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第205話
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永遠の毒薬 第390話
祖父は必死に自分の感情を抑えようとしていた。「山本さん、奥様の遺品を持ってきました。凌央様は今、ようやく救命処置が終わり、病室にいます」小林は凌央を心配していた。万が一、何かあったら、祖父が何も知らずに怒られるかもしれないと思ったからだ。「分かった......」祖父は言い終わると、体が後ろに倒れた。旧宅は一気に緊張が走った。執事はすぐに祖父を病院に運ぶことになった。医師や看護師が全力で処置を行った結果、祖父はゆっくりと目を覚ました。しかし、その目には灰色の死んだような空虚さが広がっていた。執事は彼が目を覚ましたことに安堵し、息をついた。「蓮見様、目を覚まされたんですね！」祖父は力を振り絞るようにベッドから起き上がり、執事に向かって言った。「山本に電話して、あの手首に巻く装飾品を......わしに渡してもらえ」山本はすぐに病院に駆けつけ、祖父を見て、急いでポケットからその精緻な手首に巻く装飾品を取り出した。灯りに照らされて、その装飾品は温かな光を放ち、何とも言えない悲しみを感じさせた。祖父は震える手でそれを受け取ると、その感触に一瞬で涙が溢れそうになった。彼は一つ一つの模様を丁寧に撫でる。まるで乃亜の笑顔や声が、彼の頭の中に鮮明に蘇ったかのように。確認した後、祖父の感情は完全に崩壊した。手首に巻く装飾品を両手でしっかりと握りしめ、体全体が震え、まるで無形の力に引き裂かれるかのように心臓が痛む。彼はその瞬間、全てを失ったような空虚感と絶望に襲われた。執事はその様子を見て心配そうに言った。「蓮見様、体調が良くないので、あまり感情を高ぶらせない方が......少し休まれては？」祖父は首を横に振った。乃亜は、こうしていなくなった。最後に、何も残さずに......彼女が凌央にどれだけ絶望していたのか、考えると胸が痛む。三日後、凌央はようやく目を覚ました。彼はゆっくりと目を開けた。山本は彼の目を見て、驚いた。「蓮見社長、目を覚まされたんですね。すぐに医者を呼びます！」医者はすぐに駆けつけ、検査をした。身体には問題はなかった。退院する準備が整った。しかし、凌央は寝たまま起きようとしなかった。山本は仕方なく、退院手続きをすることができなかった。昼になり、小林は自宅から昼食を持ってき
永遠の毒薬 第389話
凌央は乃亜の訃報を聞いた瞬間、胸を強く打たれたような感覚に襲われた。顔色は急に真っ白になり、目を見開いて、信じられない驚きと悲しみに満ちた。体が震え、唇がわずかに動くが、声は出なかった。血の気が上って喉元に押し寄せるような感覚がした。低い声でうめきながら、突然口から血が噴き出し、床に落ちて広がった。その光景は恐ろしいほど衝撃的だった。力が抜け、後ろに倒れ、冷たい床に激しく落ちた。意識を失い、部屋には絶望だけが残った。山本は物が倒れる音を聞き、少し慌てた。だがすぐに冷静さを取り戻し、震える手で小林の番号をダイヤルした。「小林さん、すぐに蓮見社長を探して！彼が危ないかもしれない！」小林は電話を受けると、驚きつつも、すぐに冷静さを取り戻した。山本に冷静を保つよう伝え、自分は急いで上の階に向かう。ドアを開けた瞬間、目の前に広がった光景が小林を驚かせた。凌央は床に横たわり、顔は青白く、近くには血が広がっている。部屋には血の匂いが充満していた。迷うことなく、小林はすぐに119番に電話をかけ、簡潔に状況を伝え、救急車の手配を頼んだ。その後の時間がとても長く感じられた。やがて、遠くから救急車のサイレンが聞こえ、夜の静けさを破るように近づいてきた。医療スタッフは迅速かつ冷静に部屋に入り、凌央を担架に乗せ、慎重に運び出した。スタッフ全員が深刻な顔をしていた。小林は後ろについて行き、心配と哀しみの入り混じった目で見守りながら、救急車がゆっくりと去っていくのを見送った。小林は小さく息をつき、凌央が無事に回復することを祈った。凌央はすぐに救急室に運ばれ、緊急処置を受けた後、病室に移された。目を覚まさなかったが、ずっと乃亜との思い出を夢で見ていた。乃亜との三年間は、まるで映画のように鮮明に浮かんできた。しかし、顔だけは一度も見ることができなかった。乃亜はどうなったのか？美咲を怒らせたことが原因で、彼女に何か起こったのか？病室内、暖かい照明と消毒液の匂いが漂う。山本はベッドの横に立ちながら、眉をひそめて考えていた。医師が言った言葉が耳に残っていた。「蓮見社長の体に問題はありません。ただ、目を覚まさないだけです。こういった場合、深いショックが原因であることが多いです。彼が特に大切に思っていることがあるはずです。何か思い出させる
