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実の両親は後悔に囚われ、毎日のように私を思って泣いた。体は日に日に衰え、急速に老け込んでいった。二人が経営を顧みなくなり、黒川グループからの圧力と怜奈の不祥事も重なった。榊原グループは急速に傾いていった。やがて競合企業に事業を買い取られ、榊原家には何も残らなかった。両親は裕福な暮らしから転落し、寂しい晩年を送った。一方、颯人は日を追うごとに私への執着を深め、降霊術の研究にのめり込んでいった。私のブログをすべて印刷してまとめ、何度も読み返した。骨壺を何より大切にし、毎晩、抱いたまま眠った。臓器提供を受けた人々から寄せられた感謝の寄付金に私財を加え、私の名を冠した「のぞみ基金」を設立した。経済的な事情で学ぶ機会を得られない女の子や、先天性疾患のある子どもを支援する基金だった。颯人は財産のほとんどを投じ、少しでも償おうとした。だが、すべてが遅すぎた。どれほどの代償を払っても、もう一度だけ私に会いたい。せめて、もう一言だけ声を聞きたい。それだけを願っていた。社内では、社長は完全に正気を失ったとうわさされていた。かつて経済界で名を馳せた経営者の面影はない。そこにいるのは、過去に囚われた哀れな男だけだった。颯人はきっと、死ぬまで自分を責め続けるのだろう。それが颯人に与えられた、最も残酷で、最も公平な罰なのかもしれなかった。私はあの人たちを許すつもりはなかった。それでも、颯人が後悔に沈み、怜奈と養父母が報いを受け、実の両親が自責に苦しむ姿を見届けた頃には、私をこの世につなぎ止めていた未練は、もう消えていた。魂は少しずつ透き通っていった。まもなくこの世から消え、行くべき場所へ向かうのだと分かった。ただ、来世では平凡でも愛情に満ちた家に生まれたい。もう二度と、胸を引き裂かれるような苦しみを味わいたくなかった。遠くから差し込んだ光が、私の魂を柔らかく包んだ。少し離れた場所で、私の子どもが小さな手を伸ばし、無邪気に笑っているような気がした。さようなら、颯人。さようなら、かつて私を苦しめ続けたこの世界。(おわり)
颯人が見つけた「霊能者」の大半は、金目当ての詐欺師だった。それでも颯人は惜しげもなく金を注ぎ込み続けた。後悔と執着に取りつかれた末、ついに、本物だとうわさされる世捨て人のような霊能者にたどり着いた。その霊能者の儀式によって、颯人はほんのわずかな間だけ、私の姿を見ることができた。その日、颯人は骨壺を抱き、やつれ果てた姿で冷たい床にひざまずいていた。目の前には私の写真と、編みかけの小さなセーターが置かれていた。透けるような私の姿が現れると、かつて傲慢だった男は泣き崩れた。助けを求める子どものように、言葉もまともに続かない。「希……本当に、希なのか?すまなかった。全部、俺が悪かった。信じようともせず、傷つけて、あんなにつらい思いをさせた……」颯人は私に触れようと手を伸ばしたが、その手は何もない空間をすり抜けた。「俺は何も見えていなかった。愚かにもほどがある。本当のことを何一つ信じず、希の気持ちを踏みにじった。希、殴っても罵ってもいい。何でもする。頼むから、俺を見捨てないでくれ……行かないでくれ。頼む、行かないでくれ。俺の命だって差し出す。だから戻ってきてくれ!愛しているんだ、希。本当はずっと前から愛していた。それを認めるのが怖くて、気づかないふりをしていた。怜奈を裏切ることになると思って……俺は最低だ。俺は……」私はその前に浮かび、泣きながら必死に訴える颯人を静かに見つめた。心は穏やかだった。波立つことも、憎しみが湧くこともなかった。かつてあれほど深かった愛も痛みも、死と共に薄れていた。私は静かに答えた。「颯人。私の子どもは、たった一人で向こうへ行った。ずっと待たせてしまったから、もうそばへ行ってあげたいの」そこで言葉を切り、私はかすかに笑った。苦しみも未練も、もう手放していた。「それに、もう遅い。冷たい言葉を浴びせられ、何度も嘲られるうちに、あなたへの愛は少しずつ消えていった。もう、ずっと前になくなっていたの。もう疲れた。あなたのことも、もういらない」それを聞くと、颯人はさらに激しく泣いた。残りの人生をすべて償いに使う。もう一度だけ機会をくれ。何でもする。そう何度も繰り返した。けれど、私にはもうどうでもよかった。愛も憎しみも、あの大型トラックに命を奪われた瞬間から、少しずつ薄れていった。
