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117:夜の出来事

last update Dernière mise à jour: 2025-11-28 11:35:09

※R18シーン

 智輝が結菜にプロポーズしてから、数日後のこと。

 樹をホテルのベビーシッターに預けて、2人はスイートルームに立っていた。

「結菜。君とこうして触れ合えるなんて、夢のようだよ」

「私も……。まさか一緒になれるなんて、少し前までは思ってもいなかった」

 2人は自然と抱き合う。互いに伝わる体温が、何よりも愛おしい。

 結菜が智輝の胸に頭を擦り付けると、心臓の音がとくとくと聞こえてきた。

「結菜……」

 智輝の吐息が結菜の頬にかかる。近づいてきた唇を、結菜は目を閉じて受け入れた。

 最初はついばむように。ちゅ、ちゅとリップ音を響かせて。次に偶然を装って、智輝の舌が結菜の唇を割り開く。

「んっ」

 5年ぶりに味わう口づけは、どこまでも甘い。絡まる舌は熱くて、結菜は夢中で彼の舌を吸った。

 舌の裏の敏感な部分を突かれて、結菜はびくりと身を震わせる。そんな彼女を押さえつけるように、智輝はキスを深めた。

「……っ、はぁ……」

 少し唇を離せば、2人の間に銀糸が渡る。結菜の口からこぼれた唾液を舐め取って、智輝が囁いた。

「結菜。愛しているよ」

「ええ……私も」

 返事をするなり、結菜は大きなベッドに押し倒された。

「きゃっ」

「ああ、すまない」

 見上げた銀灰色の瞳は、愛情と情欲にまみれてぎらついた光を放っている。

「君ともう一度ベッドを共にできると思ったら、抑えがきかなくて。5年。5年ぶりだ。もう一度君を抱きたいと、何度思ったことか……!」

 智輝は結菜に何度もキスを落とした。必死で抑えてはいるけれど、少し乱暴で噛みつくようなキス。

 その間にも手は動いて、結菜の衣服をすっかり剥ぎ取ってしまう。

 下着姿になった結菜を見て、智輝は満足そうに笑った。

「きれいだよ、結菜。あの時と何も変わらない……、いや、あの時よりもさらにきれいだ。あぁ、結菜、結菜……」

 ブラジャーのホックが外される。あふれでた豊かな乳房に、智輝

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