永遠の毒薬 第388話
「お前、元妻と揉めたのか？それなら、見つけたら俺のものだな」辰巳は凌央が元々乃亜を好まないことを知っていた。見つけたら、すぐに自分のものになると思っていた。「冗談はやめろ！さっさと探しに行け。見つけたらすぐに教えろ！」凌央の心の中で不安が広がっていった。もし辰巳が見つけられなければ、乃亜は完全に行方不明になる。「凌央、ちゃんと答えろ。お前、元妻をまだ本当に愛しているのか？」辰巳は、もし凌央が元妻を愛しているなら、あえて手を出さないつもりだった。「いい人は他人の愛する人を奪わない」と思っていたからだ。凌央は唇をかみしめながら言った。「愛していない」辰巳はにやりと笑って、「じゃあ、見つけたら元妻を隠しておくよ！それで、お前には一切関わらせないから」凌央は胸が締め付けられるような気がした。「辰巳、手を出すな！たとえ別れたとはいえ、乃亜は俺の妻だった。お前が追いかけるなんて、あり得ないだろ！」「俺が好きなのは、乃亜そのものだ。凌央の元妻なんて、どうでもいい！」辰巳は少し興奮した様子で言った。「じゃあな、先に探しに行くから！」辰巳は電話を切った。凌央は、胸の中で不安がますます膨らんでいくのを感じた。辰巳は今まで乃亜に興味を示していなかったが、彼が興味を持つなんて、決して良いことではない。心を落ち着け、凌央は祖父に電話をかけることにした。電話がつながると、すぐに祖父の声が聞こえた。「乃亜に謝ったのか？許してもらえたか？」「おじい様、今日乃亜に会いましたか？いつ会ったのですか？」凌央は慎重に尋ねた。乃亜が行方不明だとは言えず、こう尋ねるしかなかった。「乃亜、見つからないのか？」祖父がすぐに尋ねてきた。凌央は仕方なく嘘をついた。「いや、ただ、乃亜がおじい様のところに行ったかどうか気になったんだ。何を話していたか聞きたかった」祖父は鼻を鳴らして言った。「あれだけ話しておいて、何も言わないよ！」「分かりました！」凌央は電話を切った。心の中で不安が膨らんでいく。その後、紗希に電話をかけようと思ったが、携帯の着信音が鳴った。山本からだ......何かあったのか？凌央は慌てて電話を取った。「蓮見社長、悪い知らせがあります......」山本は小さな声で、少し怯えながら言った。「何
永遠の毒薬 第387話
凌央は、何も聞こえないことに気づいて眉をひそめた。聞こえなかったのか、それともわざと聞こえないふりをしたのか？少し迷った後、手を伸ばしてドアを開けた。「乃亜、帰ったよ」ドアを閉め、花を抱えて部屋に入ると、目の前に広がるのは乱れたベッドだった。驚いて足を止める。ベッドの枕元にあった結婚写真のフレームが割れ、床にはガラスの破片が散らばっていた。写真は無造作にベッドに放り出され、花嫁の顔が切り取られた状態で、白いドレスを着た体だけが残っている。凌央は驚き、すぐに部屋を出て急いで下に向かって叫んだ。「小林、早く上に来い！」小林は何が起こったのか分からず、慌てて階段を駆け上がった。「凌央様、どうしましたか？」凌央は深く息を吸って、心の中の怒りを抑えながら、寝室を指さして尋ねた。「誰か、寝室に来たか？」小林は少し考え、「奥様は今日、寝室にいました。他に誰も来ていません。何か大切なものがなくなりましたか？」と答えた。凌央は胸騒ぎを感じ、「それで、乃亜は？」「あなたが出かけてから、奥様はすぐに外出しました。どこに行くのか聞いたら、急用があると言って、それからずっと帰っていません。お二人は連絡を取っていないのですか？」と小林は首をかしげた。普段、奥様はどこに行くにも必ず凌央に連絡していたのに、今日は何も言わなかった。凌央は不安が募り、無意識に両手を握りしめる。「下に行って、他の人に乃亜がどこに行ったのか聞いてきて」できるだけ自然に話すように心がけた。小林は「わかりました」と返事をし、部屋を出て行った。凌央はその場に立ち尽くし、深刻な表情を浮かべた。頭の中で無数の考えが駆け巡る。小林が下に降りて、家の人たちに尋ね回ったが、誰も乃亜の行方を知らなかった。これで事態の深刻さを感じた小林は、慌てて部屋に戻り、凌央に報告した。「凌央様......誰も奥様の行方を知りません」以前は乃亜がどこに行くのかを気にしたこともなかった。彼らはあくまで下働きの者で、乃亜がどこに行こうが口を出す権利はなかった。凌央は胸の奥が締め付けられるような感覚を覚え、息が詰まりそうになった。手に持っていた青いバラが「パシャン」と床に落ちた。小林はその様子に驚き、「凌央様、大丈夫ですか？」と心配そうに尋ねた。