実の両親も、すべての真相を知った。とりわけ、誰にも言えずに抱え込んでいた苦しみを綴った私のブログを読んだとき、二人は自分たちのしたことを思い知らされ、深い後悔に沈んだ。佳代子はその場で気を失った。目を覚ました後も放心したまま、片袖だけが編み上がった小さなセーターを抱いて泣き崩れた。私が榊原家へ来たばかりの頃、安物のネックレスをおずおずと差し出した姿を思い出していた。あのときの私は、期待に満ちた目で母を見ていた。だが佳代子が返したのは、軽蔑と嫌悪のまなざしだけだった。何かを説明しようと口を開きかけた私を、煩わしそうに何度も遮ったことも思い出した。隆之は一晩で髪が白くなった。仕事では誰にも引けを取らなかった男が、今はソファに力なく座り、一枚の写真を繰り返し眺めていた。私が15歳で戻った直後、使用人が何気なく撮った、たった一枚の写真だった。写真の私は痩せ、顔色も悪かった。不安そうで、それでも瞳にはわずかな希望が残っていた。隆之はこのとき初めて、実の娘について、何一つ知らなかったことに気づいた。両親は、私の遺品に縋るようになった。小さく冷たい骨壺だけが、私を悼み、自分たちを慰めるよすがになった。遺骨を誰が引き取るかをめぐり、颯人の前で醜く言い争いさえした。斎場の職員から、火葬された私の体には、提供可能な臓器や組織がほとんど残っていなかったと聞かされた。颯人は、角膜提供の礼を告げてきた電話を思い出した。颯人は取り乱したまま、移植を担当した病院へ駆け込んだ。記録を確認するうち、血の跡が残る臓器提供意思表示カードを見つけた。署名欄には、力の抜けた、それでもかろうじて判読できる文字で「榊原希」と書かれていた。意思表示の日付は、事故が起きた当日だった。そのそばには、小さな文字で希望が添えられていた。【もし適合し、制度上可能であれば、私の心臓は待機者名簿にいる小野寺湊くんに優先的に提供してください。先天性の心臓病を患う5歳の子です。あの子には、この世界を見てほしい】颯人は、その薄いカードを見つめた。そこに書かれた一文字一文字が、胸の奥を焼いた。血の海に倒れ、死の間際まで力を振り絞っていた私の姿が、目に浮かんだ。颯人はずっと、私を自分のことしか考えない女だと思っていた。けれど私は、
【22歳。また黒岩山の夢を見た。全身傷だらけだった男の子。私はその子を背負い、長い山道を歩き続けた。たった一枚だけ持っていた、きれいなハンカチで血を拭いた。彼は黒川颯人と名乗り、いつか必ず恩を返す、私を一生守ると約束してくれた。なのに、今の颯人はどうして私をまったく覚えていないのだろう】【25歳。妊娠したみたい。検査薬で2回確かめた。どちらも陽性だった。颯人に話すのが怖い。あれほど私を嫌っているのだから、子どもができたと知れば、迷わず産むなと言うかもしれない。一人で病院へ行った。赤ちゃんは順調だと医師に言われた。うれしくて、同じくらい怖い。それでも、この子を産みたい】【25歳。怜奈が白血病になり、骨髄移植が必要なのだという。適合したのは私だけだった。みんなが怜奈を助けろと言った。颯人には、怜奈の人生を奪ったのだから、そのくらい返して当然だと冷たく言われた。お父さんとお母さんも、家族のために我慢しろ、怜奈を死なせるわけにはいかないと言った。私の気持ちを尋ねる人は、誰もいなかった。妊娠3か月だということも、骨髄を提供すれば赤ちゃんにどれほど負担がかかるのかも、誰も知らない。みんなが心配しているのは、怜奈の命だけ】【引き受けることにした。あの人たちのために何かをするのは、これで最後にしようと思う。これで、もうあの人たちには何の借りもない。これまで貯めたお金は、地方の児童養護施設に匿名で寄付した。家のない子どもたちが、私より少しでも幸せに暮らせますように。おなかいっぱい食べて、寒い冬を暖かく過ごせますように】【明日は病院へ行く。赤ちゃんのために編んでいる小さなセーターは、まだ片方の袖しかできていない。颯人。もし、あの黒岩山で助けたのが怜奈ではなく私だったと知ったら、少しだけでも優しくしてくれた?本当に、ほんの少しでいい。そうしてくれたなら、この世界に生まれてきたことにも、少しは意味があったと思える】記事を読み進めるたび、颯人の顔から血の気が引いていった。見ようとしなかった真実。悪意だと決めつけた好意。笑い飛ばしてきた苦しみ。それらが今、否定しようのない事実となって目の前に並んでいた。颯人は画面から目をそらせなかった。そこにいたのは、誰にも知られない
