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4-5

Auteur: 酔夫人
last update Date de publication: 2026-03-25 17:03:45
「お疲れ様でした」

低く抑えた声とともにドアが開き、沈烈は車内へと滑り込むように乗り込んだ。

重厚な黒革のシートに身を沈めた瞬間、外界の喧騒は完全に遮断される。

「このあとは?」

運転席からの問いに、沈烈は短く答えた。

「屋敷に戻る」

余計な言葉はない。その一言で十分だった。

運転手は無駄を挟まず、静かに車を発進させる。滑るように走り出した車は、やがて幹線道路へと合流し、夜の都市の流れの中に溶け込んでいった。

.

  ブブッ

控えめな振動が沈烈の手元に伝わる。スマートフォンの通知だ。

画面を開けば、日本に送った部下からの報告が表示されている。短い文面。しかしその内容は明確だった。

「……なかなか手ごわい。さすがだな、あやめ」

沈烈は画面に映る写真に視線を落とす。そこに写るのは、柔らかな光を受けたあやめの姿。指先で、その輪郭をなぞる。

「あの頃と変わらない。いや」

わずかに目を細める。

「遥かに美しくなった。俺の、あやめ」

低く囁くように呟き、躊躇なく画面に口づける。その仕草にためらいはなく、むしろ当然のような自然さすらあった。

車内の静寂の中で、その異様な親密さだけが浮き上がった。

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  • 氷龍の檻姫   外伝2-11

    【過去回想】記者会見を終えると結婚した実感がわき、その夜は早めに仕事を終えた。いつもならシャワーで済ませる入浴も、湯船に湯をはり、ゆっくりと浸かった。体が解れたところで風呂を終え、軽く体をふいてタオルを腰に巻く。このまま湯上りのビールを楽しもうと思ったところで手が止まった。しばし考え、脱衣所に用意されていた藍色の浴衣に手を伸ばすと羽織り、帯を締める。そして部屋の窓から、置いてあった煙草一式を手に持ち、庭に出る。火照った体に夜風が気持ちよかった。でも、風呂上がりのビールほどではない。それならなぜ。そう思いながら煙草に火を点ける。思い切り煙を吐き出す。気持ちはいいが、やはり風呂上りのビールほどではない。(それでも……)微かに聞こえた玉砂利を踏む音に、冬弥の口持ちが緩んだ。でも顔は向けない。気づかれたと逃げていく。猫耳を生やしたあやめの姿が想像できた。離れたところで足音が止まる。隣ではない。でも、逃げる気がないのは分かる。こちらが気づいていることに、あやめも気づいている。それに。「なんだ?」あやめの視線で頬が焦げてしまいそうだった。「眠れないんですか?」冬弥はあやめに顔を向けた。冬弥が自分が座っている縁側の隣を指さす。「座れよ。今日は夜風が気持ちいい」あやめが迷うのを感じ取ったが、黙っていると隣に腰を下ろした。体の火照りが冷めれば、梅雨の夜らしく湿気た空気がまとわりついてくる。でも吹いてくる夜風は気持ちいい。風呂で大分アドレナリンは落ち着いたが、この瞬間、完全に収まったのを感じた。隣を見ると、あやめが煙草の煙を見ていた。「悪い、煙たいな」「いいえ。意外と、いい匂いなんだなと思っています」「意外とって」

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