永遠の毒薬 第386話
美咲は辰巳の言葉を聞いた瞬間、倒れてしまった。彼女は警察に連れ去られた。辰巳は車の中から遠くに写真を撮り、それを凌央に送った。写真を送った後、電話をかけた。「凌央、もう終わったよ！」「うん」「俺がお前のためにこんなに苦労したんだから、元妻を追いかけさせてよ！」辰巳は助手から聞いた乃亜が警察署で起こした出来事を知り、心から感動した。あんなにかっこいい女性、乃亜と一緒にいたら楽しいだろうな！「やめろ！」凌央は顔をしかめた。乃亜は絶対に彼のものだ！「もう離婚したんだろ？それなら追いかけてもいいでしょ！」辰巳は鼻で笑った。「まさか、まだ乃亜と復縁したいと思ってる。なんて言わないだろ？」「余計なことを言うな！」凌央はそう言って電話を切った。イライラしながら窓の外を見た。下の通りの人々や車が、小さな点のように見える。あの時、乃亜にあんなことをしてしまった。今さら彼女を取り戻すなんて、無理だ。その瞬間、凌央は後悔していた。乃亜を大切にしなかったことを。でも、世の中には後悔しても意味はない。失ったものはもう戻らない。その時、携帯電話が鳴った。電話を取ると、祖父の怒声が響いた。「凌央、美咲を早くわしに渡さないと、わしが死ぬぞ！」乃亜はその夜、美咲が乃亜の祖母を殺したという録音をネットに公開した。今や桜華市中の誰もがそのことを知っていた。祖父はその録音を聞き、怒りで胸がいっぱいになった。美咲は本当に冷酷だ！どんな手を使ってでも、美咲を刑務所に送らなければならない。「美咲は警察に連れて行かれました」凌央は静かに答えた。辰巳は美咲のことを徹底的に調べ、驚愕した。凌央が思っていた、優しくて温かい女性は、目的のためには何でもする冷徹な人物だとわかった。凌央は驚き、そして自己嫌悪に陥り、最後には深い後悔の念に駆られた。もしあの時、美咲を信じなければ、乃亜に何度も負担をかけることはなかった。乃亜が潔くすべてを捨てて離婚した理由が、今ならよく分かる。「乃亜は？」祖父は乃亜のことを考え、ふとその時のことを思い出した。祖母が亡くなった時、彼が見た乃亜は無感情で絶望的、そして冷たい眼差しをしていた。あの時、乃亜はあまりにも深い痛みを感じていたため、涙さえも流せなかったのだろう。今
永遠の毒薬 第385話
美咲は背中が冷たくなるのを感じた。これまで凌央はずっと優しい態度で接してきた。そのため、彼女はすっかり忘れていた。凌央が本当は猛獣のような男だということを。人を容赦なく食い尽くし、何も残さないような男だ。あの晩、凌央は多くのことを知っていた。今日一日、何もなかったように静かなのがかえって不気味に感じられた。それに、裕之が言っていた出発の時間は明日の夜だと思っていたのに、急に今日の夜に変更された。これが罠ではないかと感じて、恐怖が込み上げてきた。もしかして、これは全部仕組まれたことなのか？その考えが浮かぶと、美咲は冷や汗が一気に流れるのを感じた。もし凌央が本当に彼女を仕留めようとしていたら、彼女はどうしようもない。そう考えるたびに、体が震え、心の中に恐怖が広がっていった。でも、真子の言う通り、もう逃げられないのか？絶対に、そんなのは嫌だ！その時、あの日凌央が言った言葉がよみがえった。「お前を生き地獄にしてやる」と。美咲は恐怖で体が震えながら、それでもその言葉が頭から離れなかった。本当に、真子の言った通り、もう逃げられないのか？その時、突然、眩い光が顔に当たった。美咲は反射的に振り向き、全力で走り出した。でも、振り返った先には、気づけば制服を着た警察官がずらりと並んでいた。「美咲さん、あなたを逮捕する」警察官がパスポートを掲げた瞬間、目の前がぐるぐる回り、体が震えた。本当に、逃げられなかった！「ちょっと待って！電話をかけさせて！」美咲は必死で言った。彼女はどうしても凌央に確認したかった。この事件が本当に彼の仕業だったのかを。「電話なんて必要ない」辰巳が車から降り、美咲の前に歩み寄った。「辰巳？なんであなたが？」美咲は驚き、目を見開いた。外では、辰巳が桜華市最大の情報網を持ち、すべての情報を集められる男だと噂されていた。彼が関わっているなら、もう隠すことはできない。「そうだ、俺だよ」辰巳は少し微笑みながら、優しさを見せつつも冷徹な雰囲気を消し去った。「凌央はどこ？会いたい」美咲は冷静さを保とうとした。凌央に会えれば、きっと何か希望があるはずだと思っていた。「彼はあなたには会わない」辰巳は笑いながら言った。「もう凌央は、お前が彼を救ったのではなく、むしろ彼の母