颯人は打ちのめされたまま、私と暮らしていた家へ戻った。かつては心の底から嫌い、足を踏み入れることすら避けていた場所だった。だが今は、そこにいるときだけ、かろうじて息ができた。骨壺を抱いたまま、がらんとしたリビングに座り込んだ。頭の中はひどく混乱していた。怜奈の言葉が呪いのように、何度も耳の奥で響いていた。ふいに、自分の手で壊したタブレットを思い出した。あの中には、私が誰にも言えなかった思いも、颯人が見落としてきた真実も残っているかもしれない。颯人は血相を変えて家中を捜し回った。「タブレットはどこだ。俺が壊した、あのタブレットは?」使用人の長谷川の腕をつかみ、切羽詰まった声で問いただした。長谷川は怯えながら答えた。「颯人様、あれは……画面がひどく割れておりましたので、ご指示どおり処分いたしました」処分した――目の前が暗くなり、立っていることさえできなくなった。私はその後を追った。颯人は家を飛び出し、郊外の廃棄物処理施設へ車を走らせた。積み上がったごみの山に分け入り、汚れも悪臭も気にせず、素手で探し続けた。それから丸一日と一晩、探し続けた。鋭いガラス片で指を切り、血まみれになっても気に留めなかった。翌朝、ようやく泥まみれになったタブレットを見つけた。画面は粉々に割れていた。颯人は震える両手でそれを拾い上げ、胸に抱き締めた。失った私を、ようやく取り戻したかのように。家へ戻ると、湿らせた布で泥を丁寧に拭い、経験豊富なデータ復旧の専門業者を呼んだ。中のデータだけでも取り戻してほしいと、縋るように頼んだ。幸い、画面と外装は激しく壊れていたものの、記憶媒体までは完全に損傷していなかった。一昼夜に及ぶ作業の末、データは奇跡的に復旧した。颯人は震える手で、私のブログを開いた。15歳で榊原家へ戻り、初めて書いた日記から読み始めた。【15歳。今日、初めて榊原家へ来た。お父さんもお母さんも、私をあまり好きではないみたい。知らない人を見るように、上から下まで値踏みされた。あの目には……嫌悪も混じっていた。颯人には、憎い敵を見るような目を向けられた。私が怜奈のすべてを奪ったのだと言われた。けれど、15年分の人生を奪われたのは私なのに。どうして誰も、私がこの15年をどう生き
式場は一瞬で静まり返った。すべての視線が、血の気を失った颯人の顔に集まった。異変に気づいた怜奈の幸せそうな笑みは凍りつき、代わりに動揺と恐怖が広がった。怜奈は一瞬、逃げ道を探すように視線を巡らせた。すぐに胸を押さえて苦しげな声を漏らし、力を失ったふりをして床へ倒れ込もうとした。「怜奈!」「怜奈、どうした!」隆之と佳代子が声を上げて駆け寄り、会場は騒然となった。だが颯人は、その場に縫いつけられたように動かなかった。目はうつろで、焦点さえ定まっていなかった。森下の報告が、頭の中で何度も反響していた。妊娠していた。自分の子どもを。あれほど嫌っていた女が、自分の子どもを身ごもっていた。診療記録は偽造され、怜奈は病気ですらなかった。自分は何も知らず、愚かにも怜奈の思うままに操られていた。事故は仕組まれたものだった。怜奈と養父母は、金で運転手を雇い、希を殺した。痛みをこらえていた私の青ざめた顔。怜奈の痛ましげな訴え。そして、自分が浴びせた冷酷な言葉。過去の光景が次々と脳裏をよぎった。それまで別々だった記憶が、一つの真実につながっていく。気づいた瞬間、息が詰まった。怜奈は救急搬送された。我に返った颯人も、足取りのおぼつかないまま病院へ向かった。その途中、突然何かを思い出し、運転手に行き先を変えさせた。先に斎場に立ち寄ったのだ。隆之と佳代子は、血相を変えて詰め寄った。「怜奈が病院にいるのに、斎場で何をするつもりだ!」颯人は何も答えず、両手で頭を抱えた。今にも取り乱しそうだった。青ざめた三人は、一言も交わさなかった。重苦しい沈黙のまま、車は斎場に入っていった。颯人は、小さく冷たい骨壺を引き取った。私の遺骨だった。かつては見向きもせず、自分の手で触れようとさえしなかったものだった。それを今、震える両手で胸に抱き締めていた。ようやく見つけた、たった一つの拠り所のように。隆之と佳代子は、その取り乱しように戸惑っていた。何度も事情を尋ねようとしたが、颯人は答えなかった。病院に着く頃には、怜奈の「救命処置」はすでに終わっていた。ベッドに横たわる怜奈の顔はまだ青白かったが、先ほどほど弱ってはいなかった。颯人と榊原夫妻が扉を開けようとしたとき、中から怜奈の押し殺した声が聞こえた。声を







