 欲しがり男はこの世のすべてを所望する!   白熱する選挙戦に、この想いを込めて――㉒

    ***「もしもし。はい、葩御(はなお)8100。元村16500」 陵を信じて投票した有権者が自分の予想を超えていたことに、内心安堵のため息をついた。若者よりも年配者の多い地区だけに、スキャンダルな過去の出来事が明るみになった時点で、クリーンな政策を推し進める元村が優勢なのは目に見えていた。 だからこそ、もっと差がつくと考えていたのだが、元村と半数あまりの開票差はまだまだ先が分からないだろう。「二階堂、おまえはこの差をどう見る?」 その場にいるスタッフが陵に労いの言葉をかけている間に、腕を組みながら隣で座っている二階堂に疑問を投げかけた。「そうですね。開票がはじまったばかりなので、こうなるという確証は言えないですが、ギリギリまで陵さんが追う立場になるでしょうね」「その根拠はなんだろうか?」「テレビで例の件が放送されましたが、選挙戦最終日の3日間、地元で遊説せずに追い込みをかけられなかったのが、やはり痛かったと思います。それと昨日街頭で、無記名によるアンケート調査をしてみました」 二階堂のセリフで、昨日午後から彼が不在だったことを思い出す。確か手の空いてるスタッフも、数名ほど一緒にいなくなっていた。「そんなことをしていたなら、俺にも声をかけてくれたら良かったのに」「秘書さんは陵さんの傍で、不安定になっているメンタルを支えてほしいと考えたので、あえて声をかけませんでした」「さすがは選挙プランナー。陵の精神状態から有権者の動向を考えて仕事をするなんて、俺には絶対に真似ができない」「僕では陵さんの傷ついた心を癒すことはおろか、支えることもできませんから。秘書さんには敵いません」 互いに目線を合わせて苦笑いしているときに、ふたたび電話が鳴った。これ以上の差が開きませんようにと願いながら、電話に出たスタッフの声に耳を傾ける。 二階堂は眼鏡のフレームを上げながら、ホワイトボードに鋭い視線を飛ばしていた。耳からの情報と共に数字で現状を把握しようとしているのが、真剣な横顔から伝わってくる。 追う立場になると言いきった二階堂の言葉を思い出しながら、スタッフの返答を待つ。「もしもし、葩御25800。元村42000……」 微妙すぎる得票差を聞いて、事務所にいるスタッフ全員が険しい表情になった。「すごいね。俺に2万5千人も票を入れてくれた人がいるんだ」

  • 欲しがり男はこの世のすべてを所望する!   白熱する選挙戦に、この想いを込めて――㉑

    「だったら二階堂、チャンスをあげようか。どうする?」「――チャンス、ですか?」 ちょっとだけ首を動かして、顔を上げた二階堂の表情がわからなかった。メガネのレンズが蛍光灯に反射するせいで、驚いているのか困惑しているのかすら判断ができない。「選挙プランナーを辞めて、陵の補佐をしてほしいと思ってね」「なっ!?」「この選挙に陵が絶対当選すると、俺は予想している。だからこそ、その後のことを考えた結果だ。二階堂、政治家に顔の利く君がいれば、陵がしたい政策がしやすくなるだろう」 克巳さんからの意外な提案に俺だけじゃなく、二階堂も開いた口が塞がらない状態だった。「陵の傍にいれば、いつかはチャンスが巡ってくる可能性だってある。違うか?」「秘書さん、大丈夫ですか? 仰ってる意味を理解しているのでしょうか」「もちろん。陵の秘書として、二階堂がいれば百人力だと考えた。デメリットは、愛しい人が自分よりもイケメンに狙われるということだが、俺はなにがあっても平気だと思ってる」(克巳さん、貴方って人は――) 心配になってふたりの会話に耳をそばだてる俺を尻目に、克巳さんは飄々とした態度を貫く。そんな彼を見て、二階堂が苦虫を噛み潰したような表情をした。「ライバルに堂々とそんな宣言をされて、傍にいられるような図太い神経を、僕は持ち合わせていないですよ。補佐の話はお断りします」「そうか、残念だな」「秘書さんだけじゃなく、陵さんのガードも相当なものですから。押しても引いても、まったくびくともしなかった」 二階堂がパイプ椅子の背に、躰を預けたときだった。事務所にある電話が、けたたましい音を立てて鳴り響く。 電話の目の前にいたスタッフがすぐさま受話器を取り、相手からの要件をしっかりと聞きながらメモを取りはじめた。「もしもし。はい、葩御(はなお)8100。元村16500」 もう一人のスタッフが電話の声に反応して、ホワイトボードに告げられた数字を書いていった。「皆さん、落ち込んでいる場合じゃないですよ。開票は、まだはじまったばかりなんです。陵さんを信じて投票してくれた方が、絶対にたくさんいます。この差が縮まることを信じましょう!」 2倍の差をなきものにするような大きな声を張り上げたはじめに、すっかり気落ちしていた俺は笑うことができた。「ありがとう、はじめ。このままもっと差

  • 欲しがり男はこの世のすべてを所望する!   白熱する選挙戦に、この想いを込めて――⑳

    ***(克巳さんや二階堂のお蔭で、起死回生のチャンスが巡ってきたのかもしれない――) 未成年者だったときにおこなった悪さが原因で、選挙戦後半の大事なときに実の母親が仕掛けた罠に足を引っ張られ、心の底から肝が冷えた。 だけどそんな自分の感情を、必死になって抑え込んだ。今まで献身的に支えてくれたスタッフや有権者を裏切ることをしたくなかったので変に誤魔化さず、素直な気持ちを言葉に変換して、大勢の人に伝えることができた。 謝罪したその日の夕方と次の日のワイドショーは、そろってその映像をもとに放映された。 今回の騒ぎで迷惑をかけたこともあり、選挙日まで遊説など外出をせずに事務所で謹慎していたので、こうして全国規模で流されるのは、本当にありがたみを感じた。 たとえテレビの内容が自分を叩くことであっても、必然的に多くの有権者の目に入る――それにより選挙の結果がどうなるかはわからないけれど、ワクワクしながら投票日になるのを待った。(――あと数時間後には、今回のことを含めた審判がくだされるんだな……) そんなことを考えつつ、事務所の片隅で克巳さんが二階堂と向かい合って、熱心になにかを喋っている言葉に耳を傾けた。「二階堂、各局それぞれの番組をチェックしてみたのだが、反応はハーフハーフといった感じに見えた」「そうですか? 僕はむしろ、稜さんを賛辞しているところが多かったように思えましたけど。潔く自分の非を認めて頭を下げることは、容易じゃないですからね」 選挙結果を待っている最中になされるふたりの会話を聞いて、思わず口元が緩んでしまった。選挙戦後半になってからは、今のように顔を突き合わせて、話し込んでいる姿がよく目に留まった。 以前なら喧嘩腰で話をすることが多かったのに、ハプニングが起こるたびに、いつの間にかふたりの距離が縮まったらしい関係が、いいコンビだなと実感させられた。 それは、俺が妬いてしまうくらいに――。 彼らの会話にずっと耳を傾けていたいのは山々なれど、つけっぱなしにしているバラエティー番組の隅に映し出されるであろう、開票速報の音も同時に探していた。 画面の中でわいわい楽しそうに騒いでいるお笑い芸人のギャグを見ても、頭の中にまったく入ってこない。開票速報の結果が知りたくて、うずうずしながら膝に置いてる両手を握りしめたときだった。「秘書さん、あの

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status